貯蓄銀行の有価証券規模が急増している話

金融機関による有価証券運用は収益を得るための業務です。貯蓄銀行は厳密には銀行ではありませんが、やっていることは銀行と大して違いはありません。金融商品を販売したり預かったお金を直接貸したり有価証券を購入したりして運用します。その運用益が収益となります。

2014年まで赤字だった貯蓄銀行が2015年以降黒字化できたのは不動産PF投資を拡大し続けたためです。ところが、2020年まで0%だった不動産PF不良債権率が、(レゴランド事態により発生した債券市場の流動性低下を受けて)強化された基準を適用すると一気に10%にまで膨れ上がりました。

不動産PF(プロジェクト・ファイナンス)問題が表面化して以降、大きな収益の柱を失った貯蓄銀行は、中・低信用者向けのローン販売に力を入れていました。今年の第1四半期基準で信用評価点下位50%を対象にした貸出(中金利貸出)規模は前年同期比6.5%(1085億ウォン)も増加しています。

しかし、韓国銀行は家計負債の増加にも歯止めを掛けようとしています(政府はどうか、イマイチ疑問ですが...)。
それで他の収益案として有価証券規模が急増しています。本来、貯蓄銀行などの相互金融は有価証券規模を自己資金の20%までとする規制があるのですが、不動産PFのゴタゴタで100%を超える場合も期間限定で容認されるようになりました。
これにより一部の貯蓄銀行では有価証券保有量が急増、自己資本の1.5~2倍近い有価証券を保有していることが分かりました。

 



マネートゥデイの記事からです。

有価証券が自己資本の2倍…規制緩和に投資規模が大きくなった貯蓄銀行


(前略)

8日、79の貯蓄銀行の今年上半期の統一経営公示を全数調査した結果、11の貯蓄銀行は今年6月末までに株式・債券・ファンドなど有価証券に投資した規模が自己資本より大きいことが明らかになった。

(中略)

JT貯蓄銀行自己資本が1703億ウォンである反面、有価証券は3256億ウォンで自己資本の1.9倍水準だった。サンサンインプラス貯蓄銀行自己資本が1152億ウォン、有価証券が2058億ウォンで1.8倍の差だった。IBK貯蓄銀行も有価証券(1549億ウォン)が自己資本(1080億ウォン)の1.4倍だった。

有価証券の規模は1年間で急速に増加した。昨年6月末、これら11の貯蓄銀行の有価証券保有額は計1兆4518億ウォンだったが、今年6月末は2兆3995億ウォンと65%増えた。同期間、自己資本は1兆9376億ウォンから1兆8139億ウォンへと6%減少した。

有価証券の規模が急増した理由は貯蓄銀行がPF正常化ファンドに資金を提供したためと分析される。6月、貯蓄銀行中央会は27の貯蓄銀行の出資を土台に5100億ウォン規模のPFファンドを造成した。一部の貯蓄銀行は中央会主導のPFファンドのほかにも自主的にPFファンドを造成したという。

5月、金融当局がPF軟着陸のために有価証券限度規制を緩和し貯蓄銀行のPFファンド投資が相対的に自由になった。相互貯蓄銀行業の監督規定によると、貯蓄銀行自己資本の100%以内でのみ有価証券を保有することができる。PFファンドのような集合投資証券には自己資本の20%までしか投資できない。しかし、5月に金融当局が非措置意見書を発給しPFファンドに投資したが、やむを得ず有価証券保有額が自己資本の100%を越える貯蓄銀行は制裁措置を免除されるようになった。緩和された規制は今年末まで適用される。

金融当局は貯蓄銀行が緩和された規制を利用して有価証券を増やすことに否定的な立場を取っている。最近、金融監督院は9つの主要貯蓄銀行を招集し、有価証券保有額を適正な水準で管理するよう呼びかけた。金融当局は貯蓄銀行がPFファンドに事業場を売却し、貸倒引当金の還入効果を上げる行為にもブレーキをかけている。このため、中央会が造成しようとした第3次PFファンドも事実上覆された状況だ。最近、金融監督院に招集されたある貯蓄銀行関係者は「懇談会の席で金融当局が『緩和された有価証券限度規制を乱用するな』という趣旨で話した」と明らかにした。

(後略)



マネートゥデイ「유가증권이 자기자본의 2배…규제완화에 투자규모 커진 저축은행(有価証券が自己資本の2倍…規制緩和に投資規模が大きくなった貯蓄銀行)」より一部抜粋

金融当局が「自己資本の20%まで」だった規制を緩和したのは、記事から読み取れる情報だけでいうと「仕方なく」と思われます。本当は「20%規制」なのに、蓋を開けて見たら大幅超過していて、制裁措置を取ったらPF軟着陸案どころじゃなかったんでしょう。そのため緊急措置的に緩和…というか目こぼししたものと思われます。
それは決して大手を振って有価証券規模を増やしてい良いという免罪符では無いと思うんですが、そこが分からないのが韓国クオリティというかなんというか...やったもん勝ちみたいな。

緩和措置は今年末まで適用されるとのことですが、期限を迎えた場合どうなるのでしょう? 期限の時点で保有している分は規制措置対象外になるのでしょうか?減らせと言われてすぐ減らせるようなものではありませんよね。