徴用訴訟却下は「国民の法感情に背く」という話

徴用訴訟が却下された件の是非はまだしばらく続きそうです。
一部では国際法的に正しい、という声があがっている事もちゃんと報道されています。こちらの意見については今更お知らせすることもないと思います。

逆の意見、上級審(高裁や最高裁)で判決が正されるべきだ、とする側からは「国民の法感情に背く」、「控訴により社会的共感を得なければならない」といった声が挙げられているようです。
法感情はあるメディアが「善悪の判断と法について持つ情緒」と定義していました。ざっくり言うと「自分たちが気に食わない犯罪者は厳罰になるべきだ」です。国民の好悪が量刑の基準になるという俗に言う「国民情緒法」のことです。


国民日報の記事からです。

「国民法感情に背く」 ー 「勇気ある判決」強制徴用判決の波紋


(前略)

「植民支配と徴用の不法性は残念ながら、いずれも国内法的な解釈だ」という判決を巡り、民法感情とかけ離れているという評価も相次いだ。さらに民主党は「裁判部の判決は依然として精算されていない親日思考の残滓」という論評を出した。大統領府の国民請願掲示板には「反国家的行為だ」としてキム部長判事に対する弾劾措置を求める書き込みが掲載された。

しかし強制徴用の不法性と被害が深刻であるほど国内の見方を優先するより国際社会の現実を冷静に考えるべきだという意見も少なくない。ある部長判事は「民族情緒など合理性が麻痺する領域を判断するときほど司法部は注意すべきだ」と述べた。日帝の蛮行にも関わらず強制徴用問題が実際の国際司法裁判所(ICJ)で明らかにするなら韓国の考え通りの結論が提示されるかどうかは不明だと考える人も多い。匿名を要求したある国際法学会の関係者は「人道に対する不法行為と植民支配に伴う個人の損害賠償請求権問題を正面から扱ったICJの判例自体がない」と説明した。

(中略)

裁判官らは結局、控訴と上告を繰り返し、社会的共感を得なければならない事案と見ている。チョン・デヨプ大法院は4月の人事聴聞会で「国際法を含め、様々な法的争点があるため大法院で力を入れて結論を下すべきだ」と答えた。ハン部長判事は「国際社会の中でも適用される問題の判断が『K判決式』なら困る」とし「確実な論理で確かな共感が形成されなければならない」と述べた。

国民日報「“국민 법 감정 외면”-“용기 있는 판결” 강제징용 판결 파장(「国民法感情に背く」 ー 「勇気ある判決」強制徴用判決の波紋)」より


う〜ん...国際条約の法的判断を「共感」が得られれば無視しても良いと言いたいのでしょうか?
控訴を繰り返して「社会的共感を形成する」とか、いかにも国民情緒が法の上位概念である、という意識から出てきた言葉のように思えます。