原発輸出に力を入れている韓国ですが、チェコのドコバニ原発2基の受注契約書の署名が裁判所の命令により中断されることとなりました。
韓国によるドコバニ原発受注には2つの大きな課題がありました。
一つは米原発会社ウェスティングハウスによる知的財産権問題です。こちらはウェスティンぐハウス側に原発1基ごとに1兆ウォン規模の知的財産使用料を支払うことで解決したとされています(※詳細は公表されていないので報道ベースの話)。
もう一つは、チェコ原発受注のライバルであった仏の電力公社(EDF)による提訴です。EDFは韓国の低価格受注が「政府補助金規約違反」に当たるとして訴訟を起こしました。チェコ裁判所側はこれを受けて契約書への署名中止の仮処分決定を下しました。
韓国政府は「法的問題を解消した後、チェコ政府は韓国と契約を締結する」との約束をしたという立場です。また、チェコ政府も「法的に問題ない」としている、とも。
しかし、結果的に問題無かったとしてもたびたびこうした事態が発生し、契約がスムーズに取りまとめられないとなるとイメージ的に良くありませんよね。
韓国国内からも「輸出モデルの限界」との指摘が上がっているようです。
ハンギョレの記事からです。
韓国原発代表団「手ぶら帰国」...低価格受注・知的財産権の限界に足首を掴まれる
(前略)
アン・ドクグン産業通商資源部長官は7日(現地時間)、チェコを出国する前にプラハで記者懇談会を開いた。この席でアン長官はドコバニ原発2期建設契約式がチェコ裁判所の「署名中止」仮処分決定で失敗に終わったことと関連して「しばらく手続き的に遅れたが、契約が失敗に終わったわけでは絶対にない」と強調した。チェコ政府が「裁判所の仮処分手続きが解消され次第、韓国と契約を締結する」という内容の事前承認をしたことを念頭に置いた発言だ。彼は「(フランス電力公社と比較して)入札書自体のクオリティが非常に差があり、優先交渉者に選ばれた過程でも韓水原がすべての面で圧倒した」として「今回の機会に韓水原原発設備の安定性・経済性がどれほど優れているかチェコ国民が確認することになるだろう」と自信を示した。
(中略)
しかし、今回の契約式が失敗に終わった状況をめぐって韓国型原発輸出モデルの限界が明らかになったという指摘が出ている。韓国に原発技術を伝授した米国ウェスティングハウスは「知識財産権が侵害された」として問題視し、フランス電力公社は「韓国の低価格受注は政府補助金規定違反」として訴訟を提起した。韓国型原発輸出戦略の弱点が、そのつど足を引っ張った格好だ。
東国大エネルギー電気工学科のパク・ジョンウン教授は「韓国の原発業界は米国設計の核心技術を移転され改良水準の研究をした後、独自に輸出可能な技術自立を成し遂げたという嘘を繰り返す」として「アラブ首長国連邦と今回のチェコ原発輸出の時に知識財産権紛争が続いたように、次の輸出の時も問題が再演されるほかはない構造」と指摘した。知識財産権問題解決のために韓水原が今年初めにウェスティングハウスに「原発輸出の度に技術使用料名目で9億ドル(約1兆2600億ウォン)を保障した」という外信報道と関連して韓水原は「両社間秘密維持条項により細部内容を公開できない」という立場だけを明らかにしている。
補助金疑惑・協力会社の搾取問題を拡大させた低価格受注
専門家たちはこれと共に入札競争で勝つための無理な「低価格受注」政策が不法補助金疑惑と協力会社搾取論難を大きくしたと話す。エネルギー転換フォーラムのソク・グァンフン執行委員は「ウェスティングハウスに1兆ウォン内外の莫大な知的財産権使用料を支給するうえに、法的・労働条件が全く異なるヨーロッパでフランスの半額で原発を建てると約束した。フランス電力公社が不法補助金疑惑を提起させた理由」と指摘した。
低価格受注は内部協力会社との関係でも問題になる。実際、国内初の海外原発受注であるアラブ首長国連邦のバラカ原発事業に協力会社として参加した韓国水力原子力は、主契約者である韓国電力と10億ドル(約1兆4千億ウォン)相当の追加工事費支給紛争を繰り広げている。韓電は子会社である韓水原と昨年末から精算交渉を行ったが、異見が狭まらず最近ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)に仲裁を申請した。
(後略)
ハンギョレ「한국 원전 대표단 ‘빈손 귀국’…저가 수주·지재권 한계 ‘발목’(韓国原発代表団「手ぶら帰国」...低価格受注・知的財産権の限界に足首を掴まれる)」より一部抜粋