「サムスンの戦略が新たな半導体需要に対応できずにいる」という話

昨日は半導体関連で「良いニュース」を紹介しました。今日は「悪いニュース」です。

2018年、韓国のメモリ半導体輸出額は830億ドルでした。2023年は429億ドルと、5年で約半分に減っています。
原因の一つに、サムスンの戦略ミスがあります。主にAI用途で使用される高帯域幅メモリ(HBM)の研究開発チームを、収益性の問題で2019年に解散しています。しかし、それによりChatGPTに代表されるAIブームで拡大した需要を取り逃しました。

今までサムスンは大規模先行投資を行うことで汎用半導体市場のシェアを取ることに成功していましたが、この手法が通じなくなってきているとの指摘があります。
また、非メモリ分野でもシェア拡大が出来ていません。力を入れているファウンドリ事業でもTSMCとの差が縮まらず逆にインテルに追われている状態ですし、2018年に16.3%あったスマホ用のシステム半導体シェアも昨年は7.6%と半減しています。

 



ハンギョレの記事からです。

モリー輸出もAI時代の非メモリーも不振…「半導体強国」非常事態


(前略)

半導体強国に赤信号が灯ったのは韓国半導体産業を率いたサムスン電子の状況による。特にサムスン電子はメモリ部門でも競争力を脅かされている。

(中略)

大規模な投資を通じて汎用半導体市場をいち早く先取りすることに成功したサムスンの戦略が注文生産による人工知能(AI)時代の新しい半導体地形にうまく対応できずにいるのだ。代表的な事例が主力のDRAMに属する高帯域幅メモリ(HBM)だ。人工知能サーバ用グラフィック処理装置(GPU)に必須のHBMは、ChatGPT熱風などで昨年から需要が急激に増えたが、サムスン電子は第4世代HBM3からパッケージング関連の技術問題でグラフィック処理を独占しているNVIDIAに供給できなかった。

(中略)

サムスンが2019年にHBM開発チームを解体したのは、サムスンが未来動向をまともに予測できなかった事例に挙げられる。

(中略)

非メモリ半導体を作る領域であるファウンドリ(半導体委託生産)市場で1位の業者である台湾TSMCがアップルとNVIDIAAMDなど大型顧客会社を確保し、1位の地位を強固にしている。一方、サムスン電子の大手顧客会社の受注ニュースは聞こえてこない。サムスン電子は家電、およびスマートフォンの独自チップ生産とTSMCに集中した物量を分散して受け取る戦略的2位の座を守る状況だ。最近は米インテルファウンドリ事業に再び進出し、サムスンを押しのけて2位に上がると脅かされている状況だ。市場調査業者トレンドフォースの調査結果によると、昨年第4四半期の全世界ファウンドリ市場シェアはTSMCが61.2%、サムスン電子が11.3%であった。前四半期と比べサムスンのシェアは1.1%ポイント減り、TSMCシェアは3.3%ポイントさらに増え格差が広がった。

(中略)

スマートフォンの頭脳の役割をするシステム半導体AP領域で、サムスンは2018年に市場シェアを16.3%(全世界2位)まで上げたが、昨年は7.6%(3位)に再び下がった。2015年の2.4%から始まり成長していた流れが後退したのだ。

(後略)



ハンギョレ「메모리 수출도, AI시대 비메모리도 부진…‘반도체 강국’ 비상(メモリー輸出もAI時代の非メモリーも不振…「半導体強国」非常事態<)」より一部抜粋

後半の省略部分ではサムスンにとって有利になりそうな「見込み」情報が色々と出てきます。例えば、Open AIがサムスンファウンドリにチップを発注するかもしれないとか、米中対立により中国の技術開発が遅れ韓国企業が「技術格差」を広げる時間が出来た、などです。

しかし、これらはあくまでサムスン(ひいては韓国)に都合の良い「希望的観測」でしかないので省略しました。前半の実績数字部分のみ今現在の「現実」と考えた方が良いでしょう。