対馬の観音寺から盗まれた仏像の所有権を巡る裁判に、観音寺の住職が初めて参考人として参加しました。
この仏像は2012年に盗まれ、2017年に韓国の裁判所が「倭寇が略奪したもの」と規定し浮石寺に所有権があることを認めたものです。その後、韓国検察が控訴していました。
韓国日報の記事からです。
日本観音寺「盗んだ仏像は私たちの所有...略奪ではなく譲り受けたもの」
(前略)
大田高裁第1民事部(部長パク・ソンジュン)は15日、大韓仏教曹渓宗浮石寺が大韓民国政府を相手取って提起した流体動産引き渡し請求訴訟控訴審弁論期日を進行した。
この日の裁判には観音寺側の田中節竜住職が裁判補助参加人として出席した。この訴訟に日本側の関係者が出席したのは初めて。観音寺側は「原告(浮石寺)は現在、法的意味で所有権が成立していない」とし「観音寺を創建したジュンカン*1が1527年に朝鮮から日本に戻る際、仏像を譲り受けて持ってきた」と主張した。
(中略)
観音寺側は「該当の仏像は観音寺宗教法人の設立後、明確に所有意思を持って公然と所有してきており、日本と韓国の民法上の取得時効が認められ所有権が成立している」と主張した。取得時効は長期間他人の物を所有すれば所有権を認めることだ。
観音寺側は「該当の仏像は観音寺のみならず対馬、ひいては日本全体の財産と言えるが、2012年に盗難に遭い不法に韓国に流入することになった」とし「窃盗団によって不法に韓国に搬入されただけに仏像の所有権は観音寺にある」と強調した。
観音寺側は仏像の所有権が浮石寺にあることは認められず、所有権を取得したとしてもこれを喪失したという趣旨の準備書面をすでに裁判所に提出した。
浮石寺側はこれに対して観音寺が仏像を適法に取得したかどうかを確認しなければならないと主張した。浮石寺側は「仏像を適法に取得した後に安置したという観音寺の主張を裏付ける証拠資料を見つけることはできない」とし「適法取得証拠があれば提出しなければならない」と明らかにした。
(後略)
韓国日報「일본 관음사 "훔친 불상은 우리 소유... 약탈 아닌 양도받은 것"(日本観音寺「盗んだ仏像は私たちの所有...略奪ではなく譲り受けたもの」)」より一部抜粋
適法云々言っていますが、逆に言うと「略奪された」を示す証拠資料もありません。推測です。
この裁判で「略奪された」を示す根拠として採用されたかは知りませんが、一部で「仏像が倭寇によって略奪された」を示す証拠として1926年と1982年に刊行された地理誌に、浮石寺のある「忠清南道西山」に「倭寇の出没が多く、西山軍が倭寇を打撃して(首を)吊り下げたことに由来する地名」が紹介されていることを根拠に「近くの浮石寺が略奪されなかったわけがない」としているものがあります。これは直接の証拠ではありません。これが証拠となるなら、疑わしきは全て悪い方に解釈可能でしょう。
個人的には「倭寇略奪」よりも李氏朝鮮の仏教弾圧から逃れてきたと考えた方がしっくりきますけどね。
*1:原文「종관」。僧侶の名前と思われるが漢字表記が不明。