「天皇 vs 安倍」の構図に固執する韓国メディアの話

昨日の「即位正殿の儀」は自宅のTVで観ていましたが、平安絵巻さながらな装束が素晴らしかったです。
ついつい映画の小道具と比べてしまって、やっぱり本物は違うなぁ、と眼福でした。


「即位正殿の儀」には、即位したことを内外に宣言する、という意味合いがあり、海外のメディアでも様々報じられていますが、お隣の韓国さんでは、陛下のお言葉を斜め上の解釈されていて、びっくりします。


韓国では天皇 vs 安倍」という図式を大プッシュしています。
上皇陛下が天皇ご在位だった当時、生前退位の意向を示された際にも「憲法改正を阻止するため」という意味不明な論理を展開していました。
以前からなのか、その時からなのか、とにかく韓国メディアは天皇を「反・安倍」の急先鋒であるかのように報じます。


陛下のお言葉全文

さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。

ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。

上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。

国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

2019年10月22日 「即位礼正殿の儀」にて。


お言葉全文はNHKが動画と共に公開しています。


韓国メディアの斜め上の解釈

見たのは聯合ニュースとソウル経済くらいですが、他も似たような内容の報道だと思います。

思わず吹いたのはソウル経済の小見出し 「安倍の夢牽制した天皇憲法に従ってくださいよ』」 です。

※韓国メディアは「天皇」を「일완(イルワン;日王)」と報じますが、便宜上すべて「天皇」と訳します。ですが、韓国メディアでは基本的に「日王」という存在しない呼称(あるいは呼び捨て)を用いています。


「世界平和」を強調した徳仁..「右傾化日本」の変化の転換点になるか


徳仁天皇が22日、自身の即位を全世界に知らせる演説は2分に過ぎなかった。しかし、世界の平和と憲法尊守を強調したこの短い演説は、日本を戦争可能な国に変貌させるために憲法改正を推進する安倍晋三首相と対照を示すのに十分だった。 日本国民に響きを与えた徳仁天皇の即位宣言が日本社会と政界の変化の転換点になるか注目される。
(中略)
特に「世界平和」という表現は、徳仁天皇が新たに言及したものであり、注目される。
(中略)
今回の即位宣言で徳仁天皇は戦争と軍隊保有を禁止した憲法9条の改正を通じて、日本を「普通の国家化」しようとする安倍首相と対立したメッセージを出したと解釈される。

ソウル経済「"세계 평화" 강조한 나루히토..'우경화 일본' 변화 전환점 될까(「世界平和」を強調した徳仁..「右傾化日本」の変化の転換点になるか)より一部抜粋


憲法尊守について

陛下のお言葉の中で憲法に触れている箇所は二箇所です。
日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承」憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴として」 というところです。


素直に考えましょう。


まず皇位継承権について、日本国憲法は第一章第二条で「皇室典範の規定ところにより、これを継承する」としていますので、前者は明らかにこれを指したものです。

後者の「憲法にのっとり」は「日本国及び日本国民統合の象徴」に掛かっていますので、これも日本国憲法の定める第一章第一条の「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」を指しています。


世界平和について

天皇の最も重要な務めは「世界平和を祈ること」です。
神道の最高位の神官として、これは何百年も前から脈々と続けられてきたことです。
今更どうこう言うのは、韓国メディアの無知ぶり近視眼的物の見方を晒しているに過ぎません。


お言葉の中で憲法9条には触れていません。
陛下が「憲法9条を変えるな」というメッセージを発信した、とするなら、それは「天皇が政治的な発言をした」と言っているのと同義です。
天皇憲法により「政治的発言を行えない」存在です。憲法尊守の精神どこいった?な矛盾を起こします。


そもそも言っていませんしね。言ってもいないことを「言った」と言い張るのは、妄想です。
前提となっている「天皇 vs 安倍」の構図を満たすストーリーを描こうとするから、こんな斜め上の解釈をしなくてはいけなくなるのです。
妙なこじつけ解釈をせずに、他国メディアのように「即位礼正殿の儀」が行われた事実だけを報じれば良いものを…。


韓国にとって天皇は「ウリ」?

「ウリ(우리)」とは、韓国語で「私たち」を表す表現ですが、とてもよく使われます。
日本語だと「日本の産業」や「日本政府」という表現の方がしっくりくるところですが、韓国語ではすべて「ウリ」を使います。直訳すると「私たちの産業」「私たちの政府」となります。

ニュアンスとして「うちの」に近いものがあります。自分の子供のことを「うちの子」と言ったりするあの「うちの」です。
所属や所有といったニュアンスが多分に含まれます。そこから「우리(ウリ;うちら=味方)」と「남(ナム;よそもの=敵)」を分ける線引きの概念に結びつきます。
所属が異なる者同士は利害が衝突することが多いので、すなわち「敵」と見なすのです。


韓国さんが天皇陛下固執する理由の一つとして、今上天皇桓武天皇の流れであることが関係しています。
桓武天皇の生母・高野新笠(たかののにいがさ)百済武寧王(ムリョンワン)を遠祖とする、とされているからです。

百済新羅に滅ぼされており、現在の韓国とは連続性がありません。
 そもそも百済人が現在の朝鮮民族と同一民族であったかも不明です。遺骨を元に復元された百済人の顔があるのですが、典型的なアルタイ北方系の顔なのです。
 朝鮮民族は長らく北方系と思われていましたが、東南アジアから北東へ移動した南方系、という見方が有力になっています。ウラジオストクの近くにある「悪魔の門(Devil's Gate)」で発見された7700年前の人骨をゲノム解析した結果、3〜4万年前にその地に定着した南方系の人たちで、現代の韓国人と非常によく似た遺伝的特徴を持っていることが分かったからです。


ところで、武寧王高野新笠の間にはおよそ200年の開きがあります。(生年不明のため、没年基準)
今の基準では1世代30年と考えるのが一般的ですが、武寧王は41歳で亡くなったと記録されていますので、1世代20年で計算すると10世代、今の基準で計算しても6〜7世代の開きがあります。
これで高野新笠を「百済人」とするのには無理がありませんか?

現イギリス王室のウィリアム王子にはインド人由来のDNAが0.5%程度(推定値)入っている、と言われています。
お母様のダイアナ妃の4世代前の祖母にインド人女性がいたためです。
これを理由に「ウィリアム王子はインド人だ」という人が果たしているでしょうか?(そもそもそんなことに意味があるでしょうか?)


韓国さんの血の繋がり(血縁)への異常なまでの拘りの強さを感じます。

そんな韓国さんが、安倍さん*1や麻生さん*2が皇族と縁のある家系だと知ったらどう思うのかがとても気になります。
更に言うと、両者とも長州藩薩摩藩の末裔にあたります。維新側、尊王攘夷派の人間です。

個々人の思想や価値観を安易に所属集団に帰依する形で拡大解釈することは避けるべきだとは思いますが、自己のアイデンティティ確立の際に、少なからず影響を受けているものではないでしょうか。


*1:殆ど無関係だけど、麻生さんを通すと繋がる。

*2:実妹が、大正天皇の孫(昭和天皇の弟)の三笠宮崇仁親王の奥様の信子妃。
家系図を辿ると、安倍さんとも縁戚関係になる。麻生さんの母方の叔母と、安倍さんの母方の祖父(岸信介)の従兄弟が婚姻関係。