電気料金政策で韓国を真似したら失敗したという話

電力会社の赤字垂れ流しの件については、韓国の事例を度々取り上げていますが、実は台湾も負けていません。
1995年の電力自由化以降、台湾の民間発電所が生産する電力は台湾経済部傘下の国営企業に全て購入されています。
しかし、ここ数年の急激な原材料価格高騰により損失が拡大。日本円でおよそ2兆6000億円の赤字を抱えています。

これは蔡英文政権で推進されている脱原発にも影響しています。台湾当局は2016年から脱原発を推進。2025年までに国内で稼働している原発6基すべてを停止し、太陽光など再生可能エネルギーに置き換える計画でした。そのために必要な新たなグリッド網の施工などの設備投資にも大きな影響が出ているとのことです。

で、これのどこが韓国を真似したての失敗なのかというと。原材料価格が高騰した時に、台湾政府はインフレを抑制するために電気料金の引き上げを凍結したことです。これは韓国の政策を模倣してのことです。
結局、韓国ではレゴランド事態など債券市場の流動性低下も相まって、韓国電力公社社債の発行制限を受けるなど赤字縮小の方向に舵を切ることになりました。その結果、電力料金が値上がりしています。
韓国から遅れること約1年半で台湾は同じ選択をすることになりました。

 



韓国経済の記事からです。

「訳もなく韓国の真似をしたら大失敗」···台湾が犯した「致命的ミス」


(前略)

ブルームバーグ通信は最近「(先月21日)台湾中央銀行が基準金利を0.125%引き上げ、16年ぶりに最高値である年2%に上げたのは市場の予想外のことだった」と伝えた。わずか数時間前、地球の反対側で米国中央銀行(Fed)が基準金利(年5.5%)を5回目凍結し「緊縮サイクルは終わった」という信号を送ったという点からだ。市場ではこれに先立って4回連続Fedに従って行った台湾が、今回もやはり凍結を選ぶものと予想した。

しかし、台湾通貨当局はFedとのデカップリング(脱同調化)を選んだ。背景は一日で明らかになった。翌日、台湾経済部が電気料金の引き上げ案を持ち出したためだ。産業用は25%、家庭用は10%まで引き上げるべきだという発表だった。電気料金の引き上げによる追加的な物価上昇を懸念し、緊縮を選ばなければならなかったという分析が出た。

(中略)

シカゴ大学ブース経営大学院の経済学教授であるチャン・タイ氏は最近、台湾コモンウェルスへの寄稿文で「台湾が犯したミスはウクライナ戦争などによるエネルギー衝撃に対応して政府が消費者を保護するために価格を凍結した韓国のエネルギー政策を模倣したもの」とし「(韓国ではなく)電気補助金を支給せずに発電原価に応じて市場価格を策定するシンガポールが模範事例にならなければならない」と話した。

消費者に電気消費量の削減に対するインセンティブを提供しないまま電気料金を縛っておくだけでは、むしろ不公正を招くという点からだ。また、韓国も台湾のように近いうちに電気料金の引き上げに関して決断を下すしかないという意味と解釈される。電気料金が上がる場合、韓国通貨当局もやはり追加物価上昇を避けるために緊縮を選ぶだろうという展望が出ている。

(後略)



韓国経済「"괜히 한국 따라했다가 낭패"…대만이 저지른 '치명적 실수' [김리안의 에네르기파WAR](「訳もなく韓国の真似をしたら大失敗」···台湾が犯した「致命的ミス」)」より一部抜粋

「韓国も台湾のように近いうちに電気料金の引き上げに関して決断を下すしかない」と書かれていますが、韓国は既に何度か電気料金を引き上げています(記憶喪失かな?)。
まあ、赤字解消には充分ではないと言われていますので今後も引き続き電気料金が引き上げられるという意味でしょう。さらにその際には台湾のように、セットで政策金利を引き上げる緊縮財政も必要になるということです。

韓国の政策金利は3.5%で据え置かれたままです。このまま米国の政策金利が引き下げられれば便乗して韓国の政策金利を引き下げることができる、そうなるとローンが組みやすくなるので、不動産景気が回復する…韓国の経済メディアの見立てはおおよそこのような感じなのですが、そうはならないかもしれないということですね。
ただし、米国と韓国の金利差が縮まれば、国内への投資誘致という側面では韓国にとって有利となります。