韓国憲法の定める「自国民の経済発展を最優先にした科学技術振興」から「人類課題解決」に拡大しなければならない、という話

10月に入ると、韓国メディアは例年、韓国の有力候補者について記事を量産するのですが、今年は有力候補に選ばれた韓国人が「ただの一人もいない」ということで、妙に静かでした。

今年、2つの分野で日本人ノーベル賞受賞者が出たことは大きな話題になっていましたが、その中の一つに「韓国の基礎科学研究の課題」にフォーカスした記事があったので紹介します。

主に2つの点にフォーカスしていて、ひとつはノーベル賞受賞者の研究着手から受賞までの年数(31.8年)の長さに着目し、これでは韓国が受賞候補者を出すのにあと数十年かかる、という嘆きです。また、短期間で研究成果が求められる韓国の研究風土が(ノーベル賞に認められるような)挑戦的な研究を阻害しているとしています。

もうひとつ(こちらの方が良い視点だと思う)は、韓国の基礎科学研究の土台や方向性について、「自国経済発展から人類問題解決に拡大すべき」との指摘です。
韓国憲法は科学技術振興について「国民経済の発展」を優先するように解釈できる文面があります。そのため、どうしても経済成長に直結する研究、目標志向型の研究...平たく言うと、「すぐに結果の出るカネになる研究」が優先される傾向が強くなります。
当然、基礎研究が疎かになりますし、失敗する可能性の高い挑戦的な研究は避けられるのでノーベル賞の種すら撒かれていない状況というわけです。

 



京郷新聞の記事からです。

日本、今年「ノーベル賞二冠」に...韓国は「羨望半分、懸念半分」


(前略)

スウェーデンのノーベル委員会は、ヒト免疫システムの原理を究明した大阪大学の坂口志文教授と「金属・有機構造体」という高性能吸収素材を開発した京都大学の北川進教授を、今月6日と8日(現地時間)にそれぞれノーベル生理学・医学賞ノーベル化学賞の共同受賞者に選定したと発表した。

(中略)

韓国研究財団が2021年に出した資料である「ノーベル科学賞の核心研究と受賞年齢」によれば、ノーベル賞受賞者は研究着手から受賞まで平均31.8年がかかった。日本が1970年代以降、政府レベルで積極的な基礎科学投資を行った成果が21世紀に入って爆発的に現れているという話だ。

韓国の状況は日本と違う。政府レベルで積極的な基礎科学投資が行われたのは2010年代以降だ。単純に計算すれば韓国が科学部門ノーベル賞の有力候補国になる日は十数年後ということだ。

問題は、韓国基礎科学投資の方向が未来ノーベル賞受賞者を輩出するほど適合しているかについて懸念が出ているという点だ。

北川教授と共同で今年ノーベル化学賞受賞者に選ばれた米カリフォルニア大バークレーキャンパスのオマール・ヤギ教授と過去に一緒に研究した崇実大化学科のキム・ジャホン教授は「(ノーベル賞を受けるためには)新進研究者が創意的で挑戦的な研究をしなければならない」とし「しかし、このような研究は失敗する可能性が大きいため、(国内では)研究費を受け取るのが難しい」と話した。数年で短期成果を出すことが重要な国内風土で、長い呼吸で結果を待ってほしいと要求するのは容易ではないということだ。

韓国科学技術政策目標を「自国経済振興」から「人類課題解決」に拡大しなければならないという声も出ている。韓国憲法第127条は、国家が科学技術を振興しなければならない理由を「国民経済発展」と定めている。

日本は違う。約30年前に科学技術政策の目標を「国際主義」に拡張した。1987年に開かれた主要7カ国(G7)首脳会議で、当時の中曽根康弘首相は人類の疾病克服のための汎世界的な科学者支援プロジェクトである「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)」を提案した。HFSPは現在、37の加盟国を置き、年間6000万ドル(約850億ウォン)の予算を使う。

国内科学界では「HFSP提案を契機に日本は全世界のために科学技術を発展させる国に浮上した」として「結果的に主要ノーベル賞受賞国家に仲間入りすることになった」という声が出ている。



京郷新聞「일본, 올해 ‘노벨상 2관왕’인데…한국은 ‘부러움 반, 걱정 반’(日本、今年「ノーベル賞二冠」に...韓国は「羨望半分、懸念半分」)」より一部抜粋

HFSPを提案したことで「日本は全世界のために科学技術を発展させる国、とポージングしたから上手く行った」...このように読めなくも無いのですがちょっと残念です。もちろん、そんな簡単なことでノーベル賞が受賞できるわけないですけどね。

ただ、ノーベル賞は「人類に最大の貢献をした者」に授与されるものですから、「自国経済振興」から「人類課題解決」に拡大しなければならない、という提言は意味のあるものだと思います。