「終戦宣言」プロセス、米韓で異見があるかもしれないという話

米国家安保補佐官のサリバンさんが、韓国が主張する「終戦宣言」について米国と韓国とで「それぞれの段階へのプロセスに異見があるかもしれない」との認識を示したそうです。

記者からの質問は「終戦宣言が北朝鮮を対話に引き出す切欠になると考えるか?」という趣旨のものです。質問に対する答えとしては少しズレています。
戦略構想の核心部分は一致している、としています。しかし同盟重視路線を強調してきたバイデン政権が、直接質問されたわけでもないのにわざわざ言及した背景には、米国は以前と変わらず「非核化が先」と釘を刺し、なんか勝手に盛り上がっている韓国を牽制する狙いがあったのでは?と考えられます。

 

 

中央日報の記事からです。

政府「終戦宣言入り口論」主張するも、米「順序に異見があるかもしれない」..「バイデン外交冊子」の牽制句?


終戦宣言に対し「韓国と引き続き協議する」という原論的立場だけを維持してきた米国が、順序、時期、条件など3つの要素を特定して韓国と異見があり得ると示唆した。任期末総力戦に出た文在寅政府の「終戦宣言万能主義」に対して慎重な立場を表したものである可能性もあると指摘されている。

ジェイク·サリバン米ホワイトハウス国家安保補佐官は26日(現地時間)、ブリーフィングで終戦宣言関連質問に「それぞれの段階に対する正確な順序(sequencing)·時期(timing)·条件(condition)に対して韓国と多少異見があり得る」とし「ただ(韓米間)核心的な戦略的構想は根本的に一致する」と述べた。
米国内で国連軍司令部および在韓米軍の地位変更など終戦宣言の波及力に対する懸念が表出されるという中央日報の報道(10月26日付)後、政府は「終戦宣言は信頼構築のための政治的·象徴的措置であり、現在の停戦体制の法的·構造的変化を意味しない」(アン·ウンジュ外交部副報道官、26日の定例ブリーフィング)と説明したが、直後に出たサリバン補佐官の発言は多少違う形だ。

(中略)

特に彼が韓米間の意見が異なる可能性があると特定した3つの要素はすべての交渉で核心だ。噛み砕いて言うと▶誰が、何を先にするか(順序)▶いつするか(時期)▶何を対価にするか(条件)などの問題だからだ。

①順序(sequencing)=「非核化を優先」

サリバン補佐官が言及した「順序」は終戦宣言と北朝鮮の非核化措置間の前後関係に該当する。米国は終戦宣言の論議が始まったブッシュ政府時代から、北朝鮮の非核化措置前に終戦宣言からしようという韓国の提案を受け入れようとしなかった。
終戦宣言は、北朝鮮側の真摯な非核化措置が先行するか、少なくとも担保された時に可能だというのが、米国の変わらぬ立場だ。米国は北朝鮮の非核化措置とそれに比例する米国の相応措置を一つの「パッケージ」としてまとめるアプローチをしてきたが、そのパッケージの中でも誰が先に、どのような措置を取るかは最後まで神経戦が繰り広げられている部分だ。

(中略)

②時期(timing)=「後退しないよう検討すべき」

サリバン補佐官が2つ目に言及した「時期」は文在寅政府が任期末終戦宣言を急いでいるという点と無関係ではなさそうだ。
政府は来年2月の北京冬季五輪を前後に、南·朝·米·中の終戦宣言が実現することを望む雰囲気だ。先月から外交·安保ライン各級で対米説得戦に乗り出したのも北京五輪開幕まで100日も残っていないという時間的切迫さと無関係ではない。
同時に政府は米国との協議後「終戦宣言が北朝鮮との対話を始めるための契機に非常に有用だということに韓米が共感している」(19日米ワシントン、政府高位当局者)、「米国も真剣だ」(イ·スヒョク駐米大使、13日米ワシントン国会外交通商委員会国政監査)など論議の肯定的側面を浮上させ、積極的に知らせている。しかし米国は「協議を続ける」という原論的な立場だけを表明している。一部では、来年3月の大統領選挙など、国内政治的要素を意識するのではないかという指摘も出ている。

(中略)

終戦宣言を非核化プロセスの序盤に置くか、後半に置くかも敏感な問題だ。政府は終戦宣言と関連し「非核化入口論」を展開している。プロセス序盤に非核化協議を推進するうえで有用な措置ということだ。しかし米国は、序盤に終戦宣言をした後、非核化措置が十分に行われない場合、否定的効果を憂慮するムードが強いのが事実だ。

③条件(condition)=「制裁原則·同盟基盤に不変」

最後の要素である「条件」は文字通り「終戦宣言を何と変えるか」と関連する。朝米は現在、いずれも終戦宣言について「私が受け取るものではなく、相手へのプレゼント」のように認識している。
これと関連し国立外交院長を務めたキム·ジュンヒョン韓東大教授は「2018年、シンガポール朝米首脳会談で終戦宣言が取り上げられた時と同様に、現在も米国内の強硬派を中心に終戦宣言を北朝鮮に対する米国の譲歩措置と見る見方が優勢だ」と述べた。

一方、北朝鮮は最近、キム·ジョンウン委員長まで出てきて対北朝鮮敵視政策と二重基準の撤回を終戦宣言の「条件」に掲げるなど、むしろ北朝鮮が施す恩恵的措置のように主張している。

これに関し文在寅大統領統一外交安保特別補佐官を務めたムン·ジョンイン世宗研究所理事長は26日、環黄海フォーラム討論会で「南北が終戦宣言をし朝米が対話するなら、北朝鮮が望むものも与えなければならない」とし、国連対北制裁緩和などを取り上げた。チョン·ウィヨン外交部長官も20日、国会外交統一委員会の国政監査で「北朝鮮が対話に応じれば制裁緩和も十分検討しなければならない」と述べた。
サリバン補佐官が韓米間に異見がある部分として「条件」を挙げたのも、こうした韓国内の雰囲気を念頭に置いたものと考えられる。

(中略)

北韓大学院大学のキム·ジョン教授は「米国国家安保会議の責任者がこのように明確に話したのは協議過程で異見があるという意味であり、韓国に対する牽制の意味もあるようだ」とし「特に『条件』は米国が最も憂慮する部分で、終戦宣言後、国連司令部の法的地位などに対して朝中が問題を提起した場合、米国の長期的な戦略構想まで乱れる恐れがある」と説明した。

外交部当局者は27日、サリバン補佐官の発言について韓米間の意見の相違を尋ねると「今後終戦宣言に対して米国と真剣で深みのある協議を進める」という原論的立場を明らかにするだけで即答しなかった。



中央日報「정부 '종전선언 입구론' 주장하는데 美 "순서에 이견 있을 수도"..'바이든 외교책사'의 견제구?(政府「終戦宣言入り口論」主張するも、米「順序に異見があるかもしれない」..「バイデン外交冊子」の牽制句?)」より

米朝ともに「終戦宣言」を相手への贈り物と考えている、という指摘が面白いです。私は「終戦宣言」を誰よりも欲しがっているのは韓国(ムン政権)だと思っているのですけれど。