韓国の政策金利は2023年1月に3.50%に引き上げられてから凍結されています。
9月には米国FRBが金利引き下げを決定し、韓国銀行もこれに続くというのが大方の予想で、一部ではすでに「引き下げ率」が注目されています。
また、9月からDSR規制が強化され、これに伴い住宅ローン増加額が8月の約半分の水準に低下したことも、金利引き下げへのプラス要素として見られています。
9月26日時点での銀行圏の家計貸出残高は729兆4918億ウォンと集計され、これは8月末(725兆3642億ウォン)に比べ4兆1276億ウォンの増加となります。8月の増加幅は9兆6259億ウォンでした。
これだけ見ると、金利引き下げへの準備は整ったかに見えます。しかし、実は韓国銀行は9月にちょっと気になる報告書を出しています。
それは「貸出金利が0.25%p下がるとソウルの住宅価格は0.83%p上昇する」というものです。
時事ジャーナルの記事からです。
韓銀「貸出金利0.25%p下げればソウル住宅価格上昇率0.83%p上がる」
(前略)
26日、韓国銀行が発刊した9月金融安定状況報告書によると貸出金利が0.25%下落する場合、1年以後の全国住宅価格上昇率は0.43%ポイント大きくなると調査された。特にソウル地域の住宅価格は0.83%ポイントさらに上昇するものと分析した。ソウルの住宅価格上昇率が全国平均の2倍水準に大きくなるということだ。
(中略)
韓国銀行は「金利引き下げにはこれまで増加してきた不動産プロジェクトファイナンス(PF)リスクが緩和し、脆弱借主の延滞率下落のような肯定的な効果もある」として「ただし住宅価格上昇、家計負債増加など否定的な影響が大きくなりうる点に留意しなければならない」と説明した。
このような要因で民間信用増加率が成長速度を超え、GDP(国内総生産)対比家計負債比率上昇圧力が大きくなる可能性もあると見た。貸出金利の下落は住宅購入負担の軽減や買収心理の強化などを通じて、住宅価格の上昇要因として作用するというのが韓国銀行の説明だ。貸出金利が1%ポイント下落する時、1年後の家計貸出増加率は0.6%ポイント拡大するという分析だ。
また、基準金利引き下げで金融不均衡が深刻化する可能性があると指摘した。金融不均衡は過度なレバレッジ拡大および資産価格の上昇を意味する。韓国銀行によると、2010年以後2回にわたる基準金利引き下げ期には金融不均衡蓄積程度を示す金融脆弱性指数(FVI)が各々17.4から27.6に、33.5から56.2に上昇した経緯がある。ただ、マクロ健全性政策が強化されるほど、FVIの上昇傾向が鈍化し、その効果も時差を置いて次第に拡大することが分かった。
さらに、金融環境が緩和されれば、脆弱部門の貸出健全性は改善されるものと見た。
(後略)
時事ジャーナル「한은 “대출금리 0.25%p 낮추면 서울 집값 상승률 0.83%p 오른다”(韓銀「貸出金利0.25%p下げればソウル住宅価格上昇率0.83%p上がる」)」より一部抜粋
韓銀の現総裁は韓国政府の不動産政策に批判的です。たびたび「ソウル一極集中」を問題視し、学歴重視を批判しています。これこそが韓国の少子化の根本原因と考えている節もあります。
つい先日には、ソウル大学の合格者枠を地域の学生数に応じて振り分けよう、というような提言もしています。こうすることで地方と中央との機会格差を是正しようという趣旨と思われます。
しかし、韓国には塾街のような地区があって、私教育特区のような格好になっています。当然、その周辺のマンションは人気があるので価格が上昇しやすくなります。枠分散がこういった構造の解消に繋がるかは分かりません。
予想通りの金利引き下げか、それとも据え置きか...はたまた引き上げか。今後、韓国銀行がどのような判断を下すのか注目です。