米韓は「違い」、日米は「一致」に焦点という話

米韓同盟は「違い」を確認し、日米同盟は「一致」に注力するという記事がありましたので紹介します。記者の編集手帳のような短いコラムです。
同盟は脅威認識で成り立つもので、韓半島内だけに注目すると米国と韓国は「北の核脅威」という点で焦点がはっきり一致するものの、視点を広げて域内やグローバルで見ると焦点がボヤけてしまう、という指摘です。

特に中国に対しては、米国が「脅威」と規定しているのに対し、韓国は「包容性」を強調しており、これが「違いを確認している」となります。一方で日米同盟は対中政策に対して(多少トーンダウンしつつも)「一致」する面に焦点を絞っている、と。
韓国の国益が米国と完全に一致することはあり得ないけれども、それは日本も同じはず。日本は米国が「域内現状維持」を望んでいることをいち早く見抜いたがために、上手く立ち回っている...国益を守るためには例え日本であったとしても参考に出来る部分は参考にすべき、そんな内容です。

 



イーデイリーの記事からです。

同盟と国益、そして日本[記者手帳-政治]


(前略)

同盟に対する辞書的定義は「利益」に基づくが、国家レベルの同盟は「共通の脅威認識」に根差している。

両国家の積集合*1が経済・社会・文化的に幅広くとも脅威認識が交錯すれば同盟にはなれない。韓中関係がこれを如実に証明する。

(中略)

韓米は韓半島の脅威認識において鮮明な焦点を誇る。高まる北韓の核・ミサイル脅威を再評価し、作戦計画を修正しているのが代表的だ。

「鉄桶同盟」に例えられる両国関係だが、韓半島の外に視野を広げれば話が変わる。民主的価値の守護と規則基盤、秩序擁護などで肩を並べながらも、域内およびグローバル脅威の認識と関連した焦点はどこかぼやけている。

米国は昨年発表した国家安保戦略書(NSS)で中国を「最大の脅威」と指摘した。ユン・ソンニョル政府は同年公開した韓国版インド・太平洋戦略で、中国に対する包容性を強調した。大統領室高位関係者は「ユン政府のインド・太平洋戦略の原則の一つが包容」とし「米国との違いといえば違いかもしれない」と話した。

韓米が「違い」を確認したのなら、米日は「一致」に力を入れている。米日は最近、外交・国防長官(2+2)会談で発表した共同声明で、中国を「最大の戦略的挑戦」と規定した。先の2+2共同声明には「両国の安保戦略関連主要文書で同盟ビジョン・優先順位が互いに矛盾しないようにする」という内容が含まれている。

「脅威」の代わりに「挑戦」という表現を使ってトーンを下げたものの、米日同盟の焦点は韓米同盟より明確だ。

(中略)

むろん、韓国の国益が米国の国益と完全一致することはできない。貿易規模を考慮すれば中国に対する包容性は簡単に諦めにくい側面もある。そのために「同盟不確実性」を最小化するためには米国が正確に何を望んでいるのか、これを把握して相互立場を調整することが重要だ。

様々な意見があるが、「中国・ロシアなど権威主義勢力に対する総体的優位を図る米国が北東アジアにだけは勢力均衡を望む」という分析に耳を傾ける必要があると思う。直ちに日本は米国の「域内現状維持」目標を見抜いたようで、米国主導の対中牽制および対ロシア制裁に積極性を示しながらもロシアのエネルギー開発事業からは手を引いていない。

グローバル中枢国家なら押されて歩くのではなく自ら歩かなければならない。得るものがあるなら日本の行動まで参考にして同盟レベルの脅威認識と国益を貫く最適経路を開拓しなければならない。



イーデイリー「동맹과 국익, 그리고 일본 [기자수첩-정치](同盟と国益、そして日本[記者手帳-政治])」より一部抜粋

日本を参考にすべきかどうかはともかく、一部鋭い指摘があるなと感じます。記者の言う通り同盟が脅威認識で成り立つものであるならば「違い」の確認に注力するより、「一致」部分に注力するのが筋ですよね。協力「できない」部分を探すのではなく、協力「できる」ことをする方が建設的です。


指摘は鋭く、最もだと感じる部分が多い一方で、「韓国の立場を説明して解ってもらう」を外交の基本スタンスとしてやってきた国に対して記者が求める方向転換はなかなかハードルが高そうです。



*1:集団Aと集団Bの重なり合う共通部分。