「中国のDRAM物量攻勢が尋常ではない」という話

中国のメモリ半導体...いわゆる、レガシーDRAM(成熟技術)分野での物量攻勢が凄まじく、韓国メディアが危機感を募らせています。
最近は韓国メディアでもレガシー半導体については中韓の「構造変化」を前提にすることが多くなりました。
貿易収支関連の記事は未だに「半導体好調」を大きく報じる半導体頼りに変わりはありません(実際は数年スパンで見ると半導体も大して回復していませんが...)けれども、「技術面」の話になると、中国の台頭を無視できなくなっています。半導体が「回復」しているはずなのに、対中国貿易赤字が解消されていないことも認識変化に影響しているかもしれません。

 



ZDNET Koreaの記事からです。

中国のDRAM物量攻勢、尋常ではない…サムスン・SKも動向把握に「奔走」


(前略)

5日、業界によると中国メモリ企業の急激な生産能力拡大により、サムスン電子・SKハイニクスのレガシーDRAM事業の収益性低下が憂慮されている。

現在、ちゅごくはレガシーDRAMを中心に生産能力を拡大する傾向にある。中国の主要DRAMメーカーとしては、チャンシン・メモリ(CXMT)、福建晋華半導体(JHICC)などがある。特にCXMTは2016年に設立されて以来、中国政府の支援の下、現地最大のDRAMメーカーに成長した。最近はHBN(高帯域幅メモリ)の量産準備にも乗り出している。

業界や証券街が推算するCXMTの総DRAM生産能力は、2022年の月7万枚水準から2023年には月12万枚、今年は月20万枚へと急成長する見通しだ。

(中略)

野村証券は最近、報告書を通じて「中国企業の急激な生産拡大でメモリ業界の収益性が収益性に否定的な影響を受けると予想され、これに対する備えが必要な状況」とし「特にCXMTは莫大な設備投資で既に月16万個の生産能力を確保しており、これは全体DRAM市場においてウェハ―基準で約10%、ビット(bit)基準で約5%に該当する数値」と説明した。

サムスン電子やSKハイニクスなどの国内メモリメーカーは12ナノレベルのDDR5など、最先端DRAMへの転換投資を急いでいる。同時に中国メモリ業界の動向把握にも積極的に乗り出す雰囲気だ。

(中略)

一方、中国メモリ業界の急激な生産能力の拡大は米国の半導体輸出規制による影響が大きいという分析だ。先だって米国政府は2022年10月、自国の半導体装備および技術が中国に流入することを事実上禁止する規制案を施行した。

(中略)

半導体業界の関係者は「現在、中国の半導体企業は米国の規制強化を憂慮して設備投資を急いで進めようとする傾向」とし「米国の大統領選挙など、今後の影響を図りにくく中長期的なロードマップよりは短期的な投資に集中している」と説明した。



ZDNET Korea「中 D램 물량 공세 심상치 않다…삼성·SK도 동향 파악 '분주'(中国のD-RAM物量攻勢、尋常ではない…サムスン・SKも動向把握に「奔走」)」より一部抜粋

製造業の主体が移っていくのは普通のことです。
ただ、韓国にとって何がマズイかと言えば、やはり貿易赤字です。貿易で食べている国なのに、韓国はずっと日本から貿易赤字です。中国からの黒字で日本への赤字をカバーしていたのに、その中国からも赤字になってしまいました。今は中国の代わりに急増した対米貿易黒字で対日・対中貿易赤字を賄っている状態です。

ちなみに、2023年の韓国の貿易赤字国ランキングTop3は...
1. サウジアラビア - 274億ドル
2. 日本 -186億ドル
3. 中国 -180億ドル
となっています。
2021年は対中貿易黒字は200億ドル以上ありました。対中貿易は赤字に転落後、一気に膨らんだことが分かります。

本当なら韓国は中国から赤字になる(レガシー技術の製造主体が中国に移る)前に対日貿易を黒字化させておきたかったところでしょうけれど「見てくれ」の成長に拘った(?)結果でしょうか、コア技術や知的財産といった部分で稼ぐ力が育ち切る前に、このままだと時間切れなりそうです。