サムスン、1c DRAMの再設計を検討しているという話

サムスンは昨年、第6世代のHBM4(1c DRAM)の技術開発に成功したと発表しました。しかし歩留まりは相変わらずで収率が確保できていない状況だそうです。
当初の開発目標を12月から今年6月に変更したものの、量産段階に移行するために必要とされる収率(60~70%程度)に達することが出来ず、近々設計見直しの決定がなされるかもしれません。

ファウンドリでTSMCとのシェア格差が埋まらず、DS部門長が交代してからのサムスンはメモリ半導体に注力する姿勢を見せています。

 



イーデイリーの記事からです。

サムスン電子、第6世代DRAM設計改善を検討…「HBM4」勝負かける


(前略)

11日、イーデイリーの取材を総合すると、サムスン電子は10ナノ(1ナノは10億分の1メートル)級の1c DRAMの設計改善作業を検討している。1c DRAMで十分な収率を確保できず、サムスン内部で設計改善に意見が集まったという。半導体業界に精通した関係者は「歩留まりが(目標分だけ)出ないので再設計をしなければならないという話が多い」とし「トップライン(経営陣)で最終決定を下すだろう」と説明した。

(中略)

サムスン電子は、1c DRAMを今年下半期に量産する第6世代HBM4に適用する予定だ。ライバル会社に比べて一世代リードしているDRAMでHBMの競争力を引き上げるという腹案だ。SKハイニックス(000660)はHBM4に第5世代(1b)DRAMを、第7世代HBM4Eから1c DRAMをそれぞれ適用する。米マイクロンは「1c DRAMはまだ量産していない。HBM首位を奪われたサムスン電子の立場では、1c DRAMを適用したHBM4を通じて勝負に出なければならない状況だ。

サムスン電子はチョン・ヨンヒョン半導体(DS)部門長のメモリー事業部長兼任体制に突入し、工程別DRAM設計に再び目を通している。第5世代HBM3Eに適用する1a DRAMの場合、再設計を終え最近HBM用として量産を開始した。1b DRAMは再設計を進めないことで内部決定を下したという。

(中略)

これに先立ち、人工知能(AI)半導体市場の主要顧客会社であるNVIDIAは、サムスン電子のHBM設計を問題視し再設計の必要性について言及している。NVIDIAのジェン・ソンファン最高経営責任者(CEO)は先月、世界最大の家電・IT展示会「CES2025」で「サムスン電子はHBM3Eを新たに設計しなければならない」と述べた。当初、サムスン電子は昨年、NVIDIAの品質(クオリティ)テストをパスし、HBM3Eの8段と12段を供給する予定だったがまだ進行中だという。

(中略)

業界ではサムスン電子が1c DRAMを再設計するとしても一部だけ修正すれば、既存のHBMロードマップを支障なく進行できると診断した。また別の半導体業界関係者は「全面修正ではない以上、一部だけ再設計すれば収率はすぐに得られるだろう」とし「今年上半期中に開発などを完了すれば下半期にHBM4量産が可能だ」と話した。



イーデイリー「[단독]삼성전자, 6세대 D램 설계개선 검토…HBM4 승부 건다(サムスン電子、第6世代DRAM設計改善を検討…「HBM4」勝負かける)」より一部抜粋

サムスンの今後を決める大きな判断になるかもしれません。
すでにある設計を一部とはいえ放棄するわけですから、心理的なハードルは高いです。思いがけぬ齟齬が発生する可能性もありますからテストも必要でしょうし、対外的にも「後退」と見られかねません。
しかし、技術開発は現在サムスンが最も先んじているわけです。急がば回れと言いますし、安定化を優先することが後々大きなアドバンテージになる可能性もあります。


後は制度的な問題があります。
今の韓国は週52時間労働制のため夜間に担当者が居らず、半導体工場に設備を搬入することが事実上不可能な状態だそうです。それが収率にどの程度影響するのか分かりませんが(同じ条件でSKは上手くやってるわけだし)、「パルリパルリ(早く早く)」な国民性から「効率が悪い」との指摘があるようです。
まあ、設備設置やメンテナンスのたびにラインが止まるなら確かに夜間の方がロスは少なそうです。

こうした点で政治的なサポートが受けられるかどうか、政府に働きかけていけるかどうかも大事になってくるでしょうが…韓国ではサポートするどころか足を引っ張ろうとしています。
サムスン会長のイ・ジェヨンさんはグループ経営権の継承に関して、不当合併および会計不正疑惑として19の容疑で告発を受け裁判中でした。
一審では無罪、二審でもつい先日、無罪判決が出ました。19の容疑全てにおいて「無罪」でした。
しかし検察はイ・ジェヨンさんを上告。最高裁まで行くことになります。

当然ですが、不正を行っていたものを見逃せと言っているわけではありません。
ただ、今k氏イ・ジェヨンさんを上告した件については意味不明です。なぜなら、韓国の大法院は日本の最高裁と同じで事実関係の問題には立ち入らないからです。事実関係を争うのは一審・二審で、それ以降は新事実が出てこない限り最高裁で判決が覆ることはまずありません。
つまり、このままいけば二審の無罪判決が支持されるのです。

じゃあ、なんで検察は上告したのか、サムスンがこんな大変なときに。
バカだからでしょうね、きっと。