まだ終わってなかった「ソメイヨシノはチェジュ島起源説」の話

もうこの辺りでは桜も散って葉桜も終わったので今年は終了と思っていたのですけれど、まだくすぶっていたらしい桜ネタです。

前にお伝えした「ソメイヨシノと王桜の混同」で紹介した記事が元で韓国の山林庁が対策(?)を講じるようです。討論会をするとかなんとか。一体何を討論するんでしょうね?科学的資料を元にしたものならいいんですけど...声闘文化ですからねぇ。

※2022.04.18 一部修正※
一部誤認がありました。コメントにて指摘を頂きましたので赤字箇所を修正・追記しております。申し訳ございません。

 



ハンラ日報の記事からです。

王桜起源論議再点火...山林庁、あたふたと対策作り


山林庁と国立樹木園などによると、国立樹木園が2018年に発表した「世界初のチェジュ島自生の桜の木のゲノム解読」報道資料と研究結果に対する論議が高まると、山林庁は所属機関である国立樹木園、国立山林科学院と討論会を開催することで解決をはかる。近いうちに開催の対象と参加範囲などを確定して討論会の日程を具体化するという計画だ。

これは6日、チェジュ島議会島民カフェで行われた記者会見で「王桜が我が国固有種ではないとした国立樹木園の発表は『虚偽』との主張が提起されたことによる措置だ。当時、記者会見でキム・チャンス漢拏山生態文化研究所長は「国立樹木園は王桜と日本王桜が起源と種が違う『異なる植物』と発表した」とし「王桜が日本産という日本の主張を受け入れたもの」と強く批判した。

(中略)

王桜の期限を巡り、互いに異なる動きが続いているのもこのような必要性を増している。キム所長は国立樹木園が「日本王桜」と明らかにした栽培種の王桜も、その起源はチェジュから始まったため、日本産は存在しないと強く主張するのとは異なり、2月に発足したある社団法人は「国内に植えられた王桜の大部分は日本産」とし、これをチェジュ自生の王桜に植え替える運動を行っている。偶然にも、この社団法人の会長は国立樹木園長を務めた。

(中略)

キム教授は引き続き「論文を見ると、日本・アメリカの王桜タイプと同じように出てきた済州観音寺の王桜も(国立樹木園が「済州王桜」と発表した)奉蓋洞王桜と母系が同じであるという分析がなされたが、チェジュ王桜と日本王桜を別のものと見ている」とし「第1世代の交雑種の木の場合には特に母親がいる所に息子や娘がいるため、母系が同じだというのはとても重要な事実だ。これは自生種の王桜が済州で誕生して日本に移転なった可能性を高める」と強調した。

(後略)



ハンラ日報「왕벚나무 기원 논란 재점화... 산림청 부랴부랴 대책 마련(王桜起源論議再点火...山林庁、あたふたと対策作り)」より一部抜粋

念の為、「日本王桜」というのは「ソメイヨシノ」のことです。変な呼び方ですけどできるだけ原文に合わせてあります。

 

前回の記事では「王桜とソメイヨシノが別種」というと「桜は日本産」という主張を肯定することになるという理屈が分かりませんでした。
「王桜はチェジュに自生」「ソメイヨシノは人工交配の園芸種」、なぜこの2つが同時並列で成り立たないのか?と思っていたのですけれど、今回の記事ではストレートに書かれていますね。「園芸種ソメイヨシノも起源は王桜」こういう斜め上のことを考えていたんですね。

ご存知の人も多いでしょうが、ソメイヨシノエドヒガンとオオシマザクラの人工交配種(雑種)です。種からは増やせないので接ぎ木です。
王桜もエドヒガンとオオシマザクラの雑種です。※誤認していました。王桜はエドヒガンとオオヤマザクラとの雑種です。※ただし、自然交配のため遺伝的に多様性があります。接ぎ木のソメイヨシノは全部クローン。
ただし、自然交配のため遺伝的に多様性があります。接ぎ木のソメイヨシノは全部クローン。

個人的には「別物」と考えた方が納得がいきます。なんといいますか...経年の違い?多様性の違い?
例えば、同じ「ミアキス」という動物から犬や猫、アシカは分かれたわけですけど、その分岐の第一世代の種と、それが更に交配を重ねた現在の犬、または猫、アシカ等々を比較した場合、明らかに別の動物ですよね?

なんか、うまく例えられないんですけど、それくらい違和感を感じるのです同じエドヒガンとオオシマザクラの交配種でも、交配種同士で何世代も経っているものと、接ぎ木でしか増えない(=独力では増えないクローン)ものを一緒くたに「同種」とするのは植物学的にどうなんでしょう?と。ソメイヨシノオオシマザクラ、王桜はオオヤマザクラ。父系が異なります。※
よしんば、それで「同種」であったとして、江戸後期に染井村の植木職人が人工交配で作ったものがチェジュ島原産になるのは無理があるでしょう。