韓国政府が政府として初めて北朝鮮の人権報告書を一般公開しました。
報告書が作成され始めたのは2016年（朴槿恵政権下）です。同年に制定された北朝鮮人権法の中で統一部長官が国家に報告するよう規定されているためです。しかし直後のムン政権は北に融和策を取り、特に「北朝鮮人権問題」は見て見ぬふりを一貫しました。そのため2016年の作成以来同報告書はずっと「非公開」でした。
ハンギョレの記事からです。
初公開の北韓人権報告書、508名の「証言」450ページ収録
統一部が31日、政府レベルで史上初めて公開発刊した＜北韓人権報告書＞（450ページ）は、法的には2016年に制定された「北韓人権法」に、政治的には「北韓住民の悲惨な人権の実態が韓国国民と国際社会に一つ一つ明らかにされなければならない」と強調してきたユン・ソンニョル大統領の対北政策基調に根差している。
北韓人権法は第15条で統一部長官が「北韓住民の人権実態」を含む「北韓人権増進計画」を毎年通常国会前に国会に報告するよう規定している。このため統一部はこれまで毎年8月頃、国会に「北韓住民の人権実態」を報告してきた。同報告書は統一部が北韓離脱住民定着支援事務所（ハナ院）に入所した脱北者を対象に調査してまとめた「北韓人権実態関連非公開報告書」を基にしたものだ。
（中略）
報告書作成の実務主体は、北韓人権法13条に基づき2016年9月28日に統一部内に作られた「北韓人権記録センター」が担当した。昨年10月から今年1月初めまで報告書草案が作成された。その後、△北韓人権専門家△脱北者△法律専門家などの監修・諮問を経た。さらに国家情報院などの関連機関との協議も経て31日に発刊された。
もう少し具体的に見てみると、統一部北韓人権記録センターは2017年1月からハナ院に入所した脱北民を対象に4週間単位で北韓人権実態調査を行ってきた。そのようにして2022年末までハナ院を経由した脱北民3412人を調査し「北韓人権実態」を証言した2075人の問答所を確保した。
（中略）
ただし、報告書に載せられた「1600件余りの人権侵害事例」は大部分が2017年～2019年の3年間に集中している。新型コロナウィルス感染症の大流行で北韓当局が2020年1月末から国境を閉鎖したため、以後国内に入ってきた脱北者が大きく減り2020年～2022年の間の北韓人権実態を証言した脱北者が40名に達しなかった事情が作用した。
（中略）
証言者508名は性別では女性53%、男性47%で大体釣り合う。地域的には脱北前の居住地が両江道・咸鏡北道など国境地域が76%に達するほど偏りがある。
報告書は△市民的・政治的権利（生命権など13項目）△経済的・社会的・文化的権利（食料権など5項目）△脆弱階層（女性・児童・障碍者3項目）△特別事案（政治犯〇容所／国軍〇虜・拉致被害者・離散家族2項目）の計4つのカテゴリー23項目に分け「最近の北韓人権実態」をまとめた。
ただし、証言の信ぴょう性と関連して「検証された正確な事実だ」と確信するにはまだ不足がある。今回の報告書に掲載された証言には△証言者が直接経験したこと△証言者が目で見たこと△証言者が直接経験したり見ることは出来なかったが「伝え聞いたこと」が混ざっている。同じ事案に対する異なる証言も少なくない。この場合、統一部は「相反する証言を全て載せる」という編集方針を適用したと明らかにした。
（後略）
ハンギョレ「첫 공개 발간 북한인권보고서, 508명 ‘증언’ 450쪽에 담아（初公開の北韓人権報告書、508名の「証言」450ページ収録）」より一部抜粋
報告書は現在韓国語のみとなりますが統一部HPからPDFをDLできます。今後、英語版も用意されるようです。
少し前、ユンさんについて「安保は米国」と示しているし日韓関係改善には意欲的なものの、北や北寄りの勢力に対する立場はあまりはっきりしない感じがする、と書いたことがありますが、少なくとも「人権」「武力挑発」に関するスタンスというのは分かりやすくさせるようです。
未だにユンさん自身が北をどう思っているのか、親和性的な部分はよく分かりません。武力挑発への非難や人権問題を取り上げるなどすることから、ムンさんと違って「北」にどう思われるかより「国際的（主に米国）」にどう見られるか、という方を意識しているように思えます。まあ、「国際社会と歩調を合わせる」と言えば聞こえは良いですが。
ところで、報告書の中で太字にした部分を見て何かに似てると思いませんか？私は「徴用工」や「慰安婦」と似てると感じます。
証言者が直接経験したことと伝聞（遺族は基本伝聞でしょう）が混ざっていることや、異なる証言も少なくないという状況、似てませんか？
そうなると、日本に対しては「証言こそすべて」なのに北に対してはえらく慎重ですよね。
