「桓檀古記」の話

この一週間ほど、「桓檀古記(ファンダンコギ;환단고기)」という言葉をよく見かけます。

1979年に書かれた本のタイトルで、韓国(古朝鮮)の歴史は紀元前7199年まで遡り、エジプト・メソポタミアを超える人類初の文明と主張するものです。また、朝鮮半島だけでなく、中国から中東まで、南北 5万里・東西 2万里に達する広大な領地を支配したと主張するトンでもファンタジー史書です。

ちなみにチャッピーにこの規模感を聞いたところ、一里にありー≒400mと考えるのが一般的なので、それでいくと、南北 5万里は約 20,000km、東西2万里は約 8,000kmになるということです。
朝鮮半島を東の端に置いた場合、西方向へ約 8,000kmというのは、カザフスタンウズベキスタントルクメニスタンキルギスタジキスタンあたりの中央アジアがすっぽり入ります。
南北 20,000kmは北側はロシア全域を含み、南側はベトナム、マレーシア、インドネシアなど赤道を超えます。というか、地球の一周が約 40,000kmです。
ちょっとこれは現実的ではないので、実際の領域を表すものではなく神話的スケール感つまり、「我々の文明圏=世界そのもの」という誇張表現ではないかと。

もちろん、韓国史研究者の間でも(まともな)研究者は、こんな偽書を信じてはいません。
「サイビ歴史(사이비 역사) 」というそうで、「サイビ」は「似而非」と書きます。「似て非なり」、日本語では「エセ」と読みます。

しかし、今月12日に行われた政府省庁の業務報告の場において、出席していた北東アジア歴史財団理事長にイ・ジェミョンさんが、この書籍について取り上げ、「どうなのか」尋ねる場面がありました。

具体的には次のように触れたようです。

  • 「桓檀古記を研究する人たちを見下して〇〇(卑下語)と呼ぶ」
  • 東北アジア歴史財団は古代史研究はしないのか?」
  • 「桓檀古記は文献ではないのか?」

この様子は生配信されており、それを見た人たちはイ・ジェミョンさんのこの発言が「桓檀古記に対して友好的な見解を示した」と受け取ったようで、様々な方面で議論になっています。


 

韓国経済の記事からです。

【千字コラム】「桓檀古記」騒動


(前略 ※ナチス・ドイツの例)

「輝かしい過去」はしばしば卑しい現実を忘れさせる。コンプレックスに満ちた社会であるほど、ファンタジーのような昔話に執着する理由だ。日帝の支配と6·25戦争の惨禍を経験した世代にも似たようなことが起きた。1979年、檀君橋系統太白橋という宗教創始者として知られたイ・ユリプが「桓檀古記」という本を書いた。彼は韓国史の出発点を紀元前7199年まで引き上げた。韓国はエジプトとメソポタミアを越える人類初の文明として位置づけられた。また韓半島満州、中国から中東まで「南北5万里、東西2万里」に達する広大な領土を支配した種族で韓民族を描いた。

この約40年間、<桓檀古記>は大衆はもちろん、文化界、政界などに染み込み、様々な副作用をもたらした。歴史学者の中で「栄光ある民族史」という大衆の期待に符合しない人は「植民史学者」と罵倒された。通説である楽浪郡平壌説に基づいて本を出したという理由で米国ハーバード大学が進行していた「古代韓国史プロジェクト」は資金支援が切れた。パク・クネ元大統領の演説文に「歴史は魂のようだ」という<桓檀古記>の一節が登場し、「北東アジア歴史地図事業」は与野党議員が「植民史観」と文句をつけた末に失敗に終わった。

イ・ジェミョン大統領が12日、政府省庁の業務報告を受けていた中、パク・ジヒャン北東アジア歴史財団理事長に「桓檀古記」を取り上げ、この本に友好的な見解を表わした。その後、議論が起こると、大統領室は急いで「<桓檀古記>の主張に同意したり、これに対する研究や検討を指示したわけではない」と釈明した。突然、<桓檀古記>騒動が起きる姿を見ながら、韓国の歴史に対する知的遺産が依然として厳しいという感じを拭えない。

韓国経済「[천자칼럼] '환단고기' 소동(【千字コラム】「桓檀古記」騒動)」より一部抜粋

話を振られた東北アジア歴史財団の理事長は「在野の研究者たちの話のようですが、彼らよりも専門性の高い研究者たらちの理論と主張の方が説得力があるため、私たちは専門研究者の意見を受け入れるしかありません」と、非常に無難な回答をしています。