「米国が中東に最新半導体輸出を許可したから、韓国も安泰」という話

先月下旬、NVIDIAのCEOのジェンスン・フアンさんが韓国を15年ぶりに訪れた際、NVIDIA製GPU26万枚を韓国に「優先供給する」という話が出ました。300万ドル(約4億6000万円)規模の取引です。

韓国内の振り分け(とらタヌ)では、韓国政府が5万枚、残り21万枚をNAVERサムスン、SK、現代などの主要企業が取得することになっています。大学や研究機関などが頼れるのは、政府確保の5万枚との見通しです。
ただ供給計画は「2030年までに順次」とされているだけで、「いつ」「どこに」「どの程度の規模」という具体的な話はまだ出ていません。

また、トランプ大統領が以前「他国には渡さない」と発言していたことが韓国への輸出規制に繋がるのでは、との懸念もありました。
しかしこの懸念は米商務省がUAEサウジアラビアに対して米国産先端半導体輸出を認可したとの話が出たことで少し下がりました。

 



ソウル新聞の記事からです。

GPU26万枚の韓国供給、これでも不確実?...米、中東に半導体輸出を承認した背景


(前略)

19日(現地時間)、米商務省はアラブ首長国連邦UAE)にあるG42とサウジアラビアにあるヒューメイン(Humain)に米国産先端半導体の輸出を許可した。両AI企業は、NVIDIAのGB3800チップを最大3万5000個、または同等の演算力の半導体を購入することを許可された。

(中略)

これに先立ち、前任のバイデン米政府は米国産AI半導体が第3国を通じて中国など懸念国家に流出する可能性を減らすため、UAEをはじめとする大多数の国が購入できる米国産AI半導体に上限を設定した。

しかし、ドナルド・トランプ米大統領は今年5月、前政権の規制を覆し、UAEに先端AI半導体を輸出すると約束した。UAEからAI関連の大規模な投資を受ける代価だった。

以後、関連議題が多少遅れたが、最近トランプ大統領ワシントンD.C.サウジアラビアムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会い、米国政府が最終的にAI半導体輸出を許可した。

(中略)

米国はAIチップが中国と中国の技術企業ファーウェイの利益にならないように保障するための安全装置およびサイバーセキュリティ条件が今回の合意に含まれたと伝えた。

輸出統制を監督する米商務省は「今回の許可の条件として、両企業が厳格なセキュリティおよび報告要件を遵守することにし、商務省傘下の産業安保局(BIS)が遵守可否を監視する」と明らかにした。

専門家たちは米国の今回の承認が国家安保の側面で非常に重要な意味を持つと口をそろえる。

サウジ、UAEともに中国と緊密な協力関係を維持している状況で、米国の今回の輸出以後、中国企業などがセキュリティ・プロトコルを迂回してコンピューティングパワーに接近する方法を探すことが出来るという一部の憂慮が歴然としているためだ。

(中略)

それでも今回の輸出承認が下りたのは、NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営者(CEO)の勝利という評価が出ている。

ウォールストリートジャーナルによると、ファンCEOは数ヵ月間、チップ輸出を通じて米国がAI分野で先頭を維持できると主張してきたが、これは中東輸出を悩んでいたトランプ大統領の心を動かした。

AI半導体の韓国向け輸出、不確実性をほぼ解消
米政府がNVIDIA最新AI半導体の大中東輸出を許可したことで、ファンCEOが最近訪韓の際に最新AI半導体を韓国に販売すると言った約束の不確実性が減るものと期待される。

ファンCEOは先月末の訪韓の際、韓国政府やサムスン電子、SKグループ、現代車グループ、ネイバークラウドなど韓国企業に計26万枚のグラフィック処理装置(GPU)を供給することにした。

しかしトランプ大統領が2日に放映されたCBS時事プログラムインタビューでNVIDIAの先端AI半導体ブラックウェルを中国など他の国に供給するかを尋ねる質問に「出たばかりの新しいブラックウェルは他のすべての半導体より10年先にある」として「他の人々(国家)にそれを与えないだろう」と話し、韓国のブラックウェル購買に変数が生じるのではないかという憂慮を産んだ。

米政府が中東輸出を許可した状況などを推し量ってみれば、トランプ大統領の当時の発言は韓国ではなく中国を主に念頭に置いた発言と解釈される。

(後略)



ソウル新聞「GPU 26만 장 한국 공급, 이래도 불확실해?…美, 중동에 반도체 수출 승인한 배경 [핫이슈](GPU26万枚の韓国供給、これでも不確実?...米、中東に半導体輸出を承認した背景)」より一部抜粋

「これでも不確実?」と聞かれれば「不確実」でしょう。まあ、低減はしていますが。

「不確実性が解消された」とする記事の主張には以下の3つの要素があります。

  1. 中国への流出(横流し)リスクがある中東へ輸出が許可された
  2. トランプ大統領の「他国には渡さない」の「他国=中国」だった
  3. 米国のAI覇権維持という方針が確認された

1 については、中国に近い中東から最新半導体が中国に「横流し(転売)」されるのではないか、とのリスクです。
記事は韓国と中東を比較して、中東の方が「より厳しい条件(リスク重)」との前提に立っています。また、米国の軍事同盟であり、半導体サプライチェーンの重要なパートナーである韓国に対して、輸出を認めない可能性は「低い」とも見ています。

しかし、韓国には韓国で「技術流出」の可能性があります。こちらは製品がそのまま横流しされるわけではないため、場合によってはより動きを掴みにくく、それ故に米国からは中東以上に警戒されている可能性だってあります。

2 については「他の国=中国」は記者の解釈です。トランプさんは明言していません。
さらに、トランプさんが「取引(ディール)」好きという点を考えないといけません。中東への輸出許可は「安全が確認された」からではなく、「中東から巨額の投資を得られたから」と考えるべきです。
つまり、韓国にも相応の「見返り」を求めるということです。

3 は「ジェンスン・フアンCEOの説得が通じた=韓国も安泰」という論拠ですが、頭お花畑 ... 希望的観測に過ぎるのではないかと。
中東には米商務省から「厳格な監視」が条件付けられました。韓国にも当然、相応の「条件」が課せられるのが自然ですが、その条件を韓国が履行できるかどうか、米商務省からOKが貰えるかどうかは、全く別の話です。

よって、「これでも不確実?」と聞かれれば「不確実」でしょう。米政府が正式に韓国向け輸出を「承認」して初めて「不確実」ではなくなります。