コロナ重症患者にステロイド薬が効果的かもしれない話

まだまだ検証が必要なようですが、英国で行われている治験により、ステロイド薬の一種であるデキサメタゾンが、コロナ重症患者への治療に大きな効果を上げている、との発表が研究チームより出されました。(ソース

興味深いことに、この薬が効いたのは酸素吸入治療や人工呼吸器が必要なほど重症化した患者だけというところです。どちらも必要としない患者では効果が確認できなかったとのことです。
実際の臨床試験では人工呼吸器の患者の死亡リスクは3分の1、酸素吸入の患者の死亡リスクは5分の1にまで低下したそうです。


これは恐らく、ステロイドによりサイトカインストーム*1が抑制されたことを意味するのだと思われます。

発症してから亡くなるまでの期間が短い、ということは割と早い段階から指摘されていました。持病のある方以外で亡くなる人の大半はコレ(サイトカインストーム)である可能性は十分高いと言えそうです。そこを如何に低く抑えるかが死亡リスクを下げる鍵になってくるわけですね。


ただ、サイトカインストームを抑えると言っても、免疫細胞を完全に抑制してしまうと、そもそもの病気と戦うことが出来なくなってしまうので、それはそれで危険です。さじ加減がとても難しいようです。

今回、英国で行われた臨床試験では、ランダムで抽出された約2100人の患者に対してデキサメタゾンを1日6mg、最大10日間、注射または経口で投与した、とされています。これが一種のガイドラインになるかもしれません。


もちろん、これはまだ治療法の可能性の一つとしての研究であって、確立された治療法ではありませんけれども、致死率を下げるという意味では大きな(有望な)可能性のように思えます。

デキサメタゾンは広く流通している薬ですが、コロナ治療を目的とした服用を自己判断で行うことは絶対にしないでください。徒な免疫抑制は非常に危険です。


*1:T細胞やマクロファージなどの免疫細胞はサイトカインという物質を放出することで、他の免疫細胞を炎症部位に誘導、活性化する。活性化した免疫細胞は更にサイトカインを放出する。
通常、ヒトの身体はこれらの状態を監視・制御できているが、何らかの原因(よく分かっていない...ヘルパーT司令がティータイム中なのかも?)によって、この制御が乱れると免疫細胞が一箇所に集中し、過剰に活性化することがある。時に致死的な免疫系の暴走。