日本総領事館で奇襲デモを行った大学生に「宣告猶予」判決が出た話

昨年の7月22日のことです。
釜山にある日本領事館内へ、韓国の大学生7人が図書館利用手続きを取って入り、中庭に出てプラカードを掲げるという「奇襲デモ」を行いました。

今年の2月6日に最終弁論が行われたのですが、その冒頭で被告の一人が読み上げたメモには「植民地支配に謝罪もせずに居直り、韓国に輸出規制措置をした日本政府の態度は目に余ると思いました。誰に害を及ぼす意図もなく、日本政府に謝罪しろと言うために領事館に入った」という内容があり、読み上げると傍聴席から拍手が沸き起こったそうです。

この場で検察は、米国大使館への侵入事件の裁判を見てから意見書を送付する、として求刑を先送りにしていましたが、昨日2日に1審判決が出まして、全員に対して罰金刑への宣告猶予判決が出ました。
理由は「被告人の行動に国民も共感した」から。


聯合ニュースの記事からです。

日領事館奇襲デモ7人、宣告猶予...裁判所「国民も共感」


日本の経済情報に反発、安倍の謝罪を要求して釜山の日本領事館に入り奇襲デモを行った大学生7人が1審裁判ですべて宣告猶予を受けた。

釜山地裁刑事4単独プ・トンジク部長判事は2日、釜山の日本総領事館に入って奇襲デモを行った容疑(共同住居侵入)で起訴されたクォン氏など大学生7人への宣告裁判で、これらのすべてに罰金300万ウォンの宣告猶予を宣告した。

宣告猶予は一定期間、刑の宣告を延期し、猶予の日から2年が経つと事実上無かったことにする判決だ。

部長判事は「被告人の行動に国民も共感した。しかし、手順に違反し、このような方式を取ることは後進的な方法のため、むしろ意味を歪曲して伝えてしまう」と述べた。

続いて、「被告人が今回の機会を通して手続きの重要性を学ぶことを願って」と「社会進出を準備中の大学生である点などを判決に勘案した」と量刑理由を説明した。

クォン氏など大学生7人は昨年7月22日、午後2時35分頃、釜山東区草梁洞の日本領事館に侵入して「日本の再侵略・経済を挑発糾弾する」、「安倍は謝罪せよ」などのプラカードを掲げたまま約10分間スローガンを叫び、デモを行った容疑で起訴された。

これらはその間、裁判で「青年としてしなければならない正義の行動をしただけだ」と主張した。

聯合ニュース「日영사관 기습시위 7명 선고유예…법원 "국민도 공감"(日領事館奇襲デモ7人、宣告猶予...裁判所「国民も共感」)より


執行猶予はありますが、宣告猶予は日本では不採用の制度です。
簡単に触れておきます。

まず執行猶予は「刑の執行が猶予される期間」です。
例えば、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年となれば、4年経った時点で「懲役2年6ヶ月」の言い渡し効力が消滅します。
ですが、「刑を言い渡された」という事実は残るため、実刑を受けていなくても犯歴という記録では残ります。一般的に犯歴があれば前科とされるため、執行猶予でも前科持ちになります。


一方の宣告猶予は刑の宣告そのものを猶予します。宣告から2年経過すれば免訴…つまり「なかったこと」になります。今回の場合だと罰金刑ですね、これも支払う義務がなくなります。
もともとは英米などで青少年の更生を目的に導入・発展した制度ですが、韓国では「道義的参酌事由があるとき」に事実上「無罪」とするためにも使われます。
実際、被告人たちは自分たちの行いを「正義の行動」と言っています。そこには反省は見られません。