韓中外相会談の発表資料、韓国「対北、中国の建設的対応を要請」、中国「安保憂慮を重視し、適切に処理するよう努力する認識をした」...互いに記載なしの話

昨日行われた韓中外相会談終了後、それぞれの外交部が発表した報道資料の内容が、やはりというか何と言うか、相当違っていたようです。
韓国側は、中国が言及した「安保上の憂慮事項(サード)」には一切触れず、対北抑止への積極的な役割を担うことを要求したことを発表、逆に中国側は北朝鮮関連には触れずに両国が互いに安保憂慮を重視し、適切に処理するよう努めることを発表しました。

 



聯合ニュースの記事からです。

北韓の挑発阻止を強調した韓、サード牽制 の中..北核実験時、本格的な試験台


9日、中国の青島で開かれた韓中外相会談では韓半島とその周辺安保と関連する両国の強調点が分かれた。
韓国は北の核問題と関して中国の建設的な役割に焦点を当てた反面、中国はサード(THAAD・高高度ミサイル防衛システム)に対する中国の安保憂慮の尊重と適切な処理を強調した。

まず韓国外交部の発表によるとパク・ジン長官は韓半島問題と関連し、北韓が挑発の代わりに対話と外交の道を選択するよう中国側が建設的役割を果たすことを要請した。
また、パク長官は北韓が挑発を強行する場合、国連をはじめ国際社会が団結して断固とした対応を取るべきだと強調したと外交部は伝えた。

最近、準備動向が把握された通り北韓が7回目の核実験に乗り出す場合、国連安全保障理事会安保理常任理事国である中国が北韓への追加制裁などに同意しなければならないというメッセージと解釈される。

一方、中国外交部はサード議論の内容を紹介した資料で「(両長官が)互いに安保憂慮を重視し、適切に処理するよう努力し、両国関係に影響を与える障害にならないようにしなければならないという認識をした」と伝えた。
中国の立場で「安保憂慮重視」とは、駐韓米軍が運用するサードのレーダーが中国の戦略的動向を探知できるという中国の問題提起を尊重しろ、という意味と解釈される。
「適切な処理」はいわゆるサードの「3不(サード追加せず、米国ミサイル防衛・韓米日軍事同盟不参加)-1限(配備されたサードの運用制限)」を要求したものと解釈される。

興味深い点は、中国側の会談結果資料に北韓の核関連の内容が全く登場しない点と、韓国側の会談結果発表に中国が「安保憂慮重視」「適切な処理」などを取り上げた事実が紹介されなかった点だ。それだけ双方に敏感な事案だという傍証と解釈された。

(中略)

パク長官は北韓核問題と関連した中国の建設的役割と追加挑発時の断固たる対応を強調したが、中国が考える同問題の解決策は米国の譲歩に焦点が当たっており、韓国が考える解決策と乖離があるというのが観測筋の大方の見方だ。

また、中国のサード関連要求事項は韓国の安保主権と関連したものであり、韓米同盟レベルの毛案であるためユン・ソンニョル政府の立場では受け入れ難い。

北韓とサード関連の葛藤要素はいつでも両国関係を揺るがす爆発力があるということがあるということがここ数年の間に立証された経緯がある。北韓が追加の核実験を断行する場合、葛藤要素が再び水面上に上がる可能性があると専門家たちは見ている。

(中略)

また中国が北韓の追加核実験に対しても安保理常任理事国として制裁強化に拒否権を行使する場合、韓国内の反中感情はさらに悪化する可能性がある。
逆説的にも韓国と中国のいずれも北韓の追加核実験を阻止する非羽陽があるという点で利害が合致するという分析も出ている。

韓国は言うまでもなく、韓米日安保協力とサード正常化、または追加配置論に力を入れる北韓の核実験に対して、中国も止めなければならない戦略上の理由があるということだ。
中国は習近平国家主席の3連任が決まる秋の第20回党大会を控え、北韓の核実験によって韓半島と北東アジア情勢が揺れる状況を見たくないという観測も存在する。
結局、北韓の核実験局面で韓中が建設的に協力できるかどうかはユン・ソンニョル政権任期中の韓中関係に重大な試験台となるものと予想される。



聯合ニュース「北 도발저지 강조 韓, 사드 견제 中..북핵실험시 본격 시험대(北韓の挑発阻止を強調した韓、サード牽制 の中..北核実験時、本格的な試験台)」より一部抜粋

「互いが重点を置いている部分が異なる」としつつ、韓国が中国へ要求する「対北抑止への積極対応」には中国のメリットもある、と。
なぜなら、中国の懸案であるサードは米韓が北朝鮮警戒のために設置したものであるので、北が挑発を停止すれば無用になるから、ということですね。

一応、主張の筋は通っていますが中国には通用しないでしょうね、すでに「3不」がありますから。「約束を果たすのに見返りを求めるとは何事か。まずは約束を履行せよ」と言われて終わりです。



対中国に限らず、対日本にしても韓国は政府が交渉カードを持っていないことが多いように思います。
日本相手だと、今なら徴用工が一番アツい事案ですが、(自称)被害者団体と政府が分裂しているので韓国政府が勝手に日本政府と協議出来るような状態ではなく、日本側からの要求を受諾することも出来ない...交渉窓口として機能していません。もちろん、問題解決能力もありません。

対中交渉も同様、中国側が議題に出してきたのは事前の予想通り「サード」関連です。米韓同盟の管轄ですから、やはり韓国政府が勝手にどうこう出来ません。

「バランス外交」と言いつつ米中間で「積極的不選択」を貫いた結果だろうと思います。ポーカーでフォールド(=ゲームを降りる)し続けていたらチップは減る一方なのと一緒です。