米経済紙「韓国の不動産PF不良111兆規模」、金融当局「誇張されている」という話

ブルームバーグが韓国のPF(プロジェクト・ファイナンス)に関してリスク懸念の記事を報じました。
ノンバンク(第2金融圏)の「不動産融資の規模は926兆ウォンで10年で4倍」、「PF負債規模は111兆ウォン」としています。記事は、韓国で起こることは他の国でも起こりかねないこと、とした上で、韓国は上手く対応しており、総選挙が一段落したことでPF不良債権処理を加速させるだろうとしています。

この報道を受けて韓国金融当局は「誇張された側面がある」と反論しています。

 



マネートゥデイの記事からです。

「不動産PF不良111兆」外信報道に金融当局「誇張された側面がある」


(前略)

金融当局の高位関係者は24日「国内不動産PFに『ストレス』要因があるのは事実だが、グローバル市場に照らして韓国が2番目に危険だと指摘した外信報道は誇張された側面がある」として「最悪のストレス状況を仮定した不良に評価基準が各々違うことはありうるが、111兆ウォンという規模は過度に大きいと見られる」と明らかにした。

前日、ブルームバーグ通信はシティ銀行、野村証券などの報告書を引用して「危険素地がある韓国のPF負債規模が111兆ウォンに達する」、「韓国が世界の影の金融の弱い輪になりかねない」と指摘した。特に「シャドーバンクの金融不良を招きかねない取引活動水準は韓国が先進国の中で米国の次に2番目」としてノンバンク部門の不動産規模が926兆ウォンで史上最大規模だと指摘した。

これは3月、金融当局が公開した不動産PF発表数値とは相当な距離がある。金融当局は昨年末基準で不動産PF規模は135兆6000億ウォンだと発表した。シャドーバンクとして名指しされる非銀行圏の規模は貯蓄銀行9兆6000億ウォン、与信専門25兆8000億ウォン、証券7兆8000億ウォン、相互金融4兆4000億ウォン、保険42兆ウォン水準だ。

延滞率は平均2.70%だった。貯蓄銀行の延滞率は6.94%で前年末の2.05%比3倍以上跳ね上がり、証券は13.73%に上る。与信専門社も4.65%を記録した。ただし金融当局は2011年貯蓄銀行事態以後、歴史的高点延滞率が平均13.62%であったという点に照らしてみれば「全般的に安定的な状況を維持している」と診断した経緯がある。

(後略)



マネートゥデイ「"부동산 PF 부실 111조" 외신보도에 금융당국 "과장된 측면 있다"(「不動産PF不良111兆」外信報道に金融当局「誇張された側面がある」)」より一部抜粋

ブルームバーグの該当記事の日本語版を読みましたが「グローバル市場に照らして韓国が2番目に危険だ」などということは書かれていません。単にノンバンクという業態の規模が米国に次いで2位ということが書かれているのみです。

また記事の書き方だと926兆ウォンという数字がシティバンク野村証券の報告書から導き出されているように読めますが、この数字は韓国資本市場研究院(KCMI)のデータです。(この組織が何者なのかよく分かりませんが、中央日報などもここの研究委員のインタビュー記事を載せてます)

まとめると、ブルームバーグの元記事に書かれていあることは以下です。
1. 韓国のシャドーバンクによる不動産セクターへの融資額は昨年過去最高の926兆ウォンと、10年前の4倍強となった(KCMIのデータより)
2. 韓国で金融不安をもたらしかねないシャドーバンクの割合は、ほかの先進国と比べて大きく、相対的な規模では米国に次ぐ2位となる。(金融安定理事会:FSBのデータより)
3. 昨年、韓国のある主要金融グループでは延滞率が6.55%と、前年の2倍近くに上昇した。

このうち、1と2をゴッチャにして反論しているのが記事の内容となります。

しかも弱いです。「PF負債規模が111兆ウォン」に対して「不動産PF規模は135兆6000億ウォン」としか書かれていません。全体規模が135兆6000億ウォンなのに、そのうち111兆ウォンが「不良」となれば、確かに誇張に聞こえます。
しかし、反論するのであればKCMIが出した「926兆ウォン」はどういうことなのか?記事中では何ら触れられていません。
ノンバンクだけで926兆ウォン規模の不動産事業を抱えている...全部が全部PFでは無いとしても、近年の韓国でのPF規模拡大速度を考えると半分がPFと言われても驚きません。

そもそも金融当局が発表した不動産PF規模からは、初めからセマウル金庫の貸出額や貯蓄銀行の土地担保貸し出しが除外されています。(セマウル金庫は確か管轄省庁が違うため統計データも別々になっていたはず)
証券会社の分も丸々抜けています。そしてその抜けている証券の延滞率が「13.73%」です。
そもそもの発表データが不完全なものの時点で説得力がありませんよね?金融当局も本当の規模を把握できているのか疑問です。