1月の実質賃金、前年同月比-11.1%...大企業・富裕層支援に政策集中という話

2022年1月の韓国の実質賃金(前年同月比)は17.4%という高水準でした。
しかし、ユン・ソンニョル政権発足後の5月(ということに、以下で紹介する記事ではなっていますが実際は2月から)以降は急落し、マイナスに転じます。
その後ほぼ横ばいが続き、今年の1月には実質賃金減少率-11.1%を記録しました。ちなみに、日本の今年1月の実質賃金は-0.6%です。

原因は物価高なのですが、以下で紹介する記事では物価高・高金利を抑制しようとしない政府の政策基調を「健全財政という理念に捕らわた政策基調」「トリクルダウン神話に従い大企業と富裕層支援に政策が集中した結果」と批判しています。

 



ハンギョレの記事からです。

実質賃金減少率11%まで...ユン政府「富裕層減税・理念経済」空振り


(前略)

韓国経済は輸出大企業中心の不安な成長回復の流れの中にあるが、その裏側には高物価・高金利に苦しむ庶民経済が位置している。純資産が少ない庶民・中産層は物価高のせいで実質賃金減少の衝撃に、ローンから増える利子償還負担に置かれている。

雇用労働部の資料(事業体労働力調査)によれば、全産業、賃金総額基準の実質賃金は現政権スタート(2022年5月)から統計が集計された1月までの計21ヶ月中17ヶ月は減少(前年同月比)した。特に1月の実質賃金減少率は11.1%に達する。

企業利益の減少で成果給が減り賃金上昇率が下落したためが大きいが、賃金増加が物価上昇に追いつかず暮らしが悪くなったと見られる。

(中略)

物価高・高金利というマクロ環境に直面した現政権の政策基調は「健全財政」という狭い領域に留まっている。増えた国家債務と財政赤字を念頭に置いた政策方向や「小さな政府」という外部環境変化と有利になったまま保守的理念だけにとらわれた政策基調の一面だ。「民生経済回復」を強調するが、健全財政基調という枠組みから抜け出せなかった政府の市場介入幅は当初から大きく難しかった。実際、1年前に比べた昨年の財政支出の減少率(執行額基準)は10.5%に上る。財政の核心役割である「所得再分配機能」が事実上崩れたわけだ。

キム・ユチャン弘益大学教授(経営学)は「政府はそのたびに民生を叫んだが、結果的には減税を通じて大企業と高所得者、高額資産家支援に政府政策が集中した」とし「李明博政府のトリクルダウン効果神話にそのまま従ったのがユン・ソンニョル政府経済政策の最大の特徴」と述べた。

だからといって現政権が「保守経済学」を忠実に履行したわけでもない。むしろ準備のない、お金がかからない市場介入は攻撃的に繰り返された。銀行を圧迫して利子償還額の一部(約2兆1千億ウォン)を軽減したり、市場に形成された価格に影響を与える空売り禁止措置を下したのが代表的だ。政府が高金利脆弱階層を支援するために財政を解くことを民間企業に押し付けたり、市場歪曲を招きかねない措置を力で押し付けたという意味だ。

(後略)



ハンギョレ「실질임금 감소율 11%까지…윤 정부 ‘부자감세·이념경제’ 헛발(実質賃金減少率11%まで...ユン政府「富裕層減税・理念経済」空振り)」より一部抜粋

「民間企業に押し付け」感は確かにあります。香港ELSやPF(プロジェクトファイナンス)問題(建築会社が金融機関のローン「手数料」が過剰だと訴え調査が開始されてます)からも「民間企業に押し付け」て解決しようとしている気配を感じます。

経済政策に関しては(も?)、前々から書いていますが、本当に何もしてないんですよね、ユン政権って。
でもこれに関しては韓国メディアも同罪です。とにかく、「輸出が回復すれば~」「半導体が回復すれば~」と繰り返していたのは、韓国メディアも同じだからです。
一部メディアが「半導体錯視」と言い始めたのは中国のリオープニングから数ヵ月経っても輸出が回復傾向にならなかったからです。それでも主流意見は「半導体が回復すれば~」のままでした。
経済新聞を名乗っているメディアでさえそんな調子だったんですから、「でなければならない」だったんでしょう。

しかし、これだけガタガタだと、バラマキ政策を公約に掲げるだけで次の大統領選、野党はヌルゲーですね。