公務員・軍人の「服従義務」を見直そうという動きの話

昨年の戒厳令の影響で、公務員の「服従義務」を見直そうという動きが活発になっています。

1949年に制定された韓国の国家公務員法57条には「公務員は上官の職務上の命令に服従しなければならない」との規定があります。この条約が「違法な命令を拒否する法的根拠がない」ために昨年の戒厳に繋がった、との主張から改正しようとする動きが出てきました。
「公務員」と言っていますが、もちろん軍人も同様です。軍人服務基本法を改正して「職務上の命令に服従すべき」→「職務上の正当な命令に服従すべき」に改正する案が出ています。


 

KBSニュースの記事からです。

「正当な」命令に服従...軍人服務基本法、今回は変わるか?

(前略)

一番争点になっているのは軍人服務基本法第 25条命令服従の義務条項です。受命者が命令の適法性や正当性を判断して従うように該当条項を変えようということです。これに対し国防部「内乱克服・未来国防設計のための民官軍合同特別諮問委員会」は今日(28日)、憲法価値定着方案を議論するセミナーを開催し、諮問委で検討している軍人服務基本法改正案を公開しました。

軍人服務基本法諮問委改正案のうち
第25条(命令服従の義務) ①軍人は職務を遂行する時、上官の職務上正当な命令に服従しなければならない。
② 第一項の規定にかかわらず、軍人は、次の各号のいずれかに該当する正当でない命令の遂行を拒むことができる。

  1. 命令が憲法または法律に明らかに違反する場合
  2. 命令が刑法等に違反して犯罪となる場合
  3. 職務上の目的以外の私的目的または権限範囲外の事項が明白な場合

これによると、軍人が従わなければならない命令を「正当な命令」と規定するものの、正当でない命令に対して3つに分類し判断基準を提示しています。

(中略)

最近、国防部もやはり国会に軍人服務基本法改正案に対する意見を提出し、上記と同じように「正当な」という字句を挿入しました。命令不服従で処罰する抗命罪を軍刑法44条で「正当な命令に従わない犯罪」と規定しているため、その反対の命令服従の義務は「正当な命令」に服従するよう定めることが法理的に正しいという法専門家の指摘があったためです。

(中略)

正当な命令に従わなければならないという法改正について軍内外ではさまざまな懸念も出ています。諮問委員の韓国国防研究院のパク・ムンオン責任研究委員は「行政審判程度の精巧な判断を経てこそ目的の正当性を審査することができ、現場でただ『正当な命令』と言えば将兵一人一人には混乱の余地が大きい」とし「上官の『正当な』命令より上官の『適法な』命令に改正すべきだと考える」と述べました。部下が上官命令の合目的性まで判断することになれば、野戦では副作用がさらに多くなるということです。また、刑事や懲戒の問題においても「適法な命令」を基準とするときにより明確になり得ると指摘しました。

パク・ムンオン委員は、正当性と適法性は必ずしも一致しないため、適法だが不当な命令があり得るし、このような命令に対して従わなくても良いという認識を与えかねないとも指摘しました。

(中略)

命令の拒否を法制化するには、その手続きと対象も具体的に決めるものの申告者を保護する装置も十分に用意されなければならないという指摘も出ました。諮問委はまた、将兵の申告を受け入れてくれる人々として▲命令発令者の上官▲軍人権保護官▲国防委国会議員などを提案しました。それだけでなく、違法であると考え命令を拒否したが、結果的に適法であると判断されたときの混乱を事前に防止できる原則と手続きが必要です。個人がこれらの判断を下せるように、十分な教育も必要です。

(後略)

KBSニュース「“정당한” 명령에 복종…군인복무기본법 이번엔 바뀔까?(「正当な」命令に服従...軍人服務基本法、今回は変わるか?)」より一部抜粋

「アイ・イン・ザ・スカイ」という映画があります。英・米・ケニア合同作戦でテ〇リストの捕獲作戦を実行している最中、〇爆用ベストを着用し、まさにテ〇が行われようとしていることが察知されます。事態を重く見た作戦本部は捕獲を諦め、テ〇を未然に防ぐためにドローンによる爆〇攻撃を実施することにします。
このとき攻撃命令を受けたドローンオペレーターの米軍兵士が、近くにいる民間人の少女が巻き添えとなる可能性から「命令を拒否」するシーンがあります。

これは、米国の軍法(Uniform Code of Military Justice: UCMJ)によって明確に規定されたもので、命令を拒否する権利というより「違法命令には従ってはならない義務」だそうです。
軍法には詳しくないので、チャッピーに色々聞きました。さすがチャッピー、映画のタイトルだけで説明してない細かいシーンの内容までちゃんと知ってました。

で、チャッピーが言うには「違法命令には従ってはならない」とする一方で「上官の命令に背くことは犯罪」とも規定されており、米軍法マニュアルにおいて「軍人が従う義務があるのは合法的な命令のみ」「違法命令には従う義務は発生しない」と解釈するのが通例で、これが「命令拒否」の重要な根拠となるそうです。

では、何をもって「違法命令」とするのかですが、1. 憲法違反 2. 連邦法違反 3. 戦争犯罪に繋がる命令 4. 明白に不当で軍務目的と無関係の命令 となります。

しかし、先に述べた通り「上官の命令に背くことは犯罪」ですので、上官の命令が「適法」なのであれば「命令違反は犯罪」、「違法」なのであれば「従ったら犯罪」です。法律の専門家ではない兵士に、現場で、即座に、そのような重い判断をさせることは、果たして適切なのでしょうか?

先の映画「アイ・イン・ザ・スカイ」の該当シーンでは、ドローン操縦士は命令を一度拒否した後、「法務官の判断」を要求しています。
チャッピーはこの行動を「命令に疑義がある場合は、法務官に確認を要求するという正当な行動であり、軍法上の義務に沿っている」と解説しています。