今年の1月に韓国政府が大々的に発表した「世界最大・最高の半導体メガクラスタ―造成法案」。2034年までに622兆ウォン規模の投資を行い、システム半導体シェアの10%、サプライチェーン自給率50%を達成するという大掛かりなものです。
しかし、蓋を開けてみれば622兆ウォンはほとんどが民間投資。韓国政府の政策金融支援は24兆ウォンぽっちというショボさでした。
しかも、研究開発・教育の三大拠点としてあげられた地域には半導体工場を運用するための電力(原発14基に相当)を送るための送電線がありません(容量不足で送れない)。
また、そもそも電力自体が足りてないので、まず発電所を6基作る計画です。
さらにはなんと、水がありません。半導体工場に必須の水が確保されていない場所が用地になっている不思議。
韓国経済の記事からです。
龍仁半導体メガクラスター、「水不足」警告灯がともった
(前略)
京畿研究院は5日、研究報告書で「2035年以降、(龍仁半導体メガクラスターの)工業用水需要が1日170万トンであるのに対し、現在の主な取水地である八堂ダムで供給可能な用水は半分水準の1日77万トンに過ぎない」と指摘した。
龍仁半導体メガクラスターはSKハイニックスが2018年から120兆ウォンの事業費を投資して建設する半導体クラスター(一般産業団地)と、昨年政府が発表したサムスン電子中心の半導体国家先端産業団地を合わせたものだ。SK半導体クラスターは龍仁市処仁区遠三面一帯の415万6000㎡に50ヵ余りの素材・部品・装備企業が入居し、2027年から半導体量産を始める予定だ。
(中略)
このような半導体クラスターの最大のカギは、十分な工業用水を確保できるかどうかだ。半導体工程はウェハー(原板)の表面洗浄からエッチング冷却など工程別に大量の水を消費するためだ。しかし現在、漢江流域の計10のダムのうち、たった3ヵ所(多目的ダム)でのみ工業用水の追加供給が可能であることが分かった。これら3つのダムが供給できる水の量は、1日1096万8000トン(忠州ダム68.2%、昭陽江ダム30%、横城ダム1.8%)水準だ。このうち生活・工業用水として1031万1500トンを使い、追加で確保できる水は65万6500トンに過ぎない。
(中略)
京畿研究院が出した代案は、まずハンタンガン・ダムを従来の洪水防災用から多目的ダムに転換することだ。また、農業用として使われている龍仁のイドン貯水池を工業用に転換するアイデアも出した。もちろん所有者である農漁村公社に水道事業者の地位を付与するなど手続きが必要だ。
このため、漢江流域の水を使う首都圏地方自治体間の協力体系の強化が欠かせないという声もある。ソウル大学化学生物工学部のユン・ジェヨン教授は「地方自治体が地域特性を反映した水利用計画を用意し、用水需要を自主的に解決する力量を確保しなければならない」として「ソウル市、仁川市などが上水道インフラ構築を協力する方案を考慮する必要がある」と提言した。
韓国経済「용인 반도체 메가클러스터 '물 부족' 경고등 켜졌다(龍仁半導体メガクラスター、「水不足」警告灯がともった)」より一部抜粋
ちなみに工業用水の場合、上水道インフラとは違うため水を引っ張ってくる用水路や水道管の敷設費用は受益者…つまりサムスンとSK…の負担となります。今出ている試算では、用水路だけで1兆ウォンを超えるとか。
電力については、韓国政府の見積もりだとサムスン電子のファブ6つとSKのファブ4つで、該当地域に「10GW」の電力が必要としていました。ファブ1カ所あたり1GWの計算です。
しかし「少なくとも15GW、多めに見積もって20GW必要」との指摘が出ています。
「10GW」というのはあくまで「ファブ工場だけ」の電力であって、その周辺に集まってくるであろう素材や部品メーカーの電力需要を勘案していないためです。
さらには回路設計会社やサーバ企業などの電力需要を合わせると追加で3GW~5GWは必要になります。
さらにさらに、すぐ近くには「50万人都市」があるのでそこの電力消費量も考慮すると「15GW~20GW」との見積もりが妥当とのこと。
人間の脳はよく出来ていて(あるいは単純で)、「こうしたい/なりたい」と想像したことは大体達成できるようになっているそうです。
ただし大事な条件があります。達成できるのは「具体的に想像できたもの」に限られます。
なぜかというと、具体的に想像できるということは、今の自分との「差」を自覚し、目標に至るまでの「課題」が認識できることと同義だからです。
解決すべき問題点が分かっているのだから、そこに注力しさえすれば自然と達成できる、と。よくある自己啓発系の本に書かれている「イメージの力」とは、要はそういうことだと思うのですけれど、今回のような韓国の行き当たりばったり感の強い計画を見ていると「具体的イメージ」の大切さを思い知らされます。