「AI用チップの需要増が他の半導体の需要低下を招いている」という話

当初予測されていた半導体回復は今年下半期からでしたが、今は10月以降とも言われています。
韓国の半導体の主力はメモリ半導体です。ですから、一番大きいのはデータセンター需要です。ざっくり言うと、データセンターへの設備投資増が、そのままメモリ半導体の需要増へと繋がる形です。

先日発表されたNvidiaの決算レポートでは前年比で売上高2.0倍、営業利益13.6倍という訳分からん数字を叩き出しています。前期比較でも売上高87.8%増、営業利益3.2倍という好成績でした。
一部では「半導体復調キタ━(゚∀゚)━!!」な記事も無くはないです。が、逆に「マズイ状況」という見方を示しているメディアもありまして、個人的にはこちらの意見を推したいです。

 



というのも、Nvidiaの好況の理由はAI用GPUを中心にデータセンター向けが大幅増収となっているからです。あれあれあれ?データセンターへの設備投資は韓国のチャンスだったんじゃ…?となりますよね。

意外と知られていないかもしれませんが、近年各社こぞって参入しているAIの演算にはGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット=画像演算装置)が使われるのが一般的です。(CPUよりGPUの方が並列処理が得意なので、多分その辺が理由です)
つまりデータセンター向けの設備投資が増えても、それがAI用の投資である以上、韓国の半導体産業への恩恵は限定的にならざるを得ないというわけなんですね。
なぜなら、投資できる資金(パイの大きさ)は決まっているからです。それをDRAMやNANDなどのメモリ半導体ではなく、AI用チップに割り振っているためです。

アジア経済の記事からです。

半導体の逆説...「AIチップ人気が他の半導体需要を押し下げる」


(前略)

29日、金融情報エフ・エヌ・ガイドがSKハイニクスの第3四半期実績と関連し、最近1ヵ月間の証券街のコンセンサス(展望値平均)を集計した結果は、売上高7兆8235億ウォン、営業損失1兆6455億ウォンだ。今年第1四半期と第2四半期に記録したそれぞれの営業損失、3兆4023億ウォンと2兆8821億ウォンに比べればメモリ半導体の減産効果で各四半期1兆ウォンずつ損失額を減らしていく流れを見せている。それでも依然として黒字転換まで行くには遠い。遅ればせながら半導体減産を始めたサムスン電子も状況は似ている。

(中略)

Nvidiaの「アーニングサプライズ」を半導体市場全体の期待感に繋げるには無理があるという指摘も出ている。

半導体業況全体の回復というよりは、AIチップに対する需要は列を成しているが、供給力量は不足しておりNvidiaだけが供給できるためお金の座布団に座るようになったと解釈するのが正しいということだ。イ・ウンチャン・ハイ投資証券研究員は「予算が決まっているマイクロソフト、グーグルなどのビッグテック企業がAI投資に資金を注ぎ込むほど、一般サーバ、そしてDRAMやNANDに対する需要は減少する可能性がある」と話した。キム・ソングン未来アセット証券研究員もやはり「データセンター投資を執行する企業が、限定された予算内でAIチップ購買に注力し、他の半導体の需要を下げる『カニバリゼーション(市場共食い)』現象に対する憂慮が大きくなっている」と話した。

(中略)

実際、半導体業界は現在、半導体景気が依然として最悪の状況から大きく抜け出せずにいると見ている。韓国銀行が最近発表した8月の企業景気実査指数(BSI)は半導体価格回復遅延で電子・映像・通信装備のBSIが8ポイントも下がった。特に半導体設備、PCB基板製造などを営む中小企業の業況実績が大きく悪化したことが分かった。

(後略)



アジア経済「반도체의 역설…"AI 칩 인기가 다른 반도체 수요 떨어뜨려"(半導体の逆説...「AIチップ人気が他の半導体需要を押し下げる」)」より一部抜粋

サムスンやらSKやらがいきなり倒れるってことは先ずないですけど、コストカットのために人件費の安い国へ、補助金をくれる国へドンドン出て行ってしまう可能性は高いです。どことは言いませんが、そうした隙を虎視眈々と狙っている国もあるでしょうね。