韓国保険会社、資金調達のため年率6%近い保険商品を相次いで発売する話

韓国で銀行は第1金融圏、保険会社は第2金融圏と分類されます。
銀行は個人・企業向け貸出を始め、預金業務などで多角的に資金を集めることができます。特に金利上昇直面においては預金業務は資金調達面で有利でしょう。
他方、保険会社は金融商品を売ったり企業年金の積み立てなど資金調達の手段が限られます。そのため預金に資金が集中することを警戒した韓国の金融当局が預金金利の引き上げを自制するよう求めたりしていました。

そんな保険会社ですが手持ちの債権をかなり売って現金化しています。今年の1・3・6・7・8月に保険会社全体が支払った保険金が保険料収入を上回ってしまっており「保険業務」という本業で赤字です。
最近の風潮として何でもかんでも「レゴランド事態以降の資金梗塞」で理由付けしたがるので、この件も一緒くたにされていますが恐らく債権を売っているのは保険金支払いのためで資金梗塞は関係ありません。
資金梗塞の関係する動きとしては年率6%近い保険商品が出てきているところです。関係者は新種資本証券や劣後債を出そうとすれば年7%は設定しないといけないので、少しでも安く済む方法、という趣旨の話をしています。

 



国民日報の記事からです。

当局が「助けてほしい」と要請したにも関わらず債権を売る保険業界...なぜ?


(前略)

30日、金融投資協会によると11月1~29日、保険業界は債権を3兆4000億ウォン売り越した。同期間9兆2000億ウォンを買い越した銀行圏とは対照的な姿だ。同期間、保険業界の債権売り越し額はレゴランド事態のあった10月同期(2兆6000億ウォン)より8000億ウォン増加した。前年同期の保険業界が2兆900億ウォン純買収だった点を考慮すれば債券売り越し額は1年前より6兆ウォン以上増加した。

保険業界は超短期資金調達手段とされる買い戻し条件付き債券(RP)も売却している。韓国企業評価によれば保険業界RP売り越し額は9月に9兆4000億ウォンから10月に10兆4000億ウォン、11月1~24日に12兆7000億ウォンに増加した。1~8月には月平均RP売却は6兆8000億ウォンに過ぎなかったが11月には2倍近く急増した。

保険業界が債券売りで「実弾」を集める理由は退職年金満期到来の影響が大きい。退職年金は企業が役職者の労度所得を保障するために在職中に積み立てる退職金を金融会社に積立運用し、勤労者が退職する際に年金形式で支給する商品だ。市中退職年金の規模は300兆ウォンに達するが、このうち80兆ウォンほどが保険業界が担う。

(中略)

お金を払わなければならないことが増加したことも影響を及ぼした。8月、生命保険業界の月別保険金支給率は117%まで上昇した。これは保険会社が顧客に支払ったすべての保険金(支出)を保険料(収入)で割った指標だ。100%を超えたということは本業で赤字を出したという意味だ。この指標は1・3・6・7月にもそれぞれ100%を超えた。

事情がこうなると、一部の保険会社は最近、高金利貯蓄保険商品を相次いで発売している。教保生命が最近、年5.8%の貯蓄保険商品を出したのに続き、東洋生命は年5.95%の商品を、KDB生命は年6%の商品を発売する案をそれぞれ検討している。これは資金調達需要が大きい保険会社の苦肉の策だ。

金利貯蓄保険商品を多く売れば、今後金利下落に入ったとき運用収益より顧客に支給する利子がより多くなり逆マージンが発生する可能性がある。保険業界関係者は「逆マージン発生の憂慮が大きいということは分かっているが、最近市中金利が急騰し新種資本証券や劣後債を発行すれば少なくとも年7%以上の金利を約束しなければならない。貯蓄保険商品金利を高めることが資金調達費用を少しでも節約する方法」と話した。



国民日報「당국 “도와달라” 요청에도 채권 내다파는 보험업계… 왜?(当局が「助けてほしい」と要請したにも関わらず債権を売る保険業界...なぜ?)」より一部抜粋

金利下落局面に向けた時限爆弾を着実に仕込むということで、「苦肉の策」というのが本当にピッタリです。


新種資本証券は興国生命のコールオプション不発(のちに実施)のときに説明しました。いざというとき発行側の都合で元本の一部または全部を削減したり、強制的に株式(時価)に転換して一気に自己資本比率を回復できるという商品です。リスクが高いので金利が高く設定されています。

劣後債はネーミングからしてアレですよね、「劣る後回しの債権」。そのまんまです。発行元が破綻したときに弁済順位が一番後回しにされる債務です。これも新種資本証券と同じで資本金に入れることができますし、リスクが高いので金利も高く設定されています。