高齢者の貧困とMZ世代の相対的貧困の話

今日は所得に関する記事を2本紹介します。
韓国の高齢者の貧困率OECD加盟国内で1位となったというものと、それとは真逆でMZ世代は親世代(60代以上)の半分の収入しかない「相対的貧困」だというものです。

 



SBS Bizの記事からです。

「68歳の月収わずか180万ウォン...韓国老人貧困OECD1位」


今月4日、韓国雇用情報院によりますとオ・テヒ韓国銀行課長とイ・ジャンヨン仁川大学助教授は前日開かれた「雇用パネル調査学術大会」で高齢者貧困率40.4%OECD加盟国の中で最も高いことが分かったと発表しました。

論文によると、老後の準備不足は高齢層の高い雇用率に繋がります。実際、韓国の65歳以上の雇用率は2021年基準で34.9%とやはりOECD1位です。食べていくために老いても働く人が多いという意味です。

(中略)

論文は「経済的安定を成し遂げた後、自発的により早い時期に引退し、より多くの余暇生活を送る主要先進国の高齢者とは異なり、韓国の高齢者は相当数が人生後半部の大部分を貧しい低賃金労働者として過ごしている」と診断しました。

調査の結果、昨年韓国の68歳労働者の月平均勤労所得は180万ウォンで、58歳(311万ウォン)より42%も少ないことが分かりました。

50歳の労働市場参加率と月平均勤労所得は各々97%、371万ウォンですが、以後引き続き下落し75歳は27%が働いており、彼らの月平均勤労所得は139万ウォンに止まったことが把握されました。

高齢勤労者たちは長い期間働いた主な職場・産業から抜け出せば初年度の月所得が20%以上下落し、2年後には約35%下落すると調査されました。

(後略)



SBS Biz「"68세 月 소득 고작 180만원…韓 노인빈곤 OECD 1위"(「68歳の月収わずか180万ウォン...韓国老人貧困OECD1位」)」より一部抜粋

180ウォンって約18万円です。基本給か手取りかは分かりません。が、58歳が311万ウォン(約31万円)となっているので、多分、所得税とか諸々引かれた後の手取りだと思われます(日本でもそのくらいになるので)。
第一印象として「日本なら(扶養家族なしなら)何とか生活していけそう」でした。貯金も年金も無しならキツイかもしれませんけれど。
コメントでも同じように思った人は多かったようで、「68歳で月180万なら金持ち(共感214 非共感1)」、「若い人も180万ウォンもらう...この国は何かひどく間違っている(共感41 非共感2)」、「ところで、68歳で月収180万ウォンが小さいお金ですか?私が最近の経済事情をあまりにも知らないのかな?(共感38 非共感0)」などがありました。


もう一本の記事は全く逆の視点の記事で、裕福な高齢者層と貧しい青年層になります。

 

 



中央日報の記事からです。

青年の月給280万ウォン、親の年金400万ウォン...「小遣いをもらわなければならない状況」


(前略)

所得増加率、60歳以上がMZの2倍↑

高齢層の所得が急激に増える間、青年層の所得増加率は鈍化した。家計動向調査は2019年の調査方式を変え、2019年以前と以後を同じ線で比較するのは難しい。そのため2019年と10年前の2009年を比べると、39歳以下世帯の月平均所得は第1四半期基準で25.7%(339万→426万ウォン)増えた。同期間、60歳以上の世帯主世帯の月平均所得は155万ウォンから240万ウォンへと54.8%増えた。同期間、40代世帯の月平均所得増加率は41%、50代は52%を記録した。

2019年以降は青年層の相対的所得増加率鈍化がさらに目立つ。2019年から4年間、39歳以下の月平均所得が15.1%増える間、60歳以上は32.5%、40代(19.6%)、50代(19.2%)などはさらに急増したためだ。所得増加傾向が鈍化し、MZ世代は高齢層より支出を増やすことができなかった。同期間、39歳以下と60歳以上の消費支出増加率はそれぞれ9.9%(18万ウォン)と22.6%(38万ウォン)を記録した。

(中略)

MZ世代を中心に「乞食部屋」が流行するのも青年層のこのような相対的貧困が原因だという解釈が出ている。カカオトークオープンチャットルームで乞食部屋を検索すれば、数百個の匿名団体チャットルームが出てくる。最大参加人数である1500人を全て満たしたチャットルームが複数あるほどだ。「20代乞食部屋」と名付けられたオープンチャットルームには1995年生まれ以降の出生者だけが入ることができる。1日、ある乞食部屋の会員が「ディフューザーを買った」と話すと「深刻な贅沢だ」、「払い戻しせよ」という文が相次いだ。

(後略)



中央日報「청년 월급 280만원, 부모 연금 400만원…"용돈 받아야 할 판"(青年の月給280万ウォン、親の年金400万ウォン...「小遣いをもらわなければならない状況」)」より一部抜粋

記事のタイトルになっているのは前半(省略)部分に登場したチョン某さん(30)の例です。
公務員だった父親と国民年金受給者の母親の年金は合わせて400ウォン、約40万円です。そして、本人の所得(公共機関勤務)は280万ウォン、約28万円です。いや、小遣い要らんやろ...と思うんですが。手取りが28万円あって足らないとか、通常の生活だと想像がつきませんね。(4万5千円の利子を払ったら「残るモノがない」そうです...)

それはともかく、この記事で妙だなと思うのは、所得増加で高齢者がMZ世代の「2倍」とか言っている点です。MZ世代の所得増加は87万ウォン(339万→426万ウォン)、高齢者世代は85万ウォン(155万→240万ウォン)です。可処分所得の増加額はほとんど変わりません。

高齢者の所得が増加したのは、ほぼ間違いなく政府による雇用造成政策のためです。ムン政権で始まりましたが、ユン政権も引き継いでいます。
今年の3月には60歳以上の就業者が54万4000人増との集計が出ています(同期間20代は8万9000人減、30代は2万4000人増)。
これはこれで高齢者の経済的自立のは役に立っていると言えなくもないので、悪いこととは一概に言えないんですけどね。