ルナ - テラ事態の話

発行元が韓国ソウルに本社を置く仮想資産のルナコイン(Lunar)が驚異の99%という下げ幅で大暴落しました。
普段チェックしてないコインなんですけど、微々たる量ながらビットコインを持ってまして。その動きがおかしかったので何かあったかと確認してみたら大変なことになってました。

韓国ではこの件を投資詐欺の一種である「ポンジ・スキーム」ではないかとする見方まで出ているそうです。
というのも、発行元の法人が事態が起こる前の先月30日、解散していたためです。その直前の先月半ばにはUSTのペッグ補強として15億ドル(約1900億円)相当のビットコインを購入しています。
今回の事態でルナ買い支え資金調達のためにそのビットコインが売られたのか...それともポッケナイナイされたのかは分かりません。

 



前提として仕組みと経緯を少し説明しておきます。

原因はルナの単体暴落ではなく、仕組みそのものです。
テラUSD(UST)という米ドルに連動する(ドルペッグ)別の暗号資産があります。他の法定通貨などで価値を担保するものをステーブルコインと呼びます。

一般にステーブルコインは裏(発行元)が同額のドルなどを保有する形で価値を担保します。1万ドル分のコインを発行するなら実際に1万ドルを会社名義の口座に持っておいて、そこで交換出来るようにするわけです。
しかし、USTはこれを米ドルではなくルナで準備していました。1ドル分のUSTを持っていけば時価で1ドル分のルナと交換できました。

この方法にはメリットがあります。例えば、USTが0.9ドルで売られていた場合、それを買ってルナに交換すれば0.1ドル分の儲けになります。こうやって利ザヤを稼ぐ方法をアービトラージと言います。USTは買われると価格が上昇するため1ドル付近で価格が安定することになります。

ところが5月10日に突然、原因不明ながらUSTの米ドル連動が外れました。
その時点でのUSTの時価総額は185億ドル(約2兆4千億円)、ルナは300億ドル(約3兆6千億円)だったので、USTが全部ルナに交換されてしまったとしてもまだ大丈夫なはずでした。

しかし、ここで先程の利ザヤ狙いの買いがUSTに入ると話が変わります。USTを買った人はすぐルナに交換します。交換したルナはすぐに売られて現金に変えられます。この繰り返しで、買われるUSTの時価総額はほとんど変わらない一方、売られるルナの時価総額はどんどん下がります。

ルナの時価総額がUSTの時価総額より低くなったらどうなるでしょう?USTは米ドルペッグと言いつつ、事実上ルナによって価値を担保されているわけですから、USTを持っている人は気が気じゃないはずです。ルナが残っているうちに手元のUSTをルナに変えて安全な資金(米ドル)に変えてしまおうと、ルナの売りがますます加速します。ここまで来るともうパニックです。




上の画像は左がUST、右がルナのチャートです。USTの方は10日まで安定しているように見えますが、ルナの方を見ると少し前から実は始まっていたのかもしれません。

 

次に、実際に韓国でどんな報道がされているか、ニューシースの記事からです。

[「黒いコイン」テラ事態①]紙くずになった「ルナ」、ポンジ詐欺か


全世界の注目を集めたテラフォームラボのコイン暴落が続き、1週間で10万ウォンのコインが1ウォンになるという奇現象が起きた。世界最大の取引所ではルナを退出させるなど、コイン界のライジングスターが一瞬にして国民の弱族に鳴った。一瞬にして紙くずになったルナの投資家たちは、テラフォームラボの国内法人解散を巡り「食い逃げ」疑惑を提起したりもした。

(中略)

ルナの暴落はUSTのペギング(固定)システムが崩壊して始まった。USTは米ドルに1対1で固定され、1ドルを維持するようアルゴリズム設計されたステーブルコインだ。USTの価値が下がればルナを売ってUSTを買い入れドルトの価値固定を維持する。USTの価格が1ドルより高くなる時はこれを反対にして価格を維持するようになっている。USTはこのような方式で米国ドルと1対1で維持されていたが、USTの価格が1ドル以下に下がる「デペギング」が起き、ルナ投資家が大規模な売りをする「バンクラン*1が起きたのだ。

特に、国内のテラフォームラボ法人が解散したという点が投資家の信頼度を大幅に下落させる契機になった。テラフォームラボ・コリア法人の投機を参照すると、先月30日に行われた株主総会決議によって法人が解散されたことが分かる。ウォン共同代表のツイッターも11日以降更新されず、投資からはルナに対して「Scam」「ポンジ・スキーム」「ラグプル(仮想資産開発者がプロジェクト投資家を集めた後にプロジェクトを中断して闘争する詐欺技法)」と非難している状況だ。

(中略)

ルナは現在、ほとんどの時価総額が蒸発し、前日午後7時40分時点で3000億ウォンほど残っている状況だ。

テラ運営陣までネットワーク運営を公式中断すると、コイン取引所も相次いでルナに対する取引支援終了を告知した。バイナンス前日、ルナに対する取引を終了すると公示し、GOPAX、Upbit、Bithumbも順にルナを取引所から退出させることに決めた。

(中略)



ニューシース「['검은 코인' 테라 사태①] 휴지 조각 된 '루나', 폰지사기인가([「黒いコイン」テラ事態①]紙くずになった「ルナ」、ポンジ詐欺か)」より一部抜粋

日本ではもともと取り扱いのある取引所はありませんので、被害は無いかと思います。(ただ、昨年200倍とか伸びた通貨らしいので、海外の取引所を利用した人はいたかもしれません)

逆に韓国では国産通貨ということもあり、かなり人気だったみたいです。
少し前に報じられた「借金して投資する」という青年層がここに突っ込んでいたら...目も当てられません...。



*1:Bank-run;大量預金引出事態