韓国ロッテグループに流動性不安が持ち上がったことをきっかけに(グループ側は否定しています)、株価が大きく下落しました。
また、流動性危機は否定したものの、そのすぐ後にグループ会社の一つであるロッテケミカルでちょっと問題が起こりました。約2兆ウォン規模の社債期限利益喪失(EOD)です。
例えば代金を月末にまとめて支払う契約をしていた場合、これは「支払いを期限を猶予してもらえるという利益」が発生していると考えます。これが「期限の利益」です。
ロッテケミカルは、この「期限の利益」を喪失しました。理由は契約違反です。(この辺りの経緯はちょっと面倒なので飛ばしますが、約束していた利益をあげられなかったのです)
それにより、ものすごく簡単にぶっちゃけて言うと、社債購入者から「貸した金、耳そろえて今すぐ返せ」と言われてしまうかもしれないのです。
もっとぶっちゃけて言うと「デフォルト」の危機です。
そのせいで、ロッテグループが否定した流動性危機が「部分的にはあり得るのではないか?」との見方が広がってしまいました。
ロッテグループは憂慮を払拭するために色々手を尽くしているようです。
が、ちょっと方法がどうなのかなぁ?と思わなくもありません。
というのもロッテワールドタワーまで担保に差し出しているというのです。観光スポットにもなっている有名なタワーですから、聞いたことある人も多いかと思います。123階建ての超高層ビルで、とにかく目立つ、ある意味、象徴的な建物なのです。
肯定的に見るなら、ロッテグループを象徴するこのビルを担保に出来るのは「大丈夫、問題ない」からとも見えます。逆に「これを担保に出すまでに追い詰められているのか?」との見方も出来てしまうという、なんとも微妙な手だと思うんですよね。
ビズウォッチの記事からです。
売って、閉めて、減らして...「焦る」ロッテ、流動性確保に総力
(前略)
ロッテグループが28日、機関投資家対象企業説明会(IR)で発表した内容によると、ロッテケミカルとホテルロッテ、ロッテショッピングなどグループ主要系列会社が全て財務構造改善のための自己救済策実行に乗り出す。
最も多くの自己救済策を打ち出したのは、最近の社債危機でロッテグループ危機説の震源地として名指しされたロッテケミカルだ。まず、ロッテケミカルは基礎化学分野の比重を2030年までに30%に縮小させ、事業構造を根本的に変えることにした。
ロッテケミカルは今年第3四半期までの累積売上15兆5343億ウォンの約68%である10兆5947億ウォンを基礎化学部門で出している。基礎化学部門は中国発の供給過剰、国際的な需要不振、原油高などで競争力が大きく弱まった状況だ。その代わり、ロッテケミカルは高付加価値の先端素材の比重を徐々に拡大し、現在5兆ウォン(2023年基準)水準の売上高を2030年には8兆ウォンまで拡大するという構想だ。
また、ロッテケミカルは来年からEBITDA(償却前営業利益)内で投資が執行されるようにし、過度な投資支出も減らすことにした。ロッテケミカルは最近、日進マテリアルズ(現ロッテエネルギーマテリアルズ)買収(2兆7000億ウォン)、インドネシア石油化学団地造成事業「ラインプロジェクト」(5兆ウォン)など大規模投資を執行した。
2022年から今年までの3年間、ロッテケミカルのEBITDAは1兆3000億ウォン水準と推定されるが、投資執行金額は計11兆9000億ウォンに達する。
(中略)
特に、ロッテケミカルは最近浮き彫りになった社債の期限利益喪失(EOD)問題を解決するため、ロッテ物産からロッテワールドタワーを担保に提供してもらうことにした。ロッテケミカルが2013年9月から2023年3月まで発行した公募債のうち、14個の無保証社債(約2兆ウォン規模)が最近、財務特約基準を満たせずEOD事由が発生した状況だ。
ロッテは来月19日、社債権者集会でロッテワールドタワーを担保に提供し、無保証社債を保証社債に転換する代わりに財務特約をなくす協議を進める予定だ。
(中略)
ロッテショッピングは2009年以後15年ぶりに土地資産再評価に乗り出す。 保有している不動産資産の価値を再び評価されれば、それだけ資産規模が増えるため負債比率を下げることができる。ロッテショッピングは今回のロッテグループ危機説以前の先月、すでにこのような資産再評価計画を共有している。
実際、ロッテショッピングは2009年に資産再評価作業を通じて負債比率を下げた経験がある。当時の再評価では帳簿が3兆1000億ウォンの不動産が6兆7000億ウォンと評価され、負債比率を102%から86%まで下げた。
(中略)
ホテルロッテも同様に、不動産資産の売却を含めた流動性確保に乗り出す。ロッテショッピングのように現在保有している不動産資産をロッテリーツ(REITs・不動産投資信託)に編入させる方案を持続する。ホテルロッテは9月、「L7江南」の建物をロッテリッツに3300億ウォンで売却し、このホテルを賃貸して運営中だ。
ホテルロッテの免税事業部(ロッテ免税店)は、海外不良免税店の撤退を検討する。ロッテ免税店は世界1位の免税店を目標に海外事業を積極的に拡大してきたが、現在は国内免税業況の低迷に揺れている。
(中略)
さらに、ロッテグループは優良子会社の売却も推進している。ロッテレンタルの筆頭株主であるホテルロッテは、外部の元売者からロッテレンタル持分売却に対する提案を受け、検討中だ。
(中略)
ロッテグループ関係者は「ロッテケミカル社債特約イシューなど利害関係者らと円満な疎通および協議を通じて市場の誤解を最大限払拭できるようにする」と話した。
ビズウォッチ「팔고 닫고 줄이고…'마음 급한' 롯데, 유동성 확보에 총력(売って、閉めて、減らして...「焦る」ロッテ、流動性確保に総力)」より一部抜粋
省略した部分も含めて、ロッテグループは非常に具体的な対策を速やかに公表しています。こういう所の対応の速さはさすがです。
それゆえに、ロッテタワーの担保はやはり余計だったのでは…?な気がしてしまいます。
恐らくですけど、これは大衆向けの火消しです。ロッテタワーを担保にするとなると、各メディアが大々的に報じるでしょうから先の「ロッテグループ流動性危機説」を打ち消す効果を期待したのではないでしょうか?
しかし、それもやはり諸刃の剣だと思うんですよね。