韓国さんの経済記事にメダパニ食らった話

韓国経済新聞さんの記事と、ハンギョレ新聞さんの経済記事なのですが、全力で株安・ウォン安から目をそらそうとしています。
本当に分かっていないのか、パニックを避けようと敢えて無理矢理な論理を展開した挙句、読者にメダパニを掛けてしまったのか…。


特に韓国経済新聞さんのです。何度読み直しても下の引用部分の意味がわからないのです。

中国など競合国と比較するためにこの2年間のウォン相場の上下変動幅100ウォンを1000分の1にリデノミネーションすれば0.1ウォンにすぎない。
韓国経済新聞/中央日報日本語訳2019年05月20日1ドル=1200ウォンに迫るウォン相場…「6大観戦ポイント」より


なんで勝手に1000分の1にすんの?

小数点以下の数字を人民元と揃えるためでしょうが、ドルに対するウォンの通貨価値を切り上げてることになりますよね?
それで「上下変動幅は0.1ウォンに過ぎない」って、そんなことに意味があるのでしょうか?
よくわかりません。


続いてハンギョレ新聞さんの記事からです。
ウォン安が進めば海外投資筋が帰ってくるという謎の主張をしています。

19日、ハナ金融投資の資料によれば、2011年以後今まで、ウォン-ドル為替レートが1160ウォンを超えれば、外国人投資家はKOSPI(有価証券)市場で売り越しに転じるが、為替レートがさらに上昇し1200ウォン以上になれば買い越しに切り替わってきた。区間別に見れば、為替レートが1160~1200ウォンの間で動く時、外国人の週間平均売り越しは2003億ウォンに達した。一方、1200~1240ウォンの区間では週間平均748億ウォンを買い越した。
ハンギョレ新聞2019年5月19日「KOSPIを離れた外国人投資家、為替レート1200ウォン超えれば帰ってくる?」より


非常に楽観的な見通しですね。
ですが、この見方には問題点が2つあります。


1つは、株安の主原因をウォン安に限定していることです。
ウォン安によるものではなく、先行きの不透明感によるものが大きいです。
米中貿易摩擦の決着が付かない状態で、ただでさえ四半期決済が振るわなかった韓国企業の業績がそう簡単に回復するとは思えない、ということでしょう。
こうした場合、輸出依存が高く、内需の弱い国から真っ先に資金が引き上げられます。
世界的な不況が始まった場合、輸出依存が高い国ほどダイレクトに影響を受けるからです。

今のウォン安は、株価に引っ張られた形です。株価が下がったからウォン安になったのです。
ウォンが1200に達しても、株安が続けばウォン安は続きます。ウォンの価格をトリガーに株安が止まる保証はありません。


2つ目は、チャートのテクニカル的な問題です。

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ピンクの四角の内側が、記事中で言及されている2011年からの高値・安値の圏内です。
青いラインが1200ウォンの位置です。
のポイントが、ウォンが1200を超えて相場が反転した、と記事で主張しているポイントです。

ピンクの枠内だけに着目すると直近の高値も安値も抜けずに、ヨコヨコ展開になっています。
こうした形をレンジ相場と呼び、上辺と下辺を行ったり来たりしながら方向感なくダラダラ動く傾向があります。

レンジ相場から抜けると、抜けた方に動きます。
レンジの期間が長ければ長いほど、動く値幅も大きくなります。


上のチャートで見ると、上部のKOSPI(韓国総合株価指数)の方はピンクの四角を上に抜けています。
ですがその後、再度四角の中に押し戻されています。
レンジ抜け成功の場合、一度価格が下がってきた時にレンジ価格帯の上(ピンク四角の上辺)で反発して上がっていきます。(市場参加者のコンセンサスとして下値が切り上げられるため、新規買いが入りやすくなる)
反発せずにレンジ内に押し戻された今回の場合は、レンジ抜け失敗とみなします。
※KOSPIの方は厳密に言うとレンジ相場と見るより三角保ち合いと見たほうが自然なように思います。いずれにせよ、一度上方向に抜けたものの、下値固めに失敗していますが…。


まだ可能性のある見方

チャートを見る時は複数の視点が大切とされますので、他の見方も示してみます。

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上部のKOSPIに斜めの四角を追加しました。
これをチャネルラインとして上昇していく可能性です。
チャネルラインは斜めのレンジと同義と思ってください。
斜めの上辺と下辺とで反発しながら上がっていきます。実際は斜めラインなので、下値も高値も切り上がります。


まだチャネル下辺をブレイクしていないので、ここで反発すると直近高値まで上昇するかもしれません。

ただし同時に、このチャネルライン下辺が抜かれれば、1600あたりまで下値余地が広がることになります。
そうなると、月足チャートで下降トレンドが発生します。
ここは重要な防衛ラインです。


どのような見方をするにしても、記事中で言われているような「ウォンが1200になったら自動的に買いが入る」というような単純で機械的なものはありえないと思います。
特にこの手の防衛ラインは「三度目の正直」というのがよくあります。