利率10%を超える青年向け積立定期口座、満期2年にも関わらず中途解約率23%という話

ムン政権当時の2022年、若年層向けに「青年希望積立金(青年積金)」という制度が作られました。
簡単に言ってしまうと、年齢制限と所得制限がある(19歳以上、35歳未満、年収3600万ウォン≒360万円以下)代わりに高金利(最大6%)の積立定期預金(満期2年)という感じのものです。
さらに貯蓄奨励金というシステムがあり、月の積立額(最大50万ウォン≒5万円)に応じて「お金貯められて偉いね!」とご褒美金が満期に貰えるようになっています。これが2年間で最大36万ウォン(≒3万6千円)。
大利率(6%)で最大金額(50万ウォン)を毎月積み立てて満期(2年)を迎えるとすると、実際の利率が10%近いことになります。

発表時点で政府が予想していた加入希望者は38万人程度でしたが、実際は加入可否の問い合わせだけで200万人が殺到するなど大盛況でした。(2022年2月開始時点で289万5千人)

ところが、こんな好条件で好評を博した「青年積金」で途中解約が続出しているそうです。

 



ソウル経済の記事からです。

金利10%だけど仕方ないよ、お金がないから...青年積金に何があったのか?


(前略)

21日、金融監督院がカン・ミングク国民の力議員室に提出した「青年希望積金運営現況」によると、該当商品が発売された昨年2月当時、最初の加入者は289万5546人だったが、先月末基準で中途解約者数は68万4878人と集計された。中途解約率は23.7%だった。

(中略)

特に、10万ウォン未満の納入者の中途解約率が49.2%で最も高かった。納入金額帯別解約現況を調べれば「10万ウォン以上~20万ウォン未満」が48.1%、「20万ウォン以上~30万ウォン未満」が43.9%、「30万ウォン以上~40万ウォン未満」が40.3%など後に続いた。納入限度である50万ウォンずつ積み立てた青年たちの場合、中途解約率が14.8%で相対的に低い方だった。状況がより良い青年であるほど納入余力を維持し続けたものと分析される。

年代別に見れば年齢が上がるほど中途解約率が低くなった。加入上限年齢である満34歳の中途解約率は21.2%なのに対し、加入下限年齢である満19歳の解約率は27.9%に達した。

このように中途解約が上昇した理由としては、高物価と高金利に伴う青年層の貯蓄余力下落が上げられる。また、最大36万ウォンの政府支援金が満期時に一括支給されるため、利子を体感しにくい点も一役買ったものと見られる。

(後略)



ソウル経済「금리 10%면 뭐해 돈이 없는데…청년적금에 무슨 일?(金利10%だけど仕方ないよ、お金がないから...青年積金に何があったのか?)」より一部抜粋

純化して「青年希望積立金」のエグさを日本円で見てみましょう。
毎月5万円積み立てた場合、年率6%なら利子だけで7万2千円(1年ごとの単利)。そこに3万6千円の「ご褒美金」が付いて10万8千円になります。
5万積み立てるのに総額120万円要りますので、新社会人で独り暮らしの人などにはキツイかもしれませんが、多少なりとも預貯金があるならば、短期ですし、かなり良い金融商品です。もし日本でこんな制度が出たら、借金してまでは論外としても、月当たりの積立額を減らすか、ちょっと頑張って節約して活用するよう勧めますね。


この記事だと現時点での契約者の人数がよく分かりませんが、中途解約者数は発売以降の累計と思われるのでその前提で以下の話は進めます。
中途解約者についての記事は今年1月にも出ていまして、昨年9月時点...つまり、開始7ヵ月後の段階で既に30万人が中途解約していたことが分かっています。それが開始から1年3ヵ月(15ヵ月)でほぼ倍の68万人が解約したということです。


解約の理由は経済状況の悪化だけではなく、6月から開始される「青年跳躍口座」との絡みも指摘されています。
こちらはユンさんが選挙公約で掲げたもので、青年希望積金と似た制度の「特典」付きの積立定期です。ただし、満期は5年、基本金利は最大6%となっているものの、3年間は固定金利、残り2年は変動金利とになるようです。

月々積立額に応じて政府が「補助」を出す仕組みになっており、青年積金が「ご褒美金」を満期時に利子と一緒に受け取る仕組みだったのに対し、毎月の積立金に「上乗せ」する形になります。
例えば、積立て額が月最大の70万ウォン(約7万円)だった場合、毎月2万4千ウォン(≒2400円、6%分)の「上乗せ」が受けられます。年間で28万8千ウォン(≒2万8千円)、5年で144万ウォン(≒14万4千円)です。利子は最大6%を5年間適用するなら75万6千円ほどになります。(多分、こちらは複利。5年で500万になるよう設計されているそうなので)

これら2つの制度は併用できないため、一部メディアからは青年積金を中途解約して跳躍口座に乗り換える(受付は今月15日から)動きがあるのではないか、な指摘が出ています。(省略しましたがソースのソウル経済も触れています)
けど、どうでしょう?19歳~34歳という年齢層を考えると5年拘束がネックに感じます。
この世代って、結婚や出産などで家族構成、ライフスタイル、家計支出の割合が一番変わりやすい世代ですよね。そこに「5年」というのは長すぎると思うのですが...。

しかし、既に同一ターゲットに対する似たような制度があって、まだそれが申し込み可能なのに、なんで次の制度を作っちゃうかなぁ?