二次予選とはいえ、メディア無し・応援団無し・テレビ中継無しのサッカーの話

日本ではラグビー一色ですが、アジアでは他にも2022年のサッカーW杯カタール大会の2次予選兼、2023年AFCアジアカップ中国予選が行われています。

グループFの日本は、2戦目を終えて全勝で勝点6の首位です。本日、タジキスタンとの3戦目がAwayで行われます。
同じくグループHの韓国は2戦目を終えて全勝、勝点6の首位で、本日、北朝鮮と対戦します…Awayで。
これがちょっと奇妙な雰囲気での試合になりそうです。


会場は平壌にある金日成競技場です。
数日前から韓国メディアではチラホラ懸念を伝える記事が上がっていました。韓国サポーターが行けない、とかライブ中継ができない、とか…。

韓国側からは、仁川(金浦)ー平壌の直行便を結んで代表選手や応援団を送れるよう北朝鮮側に事前協議を申し入れていたようですが、開催5日前に迫っても応答が無かったようです。
仁川(金浦)ー平壌のルートであれば40分で行けますが、それが使えないとなると中国・北京経由で2日掛かるそうです。
航空券やビザの手配を考慮すると、これ以上は待てないということで10日の時点で13日にソウルを出発し、北京で一泊後、14日に平壌入りするという形になりました。
応援団及び海外メディアは競技場には入れず、ライブ中継も行われない見通しです。
つまり、会場は北朝鮮応援団一色、という…もう完全にAwayです。


10/18 追記

当日は観客ゼロによる試合だったようです。
結果は0 - 0のスコアレスドロー北朝鮮側のラフプレーがかなり目立った、という報道がありましたが、両陣営ともキーパーがイイ仕事しています。
大韓サッカー協会北朝鮮側が記録した試合映像のダイジェスト版を公開しています。(画質はお世辞にも良いとは言えません…)
白いユニフォームが韓国、赤いユニフォームが北朝鮮です。韓国の黄色のキャプテンマークを着けている選手がソン・フンミン選手です。

アジア二次予選 北朝鮮 v 韓国ダイジェスト(10月15日)



平昌オリンピックの際にはスポーツによる南北融和ムードを前面に押し出していたので、今回もそうするのかと思いきや北朝鮮側にそのつもりはないようです。
韓国との融和ムードは利益にならないと判断したのでしょうか?
BBCはこの試合を「世界で最も奇妙なサッカーダービー」と表現しています。

一部記事を引用します。

(前略)
両者が対決するのは珍しいことではないが、北朝鮮の首都の平壌でプレーすることはほとんど前例の無いことだ。実際、1990年に一度だけあった。
ライブ中継、南部からのファン、および外国のメディアは一切スタンドに居ない。
2018年にいくつか進展があったースポーツが部分的に氷を溶かしたー後、北と南の関係性は低くなっている。
(中略)
両国は表向きはまだ戦争状態だー朝鮮戦争は1953年に休戦して終わったが、平和条約は締結されていないー北朝鮮はスタジアムでの南の国歌や国旗を許可しなかった。
(中略)
試合は、ソウルと平壌の関係性が低いときに実施される。
北朝鮮は、韓国が米国との低レベルでの軍事演習を続けていることを快く思っておらず、この夏の初めにソウルとのすべての会談を拒否した。
北朝鮮は米国との非核化交渉が再び障害となったばかりであり、南との関係はそれと一緒に減退しやすい傾向にある。
(中略)
平壌のムードが予測できないことで悪名が高いため、火曜日のサッカーの試合が新たな外交への道を開くとは言い難い。
9月、北と南は2032年夏季オリンピックの共催を目指すことに同意した。
しかし、ワールドカップ予選に向けて、関係は非常に緊張したままだった。
南は、ファンを試合に送りたいと申し出ていたが拒否された。ソウルは試合の放送を企画することを申し出たが、申し出も断られた。
(後略)

BBC「North v South Korea: Welcome to the world's strangest football derby(北朝鮮 v 韓国:世界で最も奇妙なサッカーダービーにようこそ)より一部抜粋


ちなみに、試合後よく行われる選手たちのユニフォーム交換も禁止されたそうです。
これは韓国側の事情ですが、韓国代表のユニフォームが米国製であるため、経済制裁措置の対象になるからです。


融和ポーズの演出のみで実質的な部分が何も進んでいない、という現状が透けて見えます。