鉄筋なしマンション、設計段階で半分に減らし、施工段階でさらに減らす二段構えの話

3ヵ月前の4月29日午後11時半頃、仁川市の新築マンション建設現場の地下駐車場で崩落事故が起こりました。地下1階の天井が崩れ、それから2階の屋根も崩れました。施工業者はGS建設という韓国5大建設業者(サムスン、現代、GS、大林、大宇)のひとつです。
まだ建設中の現場であり、時間も深夜に近かったことで幸い人的被害はゼロでした。

問題は崩落の原因で、今月5日に国土交通部が公開した点検結果によると、せん断補強材(鉄筋)の未設置、コンクリート強度不足、荷重考慮不足などが上げられました。特に、せん断補強材(鉄筋)は柱のうち少なくとも必要分の60%が未設置となっていました。本来、必要な強度を確保するには32本ある柱全てに鉄筋が必要であるのに、設計段階でそれが15本に減らされ、さらに施工段階で追加で4本の柱から鉄筋が抜かれたことが分かりました。
設計の段階で足りないのは最悪強度計算ミスなどの言い逃れもあるかもしれませんが、施工段階で設計図通りでないとなると、人為的・意図的なものです。

検査結果の報道を受けて「骨なしマンション」と、結構な騒ぎになっています。そして、また他の建設会社が建てた公社マンションで同じく地下駐車場の鉄筋が抜けている事例が見つかりました。検査の結果、設計図上鉄筋が入っているはずの柱16本中15本から鉄筋が抜けていたとのこと。こちらは既に昨年4月から入居が始まっている物件です。

 



京郷新聞の記事からです。

「また骨なしアパート?」 南楊州LHマンションの地下駐車場でも鉄筋抜け


(前略)

28日、LHによると最近、仁川黔丹新都市のマンション地下駐車場崩壊事故を契機に全国に建設中か入居した団地のうち、黔丹アパートのような無量板構造で施工されたマンションを点検している。

この過程で、昨年4月に入居が始まった京畿道南楊州市のある公共分譲マンション地下駐車場の柱からせん断補強材(補強鉄筋)が抜けていることが確認され、緊急補強工事に乗り出した。

LH関係者は「設計図面にはせん断補強材を全て表示したが、施工と監理の誤りで鉄筋が抜けたと見られる」と話した。

無梁版構造は天井を支持する枠や壁がなく、柱がスラブ*1を直接支えるる構造だ。このため柱が荷重に耐えられるように「骨組み」の役割をする補強鉄筋を必ず入れなければならない。

しかし、このマンションの地下駐車場の柱16本を検査したところ15本の柱から補強鉄筋が抜けていたことが分かった。これに先立って仁川黔丹アパートでも補強鉄筋漏れが直接的な崩壊事故原因として名指しされた。

(中略)

LHは入居者らと協議した後、精密安全診断を進める一方、地下駐車場の全面再施工可否を決める予定だ。施工会社はSMグループ系列会社のサムファン企業だ。現在進行中の無梁版構造マンションに対する全数調査の結果は、8月末または9月初めに発表される予定だ。



京郷新聞「‘또 순살 아파트?’… 남양주 LH 아파트 지하주차장에서도 철근 누락(「また骨なしアパート?」 南楊州LHマンションの地下駐車場でも鉄筋抜け)」より一部抜粋

韓国日報の記事によると、新都市のマンションの一部では8年前も鉄筋抜けが大きな問題になったようです。その際、「鉄筋は抜けていても崩れるほどではない」との理由で「再施工なしで簡単な補強工事」で建物自体は残されました。記者はその事実を知らずそのマンション入居したそうなのですが、その際、管理会社からも不動産会社からも「鉄筋抜け」について一切の説明は無かったそうです(近隣住民に聞いて初めて知ったと)。すでにそこには住んでいないようですが、最近調べてみたところ該当マンションの不動産価格は周辺と大差ないのだそうです。

問題が起こると「問題だ」と騒ぐだけ騒いで終わり、何度も似たようなことを繰り返す姿がこうしたところに表れますね。
あと気になる点として、調べるのは地下駐車場だけでいいのか?な気がします。居住部の柱は大丈夫でしょうか?

*1:床の荷重を支える構造体。この場合は上層階の床面=下層階の天井面のこと。