芸術文化勲章の話

フランス文化省が運用する名誉勲章である芸術文化勲章(L'Ordre des Arts et des Lettres)が鳥山明先生に授与されたそうです。
おめでとうございます。

ハフィントンポスト(仏版)が報じています。
初の叙勲なので、階級はシュヴァリエになります。

ご本人は授与式には参加されず、代理人がメダルを受け取られました。


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シュヴァリエメダル


芸術文化勲章は「芸術家、作家、創作者から尊敬され羨望されるもの」に送られます。
階級には三段階あって、最初はシュヴァリエ(騎士)、次にオフィシエ(将校)、最後にコマンドゥール(騎士団長)となります。
オフィシエコマンドゥールについては、シュヴァリエを授与されてから少なくとも5年経過後に新たに叙勲に値する、と判断された場合に昇進します。
日本人の受賞者は約120名ほどいらっしゃいます。


フランスで日本のアニメ・マンガが受け入れられるようになったのは1980年代です。
欧米諸国の中では比較的早くから日本のサブカルを受け入れていたようです。

そう言えば、日本が初めて参加した1900年のパリ万博も大成功だったようですし、浮世絵も「ジャポニズム」としてフランスの印象派の画家たちにインスピレーションを与えています。
相性が良いのかもしれませんね。


フランスでは1980年代当時、「クラブ・ド・ロテ」という放送局が日本アニメ専門チャンネルを持っており、そこでほぼリアルタイムに日本アニメの放映が行われていたそうです。
その中でも「ドラゴンボール」がアニメ・マンガ文化の浸透普及に果した役割が非常に大きかったということが、今回の受賞に繋がったものと思われます。

1980年代後半から90年代頃には、日本のサブカル流入を「フランス文化への侵略」と捉えた層からの反発も強く、「暴力シーンが多い」「質が低い」などの理由でシーンの削除が多発し、最終的に1996年には放送中止になっています。

アニメや漫画と犯罪心理を結びつけて論ずるような主張が大きくなってきたのが、ちょうどこの頃です。


ですが、それにより独自に日本アニメを輸入する専門店や出版社が登場することになり、2000年からは日本文化の総合博覧会と称して「ジャパンエキスポ*1」が開催されるに至っています。

日本アニメ・漫画のフランス進出黎明期に果した役割はとても大きいのですね。


*1:1999年に前身となるイベントが実施された際の来場者は3千人。2018年は来場者24万人超。