「知韓派が『韓国の対日感情に変化が生じた』と言っている。日本も軟化している」な話

「韓国人に生まれなくて良かった」の元駐韓大使の武藤さんが日本メディアに寄せたコラムを引用する形で、韓国メディアが「日本の知韓派が『韓国の対日感情に変化が生じた』と言っている。日本のネット民も同調している」と報じていました。

日本の態度が軟化した、という「雰囲気」論や「感情」論だけで問題解決を図ろうとする(=図れると考える)悪い癖が出ているような内容の記事です。

 



ソウル新聞の記事からです。

元駐韓日本大使「韓国の対日感情に変化が生じた」[ここは日本]


(前略)

武藤元駐韓日本大使は韓国で計12年勤めた知韓派だが、2017年のムン・ジェイン政府の発足と韓国内反日感情の高まりなどの雰囲気と関連しては終始批判的な立場を堅持してきた。

しかし最近、高麗時代の仏像判決、強制徴用被害者賠償判決などと関連して韓国内で以前とは異なる新しい解決策が提示されているという点に注目し、両国関係改善のための声を出した様子だ。

武藤元大使は10日、日本メディアのダイヤモンドオンラインを通じて「この間、韓国裁判所は日本と争いがある案件で韓国人の感情を考慮し、韓国側に有利な判決を下す場合が多かった」とし「だが、今回の浮石寺の判決の場合、法と常識を公正に判断した適切な判決だった。浮石寺は上告の意思を明らかにしたが、該当判決内容に対する韓国内批判世論の高まりなどは見受けられないという点に意味がある」と評価した。

(中略)

また、武藤元大使はムン・ジェイン政権の反日行動を名指しし「韓国で反日感情を主導した野党共に民主党と市民団体の勢いが弱まった」と見解を明らかにした。

それだけでなく武藤元大使は先月12日に発表された日帝強占期徴用被害者に対する賠償問題と関連して「日本企業ではなく、韓国政府傘下財団の財源で代替するという韓国政府の方針にも、思ったより少ない韓国人が反対の声を出した」とし「これも日本に対する韓国人の感情が変化していることを示している」と解釈した。

彼は「最近KBSが実施した関連世論調査で『被害者の意見反映が不十分で判決に同意しいない』という回答と、『日本との関係改善のために判決に同意する』という回答が、それぞれ59.6%と33.3%だった」とし「過去の世論調査では『日本が好きか』または『嫌いか』という質問に『嫌いだ』という回答がなんと80%近くに達した。韓日歴史問題に関する調査にしては、今回の世論調査は非常に穏健な結果だ」と述べた。

(中略)

彼のこのような評価が出ると、日本現地のネット民たちも同調する雰囲気だ。日本のあるネット民は「日本も韓国政府のこのような対処を評価し、両国間の信頼関係を築いていかなければならない」とし「韓日関係が一日も早く正常化してほしい」と述べた。

(後略)



ソウル新聞「前주한 일본대사 “한국의 대일 감정에 변화 생겼다” [여기는 일본](元駐韓日本大使「韓国の対日感情に変化が生じた」[ここは日本])」より一部抜粋

私の感覚では、武藤さんは決して韓国に「批判的」な感じはしません。どっちかというと「仲良くしよう」を前提に「そのためには...」な立場で発言する人と認識しています。
その上で、良くも悪くも非常に「日本人的」な考え方をする人なのではないか、な気がしています。韓国人の気質をよく知っていると同時に、それを「日本人的」に解釈するというか、なんというか...優しんでしょうね。好意的に受け止めている気がするんですよ。

例えば、世論調査の結果が云々などですが、韓国人は「日本が嫌い80%」と、これがいつの事か分かりませんけれど、2017、8年のムン・ジェイン政権当時の訪日韓国人は700万人を超えています。人口5000万人の国です。7人に1人は日本に来ているわけです。「80%が日本嫌い」との言行不一致があります。つまり、韓国人の旅行先選定に対日感情はさほど関係ありません。それよりも「日本嫌い」と言わなきゃいけないような社会的雰囲気があったわけで、それが緩んだということなんだろうと思います。
しかし逆に言うと、そういった社会的雰囲気が「コロコロ」変わるとも言えるわけです。


本題に据えている判決の件もそうです。
浮石寺の判決とは、先日の対馬仏像の「返還」を浮石寺が求めた裁判で、日本の観音寺の所有権を認めた判決のことです。
確かに、一見するとこれは今までの流れとは違うようにも見えますけれど、判決をよくよく見ればお分かりの通り、あくまで現在の「所有権」の話しかしていません。これが「略奪文化財」となると話は別、と読み取れる余地があります。(詳しくはこちらの記事を参考に)

また、この判決を「法と常識を公正に判断した適切な判決」と評価していますけれど、裏を返せば「一貫性の無い判決」でもあります。上告審でひっくり返る可能性が高いと感じます。(次は最高裁ですから確定判決になります)

今までの「徴用訴訟」でも、2012年の賠償判決時、李明博政権(当時)は「請求権協定で解決済み」と、判決を「批判」していました。武藤さんの評価だとこれも「日本に対する韓国の感情が変化していることを示している」ということになりませんか?

韓国は「反日」を根底に築かれた国家です。韓国人は「反日」をアイデンティティの拠り所にしています。これは良いとか悪いとかの話ではありませんが、抗日義士の発掘に熱心だったり、独立門に抗日義士の銅像を建てようとの運動が起こったり(却下されています)するのがその表れです。一般庶民はさして熱心でなかったとしても、日々日常を過ごす社会の中で無意識にそうした「刷り込み」を受け続けます。その結果が「韓国人」だろうと思うのです。
韓国人自身が「反日」に疑問を抱かない限り、その無意味さに気づかない限り、「反日」は寛解することはあっても無くなることはないように思います。