日韓関係の問題の根源は「日本の歴史的加害である」という話

ムンさんの対日外交の一貫性の無さについて批判(?)している記事がありました。
ただ、やっぱりちょっと本質的な部分がズレている気がするんですよね。

後半はざっくり削っています。
軽く紹介しておくと後半は日韓関係の今後について「現状維持」派と「改善推進」派のそれぞれの意見について触れています。
「現状維持」派は、今年はおそらく日本で解散総選挙が行われるだろうが、コロナと経済が最大の関心事になるため日韓関係がイシューになることは難しい、という見方です。(現実的)
「改善推進」派は、進歩政権であるムン・ジェイン政権で大幅に改善できる、理由はムン・ジェイン政権の支持層には歴史問題を重視する人が多いから、としています。(ちょっと何言ってるか分からない)

私がこの記事で一番気になったのは冒頭、問題の根源を「日本の歴史的加害」としていることです。


京郷新聞の記事からです。

「尊重」から「困惑」に..ムン・ジェイン政府「対日強硬策」転換する?


葛藤の先が見えない。韓日関係は相互報復が行き交い国交正常化以降、最悪の状態だ。問題の根源は日本の歴史的加害である。韓国政府は歴史と経済、安保などを分離するツートラック対応戦略を立てた。しかし歴史問題を扱った司法部の「判決」とともに戦略が消えた。

(中略)

日本に強硬だったムン・ジェイン大統領の態度が微妙に変わった。発端は1月8日、日本軍「慰安婦」被害者12名が日本を相手に起こした損害賠償請求訴訟で勝利したのだ。ソウル中央地裁民事34部(裁判長キム・ジョンゴン)は「被告日本国は原告に対し、それぞれ1億ウォンの賠償を命じる」と言い渡した。これに加藤勝信官房長官は直ちに「判決を受け入れられない」と対立した。この状況を受け、ムン大統領は1月18日「正直、少し困惑しているのが事実」と述べた。歴史問題をめぐる訴訟でのムン大統領の従来の立場は「司法部の判決を尊重する」というものだった。

同日、もう一つの発言からも変化が感じ取られた。ムン大統領は「(日本資産が)強制執行方式により現金化される判決が実現されるのは両国関係に望ましくない」と述べた。

(中略)

大統領の発言の変化は司法部「判決」の裏に隠された「対日外交」の現実を見せてくれる。ソン・ヨル東アジア研究院院長は「法的解決は外交努力をすべてした後、最後の手段として選択されなければならない」、「政府は強制動員や慰安婦の裁判が進められているのを見ていただけで遅れて韓日関係が重要だ、という認識をしたようだ」と話した。パク・ジョンジン日本津田塾大教授は「三権分立も重要だが、日本政府に向かってこの原則だけを言うのは行政府レベルですべき外交的努力をしなかったということ」と述べた。

このような変化は従来の立場とも矛盾を生む。ムン大統領は2015年に締結された「韓日、日本軍慰安婦合意」について「韓国政府はその合意が両国政府間の公式合意だったという事実を『認定』する」と話した。慰安婦の合意は「最終的かつ不可逆的な解決」を原則に成り立っている。これは慰安婦の合意が「手続き的にも内容的にも重大な欠陥が確認された」とし、被害者の立場で問題を解決しなければならないというムン大統領の言葉とは相反する。

これまで政府は「慰安婦合意に問題があるということが合意を破棄するという意味ではない」と曖昧な立場を取ってきた。ムン大統領はこれを「認める」と明らかにした。日本は国際法違反という理由で慰安婦訴訟判決に控訴しなかった。代わりに去る1月23日、茂木敏充日本外務大臣慰安婦の合意の遵守を要求する談話を出した。

(後略)

京郷新聞「'존중'에서 '곤혹'으로..문재인 정부 '대일 강경책' 선회하나?(「尊重」から「困惑」に..ムン・ジェイン政府「対日強硬策」転換する?)より一部抜粋


「韓国政府は司法手続きが進むのを見ていただけ」というのはその通りだと思います。
ただし、遅れて日韓関係の重要性を認識したのではなく、思い描いていた流れが逆だったのだろうと思います。司法によって「法的に日本の罪を認定」→「優位な状態で外交を行う」、こうした流れを夢想していたのでしょう。

また、「ツートラック戦略」などというものについても、歴史問題と経済・安保を分けるものではなく、歴史問題を盾に経済・安保における日本との交渉でこれまた優位に立ち、妥協を引き出すための戦略に過ぎません。


ところで、記事の冒頭では問題の根源を「日本の歴史的加害」としていますが、私の考えではそこではありません。

私はこの問題の根源は大きく三つあると思っています。

まず一つは、多くの日本人が憤りを感じているであろう 「強制連行の嘘」 です。
慰安婦にしろ徴用工にしろ韓国が、日本の歴史的加害だ、戦争犯罪だ、など喧伝する大前提にあるこの「強制連行」が行われた事実は確認されていません。

ニつ目は 「韓国政府の無責任」 です。
仮に百歩...いや千歩...まだまだ、一万歩譲って、一つ目の「嘘」に目を瞑ったとします。それでも1965年の日韓基本条約の請求権協定と2015年の慰安婦合意、この二つの国家間合意によって韓国政府は問題を「最終的かつ不可逆的に解決」することに同意しています。
よって、以降は全て韓国の国内問題として韓国政府が全責任を負うべき問題です。
軍事政権であろうが、後に弾劾された大統領であろうが、日本政府は韓国政府との間に正式な合意を行ったのですから、以降この問題を蒸し返される謂れはありません。

最後に三つ目、これが日本と韓国で認識がズレる最大の原因かもしれません。
記事でも言及している 「日本の歴史的加害」 これ自体のズレです。
日本は「慰安婦」と「徴用工」で考えますが、韓国からするとこの二つはあくまで「象徴」であって、本質的には日本による「半島統治」そのものを「日本の歴史的加害」行為と認識している、ということです。
最終的な目標は飽くまで日本による統治(あちらで言う植民地支配)を「違法」として断罪することです。

ですから日本による統治の結果(とされる)「慰安婦」や「徴用工」については、半島統治が違法となるまで恐らく解決したとは見なされないでしょう。