韓国「議長国が日本からシンガポールに変わるからCPTPP申請する」という話

韓国でCPTPP加盟への関心が高まっています。
立ち上げ当初は、韓国は各国とFTAを結んでいるから恩恵がほとんどない、としていたのですけれど、英国、台湾、中国とたて続けてに加盟申請に向けた動きが起こると浮足立ってソワソワし始めたようです。
しかし慌てて動き出したので国内の調整、法整備はまだ進んでいません。最近になってCPTPPで市場開放を強いられると気付いた農業関係者らがデモを行うなど調整不足が露呈し、加入申請の正式表明を11月上旬に先送りました。

メディアの論調は「CPTPPへの加入が必要」に統一されている印象です。設立メンバーの日本でさえ、枠組み稼働前には種々の意見があったというのに、気持ち悪いくらい反対意見を見かけません。
内容も「〜しなければならない」とするものの、何を具体的にどうすべきか、といったような部分には触れていません。「加入」という結論ありきのように感じます。

 

 

ソウル経済の記事からです。

[ヒョン·ジョンテクの世界を見る]それでもやらないといけないCPTPP加入


(前略)

文在寅政府が日本とオーストラリア、ベトナムなどが加盟国の包括的·先進的環太平洋経済パートナー協定(CPTPP)に加入しようとしている。時期的に「なぜ今になって」と思ったのが事実だ。政府が加入申請をしても手続きを踏めば、次の政府になって交渉が本格的に開始される。CPTPPが発足した3年前、または少なくとも英国が加盟を申請した今年初めの機会を先送りしただけだった。

政府は「先月、中国と台湾が相次いでCPTPP加盟を申請し、来年初め、議長国の地位が日本からシンガポールに変わるので今申請する」と説明した。時期を逃したという話にほかならない。本当に望んでいたのなら協定主導国である日本が議長を務める初期に申請すべきだった。推測するに、国内の抵抗を恐れ政府が躊躇して中国の加盟申請を機会にしたのではないか。結果的に中国·台湾と韓国の加入問題がからみ合い、問題が複雑になった。

とはいえ、CPTPP加盟は申請しなければならず、必ず実現させる必要がある。韓国は長い経済関係を持つ日本とまだFTAを締結できずにいる。韓日FTAは早くから必要性が認められ、2003年に交渉を開始したが中断した。中南米の重要交易国であるメキシコとも2006年交渉を始めたが中断した状態だ。日本とメキシコが加盟国であるCPTPPと協定を結べば両国とのFTA空白を自然に埋めることができる。

豪州など他のCPTPP加盟国とは韓国が既に協定を結んでいるが、CPTPPが追加的な恩恵を与えることもできる。累積原産地規定のためだ。関税免除の恩恵を受けるためには協定締結国内で行われた付加価値の比重が一定基準を超えなければならない。二国間協定ではこれを満たすことが難しくても、CPTPPのような多国間協定では相対的に易しい。例えば、マレーシアの資材を韓国に持ち込み、加工後オーストラリアに輸出する商品も恩恵を受けることができる。このような特性でCPTPPがコロナ19後に生じたグローバル供給網の崩壊を補完する役割もする。

米国は当初、環太平洋経済パートナー協定の主軸国家だったが、ドナルド·トランプ元大統領の時に脱退しておりバイデン政府もまだ復帰に消極的だ。しかし潜在的なCPTPPメンバーで、米国加盟時は世界経済の30%を超える大きな市場になる。韓国が決して抜けてはならない理由だ。

政府と政界がすべきことがある。法によると、通商交渉開始前に国会に計画の報告が義務付けられている。政府と180議席の与党はCPTPP交渉計画の国会報告過程を早期に終え、次の政府が順調に交渉を推進できるようにしなければならない。日本とギクシャクした関係もCPTPPを契機に見直さなければならない。日本は韓米日安保同盟の一員であり、世界第3の経済大国である隣国だ。強制徴用、日本の輸出規制などかかっている問題も一緒に解決し、未来志向的に進まなければならない。農畜水産などの協定で被害を受ける分野に対する対策も当然まとめなければならない。ただし、外形上の支援規模ではなく、実質的に役立つ対策に焦点を置く必要がある。



ソウル経済「[현정택의 세상보기]그래도 해야 할 CPTPP 가입([ヒョン·ジョンテクの世界を見る]それでもやらないといけないCPTPP加入)」より

韓国が「今」加入すべき理由が何一つ語られていません。
もしかしたら書き手は初期から加入賛成派だったのかもしれませんけれど、この文章ではちょっと判断つきかねます。
ともあれ、あれやこれや指摘しているものは以前からそうですし、なんなら米脱退以前は積極的に参加表明していないとおかしいです。(あえて言えばコロナの影響くらい?)
傍から見ていると、韓国は中国の加入申請の動きを見て国内向けに名分が立つと判断したように思えます。

 

中国、台湾、韓国が同時期に加盟申請をすることで事態がややこしくなった、としていますが、加盟審査自体は一括ではなく個別に行われるのですから、何ら影響はないはずです。
韓国政府は議長国が日本からシンガポールに変わることで加盟のハードルが下がる(工作可能?)と思っていそうではありますけれども、でも加盟は全会一致でないと承認されませんから議長国の交代に意味はありません。