米教授「慰安婦、日本軍の性奴隷ではなかった」論文を発表した話

ハーバード大学の教授で知日派とされるJ・マーク・ラムザイヤー教授が「慰安婦は日本軍性奴隷ではなかった」とする学術論文を発表しました。
2〜3日前に産経さんが報じた記事を引用する形で韓国メディアが報じています。

該当記事に付いているコメントは「お金をもらって虚偽論文を発表した」とか「なぜ関係ないアメリカ人が慰安婦猛言を言うのか」のような内容が主です。いつものように「記事の内容そのもの」に対する反論はありません。


韓国経済の記事からです。

ハーバード大学教授「慰安婦、日本軍の性奴隷ではなかった」論文発表[チョン・ヨンヒョのインサイド・ジャパン]



ハーバード大学のジョン・マーク・ラムザイヤー教授は3月に刊行される予定の第65巻「インターナショナルレビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス(International Review of Law and Economics)」に「太平洋戦争当時の性契約(Contracting for sex in the Pacific War)」と題する論文を掲載した。

従軍慰安婦は当時の日本政府の許可制で運営されていた売春業の延長線上であり、売春業者と売春婦は各自与えられた条件で自己の利益を追求するゲーム理論に忠実に行ったというのが論文の核心だ。

(中略)

産経新聞ラムザイヤー教授の同意を得て論文の要約を紹介した。
日本が第二次世界大戦中、戦場近くに慰安所を設置したのは東アジアを侵略した日本軍の間で現地の性病が蔓延したためだ。日本軍は定期的に検診を受ける売春婦で構成した半公式売春所を設置する代わりに、兵士が別の売春所を利用することを禁じた。慰安婦は日本と朝鮮で募集された。

ラムザイヤー教授は「慰安所は当時、日本と朝鮮にあった公認売春業者の海外軍隊バージョン」と診断した。
当時、日本で売春業は合法だった。1924年、5万1000人の公認娼婦が1万1500の公認娼館で働いた。

(中略)

売春所と公認売春婦は契約関係にあった。巨額の前借金を本人や両親に支払う代わりに全額返済、または契約期間まで働かなければならなかった。1920年代半ば、前借金は1000円~1200円で無利子だった。契約期間は一般的に6年だったが、約3年で前借金を全額返済するケースが一般的だった。寝食は売春業者が無償で提供した。
花代の3分の2から4分の3は売春業者が取り、残りを売春婦が受け取った。売春婦の取り分の60%は前借金の返済で控除され、残りの40%は本人に渡された。

1925年の東京売春婦の年間平均給与は前借金返済額393円、本人受取額262円の合わせて655円だった。1926年の女性工員の年間平均賃金(312円)の2倍を上回る。

ラムザイヤー教授は当時の日本の売春契約も同様にゲーム理論の例外ではないと見ていた。女性には危険で過酷な仕事であるうえ、働いても評判を損ねることに対する補償が与えられた。売春業者は巨額の前借金や契約期間設定など、売春婦に動機を与える契約を結ぶなど、両者の利害関係が一致したというのがこの教授の主張だ。

(中略)

日帝強占期の挑戦でも日本と同じシステムが導入された。朝鮮では相対的に非公式娼婦が多く、慰安所ができる前から朝鮮人女性が海外で売春婦として働いていたとラムザイヤー教授は説明した。

海外の戦場に慰安所を設置する際、日本政府も政治的リスクを認識した。日本国内では数十年の間、売春禁止を主張する声が高まっており、純朴な若い女性が悪徳業者に騙されて売春を強制されるのを避けようとした、とこの教授は分析した。
このため内務省慰安婦を募集する際に、すでに売春婦として働いていた女性だけを雇用するようにした。所管の警察署には女性が自らの意思で応募したかどうかを本人に直接確認し、契約が終われば直ちに帰国するよう伝えるよう指示した。

ただ、朝鮮には日本とは別の問題があった。専門の労働者募集業者が乱立し、詐欺行為を働いたのだ。慰安婦被害者だけでなく、徴用工被害者も労働者募集業者から被害を被ったとラムザイヤー教授は説明した。当時、新聞にも女性をだまして海外の売春所に送る性産業に関する問題が報道された。

このような事実を土台にこの教授は日本政府と朝鮮総督府が女性に売春を強制したのでも、日本軍が不正な募集業者に協力したのも事実ではないと主張した。数十年間、女性をだまして売春所で働かせた朝鮮内の募集者が問題だというのが彼の見方だ。

(中略)

朝鮮の募集業者らが問題だ、というラムザイヤー教授の主張は、韓国慰安婦被害者が工場で働かせてくれるという言葉に騙されたという証言と一致する。ただ、募集業者に責任を転嫁した彼の主張は「日本政府と日本軍は慰安婦問題の責任がない」という風に悪用される恐れがあるように見える。


(後略)

韓国経済「하버드대 교수 "위안부, 일본군 성노예 아니었다" 논문 발표 [정영효의 인사이드 재팬](ハーバード大学教授「慰安婦、日本軍の性奴隷ではなかった」論文発表[チョン・ヨンヒョのインサイド・ジャパン])より一部抜粋


前借金とか契約期間とか、遊郭制度を彷彿とさせます。ですから日本人には、遊郭に詳しくなくても分かりやすい(しっくりくる)制度なんですけど、海外の人にはピンと来にくい、そこが落とし穴なのかもしれません。



よくまとまっている記事だと思います。けれど、最後だけ不思議です。

「日本政府と日本軍は慰安婦問題の責任がないという風に悪用される恐れがある」...悪用?いや、普通にこの流れでいくと韓国が言うような責任を問うことは無茶では?と思うんですけど。

ここの発想の背景には、度々指摘しています通り「帝国の慰安婦」の著者である「パク・ユハ教授の理屈」があるのだろうと思います。彼女は日本軍の強制連行への関与は否定しましたが、強制連行そのものは否定していません。

「当時の時代的状況への構造的暴力の問題に注目すべき」とし、就職詐欺や人身売買を広義の意味での「強制連行」とすり替える理屈です。

つまりそうした時代背景、社会情勢は日本のせいであり「日本には戦争責任以前に、植民地支配責任として問われるべきである」とするものです。

「植民地支配を違法とする」という目標に繋がります。そのため、私は彼女の意見には賛同しかねます。