北朝鮮によるGPへの銃撃の話

北朝鮮側から南側の非武装地帯の監視所に対して銃撃が行われました。
南側はマニュアル通りに威嚇射撃で応戦し、それ以上の衝突は起きていません。南側の人的被害、物的被害はなく、監視所の壁に4発の銃痕が確認されたのみです。

北朝鮮側には公式に状況の説明を求める要求を送っているそうですが、今の所ダンマリだそうで、銃撃の意図について様々な憶測が出ています。
合同参謀本部は早々に「意図的なものではなく偶発的な事故」という見方を示しているのですけれど、何らかの意図を見出したいと思うのが人間です。


一つの解釈として、中央日報の「米国へのメッセージ」という見方を示している記事を紹介します。

それともう一つ、解釈ではありませんが、朝鮮日報が意図的とか偶発的事故とか「そういう問題じゃない」と言っている記事を出しています。こちらは「軍が北朝鮮を擁護している」ように見えることへの批判記事です。


中央日報の記事からです。

我々のGPに射撃して沈黙する北...「トランプ向け挑発信号弾」


3日、北韓軍が非武装地帯(DMZ)で監視警戒所(GP)に銃撃を加えると、韓国軍は対応射撃により対抗した。(中略)

この日の合同参謀本部によると、午前7時41分頃、江原道鉄原郡中部戦線のGPで複数の射撃音が聞こえた。確認の結果、GPの外壁に北韓軍の銃弾4発が命中した。これに対して韓国軍は対応射撃を2回した後、「停戦協定に違反した」とする内容の警告放送を流した。

(中略)

軍当局は、午前9時35分頃、南北将官級会談韓国側主席代表の名義で対北電通文を送り、この日の状況について説明を公式に要求した。しかし、3日午後現在、北韓は答えを返していない。先の警告放送に対する北韓の立場表明もなかった。

群島局は「銃撃意図について分析中」との言葉を控えながらも北韓軍の偶発的射撃に重きをおいている雰囲気だ。
(中略)
しかし、北韓が過去にDMZで誤って起こった誤射事故について直ちに認めた事例があるだけに、この日の北韓の無返答は意図的挑発という解釈がある。

パク・ウォンゴン韓東大国際地域学科教授は「北韓は新型コロナウィルス感染症(コロナ19)で経済的困難に陥っているため『瀬戸際戦術』で正面突破しようとする可能性がある」とし「この日の射撃は、米国とドナルド・トランプ大統領に戦略的挑発をかけるという『信号弾』と見ることもできる」と述べた。

匿名を求めた予備役将軍は「北韓は今年の雙十節(北韓労働党創建記念日である10月10日)前に、米国の対北韓制裁を解いて経済を引き上げるという目標を立て、これに合わせて戦略的挑発計画を立てていた」とし「コロナ19のためにスケジュールが後ろに遅れてひっくり返した、計画を破棄したわけではない」と分析した。

(後略)

中央日報「우리 GP에 총쏘고 침묵하는 北···"트럼프 향한 도발 신호탄"(我々のGPに射撃して沈黙する北...「トランプ向け挑発信号弾」)より一部抜粋


朝鮮日報の記事からです。

GPに弾痕4つ鮮明なのに…軍「霧が濃く故意ではないだろう」


(前略)

軍はこの日、大きく4つの理由を挙げ、北韓軍の挑発に意図性が少ないとしている。軍関係者は「当時、視界が1km程度でかなり良くなかった、霧が濃く立ち込めていた」とし「また通常、状況発生当時の時間帯が北側の勤務交代後の火器点検が行われたとき」とした。軍はGP銃撃状況の前・後に北韓地域の農民たちが何の反応もなしに農業活動をし、北韓軍の特異動向がなかったとした。また、今回の銃撃を受けた味方GPが北韓軍GPより地形的に有利であるため、北韓が挑発を敢行する理由が少ないと見た。

軍はこの日のブリーフィングで、北韓の挑発当時の状況を客観的に説明するより、北韓の意図的挑発の可能性が少ない理由を説明することに重点をおいた。このため、軍の内外では「北韓が明らかにしてもいない意図性を韓国軍が先に出て積極的に代弁する必要があるのか」という話が出た。

(後略)

朝鮮日報「GP에 총알자국 4개 선명한데…軍 "안개 짙어 고의는 아닐것"(GPに弾痕4つ鮮明なのに…軍「霧が濃く故意ではないだろう」)より一部抜粋


意図的が偶発か、で言うなら、今回の件は偶発の可能性が高いと私は思います。物理的な直接攻撃による挑発、という高リスクを取るほど追い詰められているようには感じられないためです。


韓国軍の当局者としては、国民の不安を解消したいと思ったがために懇切丁寧に説明したのでしょうけれど、北朝鮮が何も言っていないのに一から十まで全部、相手の当時の状況まで慮って説明してやる義理はないわけです。

北の思惑がどうあれ、韓国軍としては「偶発的事故」と捉えていること、引き続き警戒を続けていること、北には公式に説明を求めていること…これらを伝えるだけでよかったと思うんですよね。