アフリカ現生人類にもネアンデルタール人の痕跡が見つかった話

アフリカの現生人類にもネアンデルタール人由来のDNAが見つかった、という研究論文が発表されました。
これにより、全ての地域の現生人類にネアンデルタール人由来のDNAが受け継がれていることになります。


現生人類の直接の祖先であるとされるのがクロマニヨン人です。
それ以前のネアンデルタール人は、クロマニヨン人に取って代わられる形で完全に絶滅した、というのが長い間の通説でした。

それ以前には、クロマニヨン人コーカソイド(白人種)の直接の祖先、とされていました。
これはクロマニヨン人の骨が欧州で発見された事が大きいのですが、発見されたのが19世紀後半ということもあり、研究の過程で優生学的な視点が多分に入っていたのかもしれませんね。


それが覆されたのは、2010年に発表された研究結果で、4万年前の人の骨を解析した所、ネアンデルタール人由来の遺伝子が含まれるということが分かったからです。
その後の研究で、欧州、アジア、米大陸の現生人類の遺伝子の約2%がネアンデルタール人の遺伝子を受け継いだものであるということが明らかになりました。
更に、東アジア人には白人より痕跡が20%近く多い、とされていました。比率には諸説あるみたいですが根拠は分かりません。

いずれにせよ、これによりアフリカから移動した現生人類が、ネアンデルタール人との「混血」を行っていたことが示されました。


この時点で、アフリカ人についてはネアンデルタール人の痕跡が見つかっていなかったため、クロマニヨン人の純粋な子孫はアフリカ人のみ、とされていましたが、それが覆されそうです。
プリンストン大学の研究者たちが新たにアフリカの現生人類もネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいると結論を出しました。(ソース

更に、大陸間でネアンデルタール人の痕跡にばらつきがあるとする従来の推計も間違いであり、現生人類に見られるネアンデルタール人の痕跡は「驚くほど似通っている」そうです。


もちろん、生存している全人類のDNAを全数調査することは不可能なため、計算手法による結論です。

ですが地球上の全地域の全現生人類がほぼ等しくネアンデルタール人のDNAを受け継いでいる、ということは人類の「アフリカ起源説」に疑問を呈することになるかもしれません。
今の所、クロマニヨン人ネアンデルタール人と混血を行ったとされているのは欧州です。
ということは、欧州で混血した一部がアフリカにUターンしたということになります。

ここで、現生人類が全てネアンデルタール人と混血したクロマニヨン人の子孫なのはなぜか?という疑問が出てきます。
なぜ、混血をしなかったクロマニヨン人が残っていないのか?
発祥の地と混血の地が遠く離れているのに、発祥の地に居た人たちが混血に淘汰されてしまったのはなぜか?という疑問です。