韓国は9月時点で税収が約30兆ウォンほど不足しており、残り3ヵ月でプラ転するはずがありませんから、今年も税収が不足することがほぼ確定しています。2年連続の赤字ですが、昨年同様今年も赤字国債は発行しない(出来ない)方針です。
これはユン・ソンニョル政権発足前からの公約で「財政健全化」を謳っていたためです。しかし財源が足らないことは変わりないので何とか穴を埋める必要があります。
そこでユン政権は税収欠損分を「基金」から引っこ抜いて穴埋めするという措置を行っています。
プレスリリースでは「利用可能な財源を活用し」などと発表していますが、公的基金から資金を抜いて一般会計に回すことは「利用可能な財源活用」とは言えないのではないかと...。
なぜなら、公的基金はそれぞれ「目的」があって分けられて(あるいは積立てられて)いるお金です。後で補填するにしても、目的外のことに頻繁に利用するのが果たして健全なことなのでしょうか?少なくとも毎年のように繰り返して良い手法とは思えません。
しかも使われる基金の一つは外国為替平衡基金(外平債)です。(これは去年分の不足埋め合わせでも使われました)いざというときに為替市場を安定させるために使われるもので、いわば「保険」のようなものです。
つまり、平時(何もなければ)は積んであるだけのお金です。韓国政府にとってこれは「利用可能な財源」になるわけですね。バリューアッププログラムやWGBI編入により外貨が入ってくれば、外平債を積んでおかなくても良くなるとでも考えている(そんなわけないんですけど)から、あんなに必死で推進してたんでしょうね。
他にも住宅基金や地方財源からも資金を引っこ抜いてくるつもりのようで、韓国メディアからも疑問の声が上がっています。
時事ジャーナルの記事からです。
2年連続で「税収パンク」...なぜ「住宅基金」にまで手をつけるのか
政府が2年連続で歴代級の「税収欠損」事態に「基金回し」で対応すると論難に包まれた。「外国為替防波堤」の役割のために造成された外国為替平衡基金を昨年に続き今年も動員することにしたのに続き、請約貯蓄などで造成される住宅都市基金の一部まで持ち出すことにしたためだ。
チェ・サンモク副首相兼企画財政部長官は10月28日に開かれた国会企画財政委員会の総合監査で今年の税収不足への対応策を報告した。今年の本予算対比税収不足分29兆6000億ウォンに対して基金余裕分と地方財源減額、通常予算不用などを通じて対応するという計画だ。
その内容を見ると、税収不足を補うために動員する基金は△外国為替平衡基金(外平基金)4兆~6兆ウォン△住宅都市基金(2兆~3兆ウォン)△公共資金管理基金(公資基金4兆ウォン)△国有財産管理基金などその他の基金(3兆ウォン)など14兆~16兆ウォンに達する。
(中略)
外平基金はウォンの価値を安定的に守るために造成する基金だ。投機的な外貨取引で為替レートが不安定になる状況に対応するための「外国為替防波堤」の役割をしている。政府は、外平基金の資産規模がウォンと外貨を合わせて昨年末の決算基準で274兆ウォンであるため、外国為替市場への対応には問題がないと説明する。
(中略)
国家財政研究所のイ・サンミン首席研究委員は「市場参加者が外国為替政策と関係なく税収欠損を埋めるために外国為替基金の資産が減少するというシグナルを与えるならば、我が国の外国為替政策の信頼性を傷つけることになる」と批判した。
(中略)
政府もこのような指摘を知らないわけではない。チェ副首相の発言を見ると、政府は最後まで「外平基金動員」というカードを取り出したくなかったようだ。チェ副首相は9月26日、国会企画財政委員会の懸案報告で「外平基金と関連して20%範囲で基金運用計画を変更することを現在の段階で検討していない」と話した経緯がある。昨年のように税収のパンクを埋めるために外平基金を動員することは選択肢から排除するという意味だった。それでも税収不足事態を埋めるというこれといった手が見えないため1ヵ月で言葉を変えたわけだ。
(中略)
住宅都市基金を動員するという対策についても議論が起きている。住宅都市基金は、国民住宅債券と請約通帳納入金などで財源を造成し住宅購入資金などを支援する基金だ。これについて「無住宅庶民のマイホーム購入のための請約貯蓄まで使っているのか」と批判の声が高い。請約貯蓄の月納入認定額を10万ウォンから25万ウォンに引き上げたのも、基金活用を念頭に置いた措置ではないかという疑いの目を向けている状況だ。
(中略)
事実上「基金回し」の根本原因は政府の楽観的な景気展望のためだ。政府は昨年と今年の経済見通しを「上低下高(下半期の景気反騰)」と見て税収を推計したが完全に外れた。さらに、相次ぐ減税政策は歳入基盤をさらに悪化させたという分析だ。特に税収予測の誤りは毎回繰り返されている。ユン・ソンニョル政府発足後2年間、税収予測誤差は86兆ウォンに達する。対応策もやはり追加補正予算編成という正攻法を排除し「健全財政」に過度に埋没し「小細工」で対応しているという批判が続く状況だ。
「経済通」として知られたユ・スンミン前国民の力議員は10月29日フェイスブックに「ユン・ソンニョル政府の租税と財政政策を見ればつじつまが合わない矛盾だらけ」と批判した。彼は「いくら急いでいても外国為替市場の安定や請約貯蓄で造成した庶民住居福祉用基金まで引き出して使うのは下の石を抜いて上の石を支えるような無責任で危険な財政運用」とし「国債発行や歳入補正予算を避けようとしたため、小細工だけが出てくる」と指摘した。
一方、政府は来年の税収が今年より10%以上増えるだろうというバラ色の展望を再び出した。政府が予想した来年の国税収入規模は382兆4000億ウォンだ。法人税は歴代最高の88兆5000億ウォンが徴収されると見て、所得税も128兆ウォンで史上最高額を記録すると展望した。
やはり国会予定処の分析は違う。予定処は「2025年国税収入展望」を通じて378兆5000億ウォン水準の国税収入を展望した。政府の予測値より約4兆ウォンほど足りないわけだ。来年度の経済成長水準と不動産市場の回復速度などで予定先が政府より暗く見たためだ。
(後略)
時事ジャーナル「2년 연속 ‘세수 펑크’…왜 ‘주택기금’까지 손대나(2年連続で「税収パンク」...なぜ「住宅基金」にまで手をつけるのか)」より一部抜粋
資金が充分だから問題が無いとか、そういうことじゃないんですよね。
韓国政府もどうやらそこら辺は分かっているようですが、記事から受け取れる印象では「ほかに手が無い」ようです。
しかし、予測値を86兆ウォンも外すって...恐らく今までの累計なんでしょうけど、それでも逆に難しそうです。
これもまた「士気を下げる報告をしてはならない」雰囲気のせいでしょうか?
国会予定処の国税収入予測は韓国政府より控えめとはいえ、それでも4兆ウォンしか差がありませんから十分「楽観的」と言えるかもしれません。来年どうなるか楽しみ(?)です。