7月からウォン・ドル為替取引時間が延長される話

昨日のMSCIの話と少し関係がありますが今日は韓国ウォンの取引時間延長についての話です。

実は韓国ウォンは現段階では午前9時から午後3時30分までしか取引ができません。日本円は東京市場がクローズした後もロンドンやNYなどの市場で土日祝以外の24時間取引が行なわれていますが、韓国ウォンは韓国市場クローズ後は取引できないという意味です。(個人的には、もうこの時点でMSCIがどうのこうのという次元の話では無いと思うんですが...)

これが7月から変わります。現状午後3時30分までだったものを深夜2時まで、つまりロンドン市場クローズまで延長されることになります。(ただしドルのみ。ユーロや円は現行通り)
これを韓国メディアは「事実上の外国為替市場の開放」と捉えているようです。(当事国メディアが今まで開放されてなかったと考えているのだから、やっぱりMSCIどうこうの次元じゃない)

最大の目的は「ドルの流動性確保」と見られます。
9月に行われる世界国債指数編入と、来年以降のMSCI先進国指数編入を成功させることで名実ともに「先進国入り」した韓国に海外資本が集まりドル需給を改善することでウォン・ドル為替レートを下げようとする意図があるとのことです。

 



時事ジャーナルの記事からです。

事実上、外国為替市場の開放…ウォン相場は防御できるだろうか


(前略)

7月から国内ウォン‐ドル外国為替市場の運営時間が明け方2時まで延長される。これまでは外国為替市場が午前9時に開場し、午後3時30分に閉場した。運営時間が10時間30分ほど増えることになる。ただしドルではなくユーロ・円など他の外貨取引時間は現行通り維持される。今後、ドルを含めてすべての外国為替取引が24時間可能にするという計画だ。

閉場時間が午前2時である理由は、グローバル金融中心地である英国ロンドン金融市場と時間帯を合わせるためだ。主要グローバル金融機関と投資家がドルを取引する時間にウォンもリアルタイムで取引するようにしたのだ。

(中略)

一部では今回の措置で取引量が少ない夜間にヘッジファンドなど少数勢力の攻撃で為替レート変動性が拡大する憂慮も提起されている。政府はモニタリングを通じて否定的な影響を最小化し、投機的取引性向の強いヘッジファンドや最近、国内外の金融当局から指摘を受けた履歴のある外国系金融機関などに対しては、外国為替市場への参加を制限する予定だ。

今回の外貨取引時間延長の背景としては、ドル需給改善が優先的に挙げられている。米連邦準備制度は2022年から金利を急激に引き上げた。現在、年5.25~5.50%を維持している。しかし韓国銀行は2023年1月、3.25%から3.5%へと0.25%ポイント引き上げた後、金利を凍結した状態だ。韓米基準金利は2022年7月に逆転して以来、2年間維持されている。基準金利の逆転が長期化し、ウォン‐ドル為替レートは高空行進を続けており、底点も着実に上昇する傾向だ。
(中略 ※韓国の国内状況に触れて)

結局、ウォン・ドル為替レートが高止まりしているが、韓国銀行は国内不動産急落を憂慮し、基準金利をこれ以上引き上げられずにいるという内心を明らかにしたのだ。

政府は急な火を消すために2022年末に税法を改正した。改正税法により2023年から海外子会社の配当金に対して益金不算入を拡大適用した。これを通じて国内企業が持分50%以上を持つ海外子会社から配当金を受け取って国内にドルを持ち込む場合、税金を払わなくなった。

改正税法の施行で、国内企業は海外子会社にあるドルを国内に大量に持ち込んだ。サムスン電子は2022年に子会社から受け取った配当金が3兆5514億ウォン程度だったが、2023年にはなんと29兆4978億ウォンに達した。現代自動車も同期間、子会社から受け取った配当金が8559億ウォンから1兆5438億ウォンに急増した。LG電子も同様に配当金が7143億ウォンから1兆7883億ウォンに増えた。

昨年、大規模な配当をすでに実施したため、国内企業の配当によるドル需給改善は今年は限界を見せる見通しだ。政府としては新しいドル需給動力を作らなければならない状況だ。

(中略)

今回の外国為替市場の開放は9月のWGBI編入のための措置という分析も力を得ている。WGBIはラッセルグループが管理する国債関連債券指標だ。米国、日本、英国など23の主要国の国債を合わせて、これに追従する資金だけで2兆5000億ドル(約3300兆ウォン)に達する。国内総生産GDP)基準で世界10大国家のうちWGBIに編入されていない国は韓国とインドだけだ。

(中略)

韓国は2022年のWGBI指数編入前の段階であるウォッチリストに上がったが、昨年9月と今年3月当時、WGBI編入には失敗した。WGBIに最終編入されるためには外国人投資家を対象にした市場接近性要件が満たされなければならないが、国内外国為替市場の閉鎖性が足を引っ張ったためだ。

企画財政部は現在、WGBI編入のためのタスクフォース(TF)を構成するなど、総力戦に乗り出している。9月にWGBIに編入が確定すれば国債を買い入れる外国人需要が急増し、ドル需給が改善される可能性がある。金融研究院はWGBIに編入されれば50兆~60兆ウォンに達する外国人資金が入ってくると見ている。

外国為替市場の開放は今後推進されるモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)先進国指数の編入のためにも必要な措置だ。

(中略)

正確に明らかになった数値はないが、ゴールドマンサックスによるとMSCI先進国指数追従資金は約3兆5000億ドルで、新興国指数追従資金(約1兆8000億ドル)の2倍に達する。資本市場研究院は、韓国がMSCI先進国指数に編入されれば国内証券市場に多くは360億ドル(約50兆ウォン)の資金が流入するものと見ている。

結果的に、今回の外国為替市場の開放でWGBIとMSCI先進国指数に編入されれば、韓米金利の逆転による為替レートの高止まりにブレーキの役割を果たすことができるという観測が出ている。



時事ジャーナル「사실상 외환시장 개방… 원-달러 환율은 방어될 수 있을까(事実上、外国為替市場の開放…ウォン相場は防御できるだろうか)」より一部抜粋

一つ訂正を。WGBIの所で「GDP世界10大国家」に韓国を入れていますが、韓国は先日変更された基準を基にしても世界第12位です。

WGBIにしろMSCIにしろ、編入されるのは「市場の成熟度が上がったから」です。編入されたから「市場の成熟度が上がる」のではありません。
いつものことではあるのですけど、経緯と結果が逆転していると言いましょうか、結果が目的化しているとでも言いましょうか...。

WGBI編入のためにタスクフォースを構成するというのも変な話です 。コレ、要するにロビー活動をするということじゃないんでしょうか?


昨日のMSCI編入不発の件でも触れましたが、根本的な問題は当局が「突然ルールを(自分たちに都合よく)変える」というところです。
今回の取引時間延長にも同じことが言えます。ドルの流動性を確保するために、WGBI編入MSCI編入が韓国のメリットになる...こうした考えのもと行われた政策であるのなら、それが韓国にとって不都合になったら突然取引時間縮小もあり得るということです。
例えば韓国は輸出国家ですから、ウォン高は輸出企業の利益にダイレクトにダメージが行きます。今は行き過ぎたウォン安ドル高で苦しんでいますが、仮にチャートが逆行し過剰なウォン高ドル安になったとしたら…過剰なドル流入を遮断しようと、取引時間に制限を掛けるかもしれません。

昨日のMSCIのレポート原文には韓国に対して「As a reminder(忘れるな)」で始まる一言がありました。

「すべての問題が解決し、改革が完全に実施され、市場参加者が有効性を十分に評価する十分な時間が必要」

韓国が市場参加者に有利なようにルールを変えるときは韓国にメリットがある時であり、市場参加者に有利なルールが韓国にとってデメリットになったら容易にルールを変える...今の市場参加者から見た韓国はこのように映っているということです。

簡単に言ってしまうと信用されてないんですね。だから充分信用できるまではMSCIが韓国を先進国に編入することはないよ、と言っているように受け取れます。

おそらくそれはWGBIも同じでしょうし、為替取引時間延長などの目先では誤魔化せないのではないかと思います。