今年6月、台湾を訪れたNVIDIAのCEOは「TSMCを巡る生態系は豊富でパッケージング技術は驚くべきものだ」と述べ、引き続き台湾に投資する方針を明らかにしていました。
一方、韓国のサムスンとSKハイニクスに対しては「メモリ供給業者であり、それ以上でも以下でもない」とにべも無かった様子です。
半導体はチップを作ればそれでOKというものではなく、作ったチップを基盤に引っ付けて保護する工程が必要になります。
一般的にウェーハ―からチップを作るのを前工程、基板に引っ付けて保護するのを後工程と言いますが、今まで重視されていたのは前工程でした。ところが、前工程での微細化(3ナノ以下など)は性能限界・コスト限界を迎えつつあります。
そこで、後工程(パッケージング)による高機能化・高集積化・高密度化に注目が集まっていて、パッケージングに高い技術を持つ企業への注目度が高まっています。
この分野で高い技術を持つ企業が多いのが台湾。一方の韓国は完全に取り残されています。それが先のNVIDIAのCEOの発言であり、このことを中央日報が「超格差を喪失している」と嘆いています。
中央日報の記事からです。
「世界トップ10」、台湾5ヵ所、韓国0...パッケージング革命、K半導体の危機、なぜ
(前略)
半導体の尻尾が胴体を揺さぶる「パッケージング革命」が始まった。チップを3ナノ(nm·1nm=10億分の1m)以下に小さく作る微細化技術が限界に達し、ロジック・メモリ・センサーなど多様なチップ数個を積み縛って性能を高めるパッケージング技術が人工知能(AI)半導体と高性能コンピューティング(HPC)の鍵になった。これまで軽視されていた半導体後工程であるパッケージングが革新の最前線になったのだ。
(中略)
韓国はこの革命の主体ではなく、いけにえになるところだ。 先端技術で押された韓国の世界パッケージング市場占有率は6%(2021年)から4.3%(2023年)に低くなり、今年上半期半導体証券市場ラリーが続く中でも国内後工程代表走者ネペスとハナ・マイクロンの株価はむしろ下落した。ある国内の素材・部品・装備の役員は「韓国HBMがよく売れているというが、これをAI半導体に付着する先端パッケージングは全て台湾で行われ国内装備業者10ヶ所中8ヶ所は売上が減った」と話した。産業通商資源部の資料によると、サムスン電子とSKハイニックスは先端パッケージング核心素材・装備の95%以上を海外に依存する。
(中略)
パッケージング業界で20年間従事したチェ・ボンソク作家(『半導体産業の隠れた巨人たち』著者)は「台湾は世界1位パッケージング業者ASEはもちろん、小さな会社も顧客社が数十ヶ所に達するが、国内パッケージング業者は顧客社1ヶ所に売上の70~90%まで依存する」として「韓国は色々な企業が海外顧客社を共同誘致する方式で、規模の経済を成してこそ能動的R&Dが可能だ」と話した。
メモリ中心、垂直系列化で成長した韓国半導体業界が水平協業に弱いという指摘も出ている。ある国内素材業者役員は「アップル用チップパッケージング会議には台湾パッケージング業者であるASEと基板業者ユニマイクロン、素材業者とアップル本社担当者まで皆集まるが、韓国では下請けに指示するだけ」と話した。韓国半導体産業が疎通・協力の「超融合」に失敗し、技術「超格差」を喪失しているという診断だ。
(後略)
中央日報「'세계 톱10' 대만 5곳, 한국 0…패키징 혁명, K반도체의 위기 왜 [반도체 패키징 혁명](「世界トップ10」、台湾5ヵ所、韓国0...パッケージング革命、K半導体の危機、なぜ)」より一部抜粋
個人的には技術的「超格差」なんてものが幻だったのだと思います。下請けに指示するだけって今に始まったことでもないでしょう。なら、そもそもが技術的「超格差」が醸造される土台が無かったはずです。
最近は数こそ減りましたけど、「日本に追いつく」「克日」系の記事の前提となるのは、韓国は技術進化・経済拡大を今の水準で続け、日本はずっと止まってる、でした。
儒教は「過去こそ理想」の発想なので、日本よりも優れた(優れていた)韓国が日本を超えるのは自明の理である、との前提で分析(?)していた感があります。
韓国メディアがよく使う「超格差」という言葉にも同じ気配がします。自分たちが「優れている」を前提にするから出て来る言葉であり、根拠も無く「超格差があるから大丈夫」との発想にもなるのでしょう。