パラマウントと組んで、2029年開業を目指しいる韓国の華城国際テーマパーク(スターベイシティ)ですが、施行を担当する新世界華城の親会社である新世界建設の財務状況を不安視する記事がありました。
新世界建設は以前、不動産PF問題が大きく取り上げられるきっかけとなったテヨン建設のワークアウトの際のも「第2のテヨン建設」候補として名前が取沙汰されたことがあります。そのくらいにはリスクの高い状況だったわけです。
グループ会社からの輸血で得た資金は1兆ウォンとされています。
BLOTERの記事からです。
[新世界国際テーマパーク宣言]③グループ力点事業...新世界建設、「財務負担」の変数
(前略)
15日、金融監督院の電子公示システムによると、新世界華城の持分は新世界プロパティが91.26%、新世界建設が残りの8.74%を保有している。これまでは90%と10%だったが、先月12日に新世界華城が実施した有償増資に新世界プロパティが320億ウォンを出資し持分率を上げた。新世界華城は2020年、華城国際テーマパーク造成のために設立された。
新世界建設は2019年、韓国水資源公社が新世界プロパティコンソーシアムを優先交渉対象者に選定する過程で投資家として乗り出た。これは新世界プロパティのほか、構成員が10%以上の持分を保有しなければならないという公募指針に従ったものだ。
(中略)
新世界建設はテーマパーク建設に心強い支援軍だった。しかし今は状況が変わった。昨年、プロジェクト·ファイナンス(PF)の不良化の影響で1878億ウォンの赤字を出した。昨年末、負債比率が951.8%まで跳ね上がり、流動比率は72.8%に縮まるとグループ系列会社が一斉に火消し役として投入された。これを通じて調達した金額は1兆ウォン程度だ。
(中略)
このおかげで財務安定化を図ることができた。今年上半期末基準の負債比率は161.1%に改善され、流動比率も259.0%に増え、息抜きができた。
(中略)
しかし、利子負担が増加するという点がネックだ。今年5月、イーマートの資金拡充約定を受けて発行した6500億ウォンの永久債は会計上資本と認められるが、負債の性格を帯びている。3年後の「ステップアップ」条項のためだ。ここで7.078%の表面利率で毎年460億ウォン水準の利子が発生する。早期返済(コールオプション行使)しない場合、3年後の2027年5月から利子率は4年間毎年上がる。
例えば2027年5月から1年間、最初の利率に2.5%pが付き、2028年5月から1年間は最初の利率に3.0%pが加算されるやり方で毎年0.5%pが加わる。ただ、2031年5月からは満期の30年後(2054年5月)まで最初の利率に4.5%pが追加される。
結局、3年後の早期返済が欠かせないわけだ。
(中略)
負担を解消するための案としてはグループの大型プロジェクトが挙げられる。今年6月、スターフィールド青羅関連の8227億ウォン規模の新築工事および1011億ウォン規模の電気工事受注が代表的だ。契約金額は昨年、新世界建設の連結基準売上である1兆5026億ウォンの61.5%に達する。
(中略)
問題は、新世界建設が公正取引委員会の内部取引規制対象に入ったという点だ。公正取引法によれば総帥一家の保有持分が20%を越える上場・非上場会社とこの企業が持分50%を超過保有した子会社は集中割当規制対象だ。チョン会長と母親のイ・ミョンヒ新世界グループ総括会長が持分28.56%を保有しているイーマートは、新世界建設の持分70.46%を保有している。今年1月、新世界建設が新世界永浪湖リゾートを吸収合併し、イーマートの新世界建設の持分は42.71%から70.46%に上昇した。
(後略)
BLOTER「[신세계 국제테마파크 선포]③ 그룹 역점사업..신세계건설 '재무부담' 변수([新世界国際テーマパーク宣言]③グループ力点事業...新世界建設、「財務負担」の変数)」より一部抜粋
ゴチャゴチャ書かれてますけど、つまりは新世界建設の財務状況が改善されなければ事業継続不可となるかもしれない、と言いたいようです。このプロジェクトは実は「3回目」のようなので(詳しくは後述)、今度失敗したら次は無いかもしれません。
で、成功するためには新世界建設による大型プロジェクトの受注・成功がキモとなります。受注自体は既にいくつかクリアしているけれども、そのうちの一つ…契約金だけで昨年の新世界建設の売上の6割を占めた事業が公正取引委員会の規制対象となり取り消されるかもしれない、と。それが変数として作用するかもしれない、ということのようですね。
ところで、前回の記事を上げた後に知ったことですが、このテーマパークの用地はもともと「ユニバーサル・スタジオ」を誘致するためのものだったそうです。
最初の構想が出たのは2007年、このときは「USK(ユニバーサル・スタジオ・コリア)が入る予定」だった、と。記事の記述を信じるなら、ですが。
その後、2009年のグローバル金融危機による資金難で2013年に契約が取り消され、2015年に中華系の投資資金が入る予定だったのが契約締結期間が過ぎてしまったため流れ、今回が3度目の正直なのだとか。
記事中に出て来る永久債の話は、前に債券市場の流動性が低下していた「レゴランド事態」の頃に、何かの拍子に触れた気がします。「新種資本証券」と呼ばれるヤヴァイもので、一般的に金融機関が発行するものです。
記事中に書かれているように、実際は借金なのに「資本」に組み入れることが出来ます。なぜかというと、いざというときに元本の一部、または全部を削減したり、強制的に株式(時価)に転換して一気に自己資本比率を回復することが出来る「エリクサー(劇薬)」だからです。
リスクが高いのでその分利率も高く、基本的に早期償還(コールオプション)になります。早期償還できない場合は利率が上がっていきます。