消費、輸出、不動産投資...全て不振なのに税収不足で政府が動けない手詰まり状態の話

韓国の今年の成長率が1%半ばとの見通しが相次いで出ています。1%台後半からの下方修正で、低いところだと1%台前半としています。(韓国では基本的に成長率2%を切ると「低成長」と見なされる)

韓国の貿易依存度は30%ほどで、輸出不振、特に半導体不振がその原因とされますが、それ以外にも国内経済に爆弾を抱えています。
韓電が赤字垂れ流しで電気を販売し、その赤字を社債(政府後ろ盾AAA)でカバーし続けていたことは以前にもお伝えしました。その体質を改善すべく、電気料金の引き上げが徐々に行われています。他にもガス料金も上がっています。物価上昇にはひと段落付いた感じですが、電気・ガスが上がればその分が価格に反映されるのも時間の問題です。そうなると消費者心理として消費委縮が起こります。
不動産価格は「急激な」下落基調こそ脱しましたが、以前のような高騰はしていません。
政府も企業も家計も負債を抱えており、どこかが借金して経済を回す余裕がありません。本来ならここで政府が率先して動くべきなんでしょうが、ユン政権は財政健全のために赤字国債発行に消極的です。
つまり打つ手なし。

 



ソウル新聞の記事からです。

「1%台半ばの成長も難しい」...半導体輸出不振・民間消費委縮・税収不足が変数


(前略)

13日、政府や韓国銀行、金融界などによると最近多くの研究機関やIBなどは韓国の年間経済成長率が1%台前半もあり得るという見通しを出している。KDIは12日、修正経済見通しを通じて展望値を従来の1.8%から1.5%に引き下げた。チョン・ギュチョルKDI経済展望室長は「半導体の景気回復が予想よりかなり遅れた場合、1%前半程度までは成長率が落ちる可能性もある」と付け加えた。

韓国金融研究院(KIF)は9日、経済成長が既存の見通しである1.7%から0.4ポイントも下げた1.3%に止まるとし、「民間消費が良好な流れを見せるだろうが、輸出・設備投資不振などが下方要因として作用するだろう」と明らかにした。これは国内主要機関の中で最も低い展望値だ。

ウリ金融経営研究所とハナ金融経営研究所、国際通貨基金IMF)とアジア開発銀行(ADB)は、それぞれ1.5%を提示した。これはグローバル主要IBの展望値よりは高い。ウリ金融研究所によると、第1四半期の経済成長率発表直後に出たIB報告書で、モルガンスタンレー(1.7%)とゴールドマンサックス(1.6%)は1%台後半を予測したが、BNPパリバは1.4%、JPモルガンは1.1%など、1%台前半まで目線を下げたところもある。ソシエテ・ジェネラル(SG)は0.8まで見込んだ。これら5社の平均展望値は1.3%だ。国債格付け会社S&Pは1.1%を提示した。

今年の韓国経済の「上低下高*1」展望が予想に通りになるかどうかは半導体輸出回復に掛かっていると言っても過言ではない。KDIは半導体輸出が10%減れば国内総生産GDP)は0.78%減少すると分析しており、大韓商工会議所は0.64%減少すると見ている。産業通商資源部と関税庁によると、半導体輸出額は昨年10月からマイナスを続けている。今年に入って1月(-43.4%)、2月(-41.5%)、3月(-33.8%)に続き、4月にも41%減少した。

下半期に中国の「リオープニング」などでグローバル情報技術(IT)需要が回復し、半導体輸出が改善されるというのは政府と各種研究機関の展望だ。KDIは主要半導体供給業者の減産と在庫調整、半導体需要業者の在庫調整時点などを土台に、今年2~3四半期に底を形成すると見通している。

(中略)

昨年、底を打って回復している民間消費もまた委縮する余地が多い。韓銀によると、消費者心理指数(CCSI)は昨年5月に102.9を記録した後、下落傾向を続けたが2月に90.2、3月に92.0、4月に95.1などと反発している。

(中略)

KDIは昨年4.3%増加した民間消費が今年2.7%増加するものと予想し、KIFは2.1%増加するものと予想した。

ただ、昨年から累積した金利引き上げの余波で消費回復傾向が制約される可能性がある。韓銀によると、昨年の第4四半期末の国内銀行圏の家計貸出借主数は1490万人、彼らの全体貸出残額は902兆2000億ウォンに達し、コロナ19直前(2019年第4四半期)対比でそれぞれ17.3%と17.7%増えた。「コロナバブル」期に増えた家計貸出が高金利による利子償還負担で戻ってくるという展望があふれている。金融委員会によると、先月、全体金融圏の家計貸出が2000億ウォン増え、韓銀の緊縮基調にも家計貸出は再び増加傾向に転じた。

電気・公共料金の引き上げと、下がらない原材料物価なども消費心理を委縮させかねない要因だ。「府債償還負担増加と住宅価格下落で民間消費回復傾向が低い水準で維持されるだろう」(BNPパリバ)、「下半期中に通貨緊縮の影響で民間消費が減る聞けなある」(JPモルガン)などの展望が出て来る理由だ。

(中略)

財政難のため景気浮揚に向けた政府支出の拡大や補正予算案の編成も難しい状況だ。KDIは「コロナ19関連の政府支出が減り物価安定のための財政健全化基調が維持され、政府支出は昨年4.1%から今年3.1%に増加傾向が縮小されるだろう」と見通した。

(中略)

急速に凍り付く景気を反騰させるために赤字国債を発効したり、補正予算を編成しなければならないという要求が出ているが、補正予算案は編成しないと線を引いた。ウ・ソクジン明知大学経済学科教授は「消費と輸出、投資が不振なのに税収不足で政府投資まで難しく、これといった方法がない」と話した。



ソウル新聞「“1%대 중반 성장도 어렵다” … 반도체 수출 부진·민간 소비 위축·세수 부족이 변수(「1%台半ばの成長も難しい」...半導体輸出不振・民間消費委縮・税収不足が変数)」より一部抜粋

半導体輸出が10%減るとGDPが0.78%、あるいは0.64%減少するという試算が出ているそうなので、昨年10月からのをザっと計算すると↓になります。

月/GDP影響率 0.64% 0.78%
2022年10月 -0.8% -0.9%
2022年11月 -1.83% -2.23%
2022年12月 -1.77% -2.16%
2023年1月 -2.77% -3.38%
2023年2月 -2.65 -3.23
2023年3月 -2.16 -2.63
2023年4月 -2.62% 3.19%

通関ベースの値とか暫定値とか、一部混ざってしまっていますので目安と思ってください。
目安とは言え、徐々に拡大傾向にあり、今年に入ってからはGDPに対して2~3%のマイナス影響が常態化しているのが分かります。年間にすると20%を超える影響です。大きいですね。

半導体輸出に掛かっている」というのは、中国経済次第で、要するに「外部要因次第」ということでもあります。
ですが韓国の経済成長が相次いで下方修正されているのは(韓国国内の機関の判断基準はともかくとして)、韓国の「国内経済事情」によるものかと思われます。(PNBパリバの評価がまさにそのまんま)
中国の「リオープニング」効果も、どちらかというと内需を中心に進んでいるようで、韓国への波及効果も予想より低いという見通しがありますし。
そんな中、韓国政府の対応は国内経済(不動産)では「不動産価格が上がるまで耐えて」で、貿易では「中国がリオープニングするまで耐えて」です。そりゃ引き下げます。



*1:原文「상저하고」。上半期は低調で下半期に高調に転じること。