「Forced to work」表記はやっぱり迂闊だったという話

2015年当時、日本側が「forced to work」という表現を容認したことをもって韓国メディアが「日本が強制労働を認めた」的な報道をしました。
それを受けて日本政府は「いやいや、認めてませんよ」と返しています。
ですが、韓国からすると「強制労働を認めた」はもう既定路線です。日本が今更何を言おうが「言い逃れ」としか受け取られません。


解釈が完全に食い違っています。
なにが起こったのか。

「強制労働」と「強制的な労役」の定義の違いを述べよ、と言われたらどうします?って話です。


聯合ニュースの記事からです。

日「軍艦島報告書」に「韓強制労役」また抜け…政府、遺憾表明(総合)


日本が2015年に世界遺産に登録された明治(明治)時代の産業遺産の二番目の継続措置以降経過報告書にも、韓国人に対する強制労働認定や犠牲者の追悼のための措置事項などが含まれていないことが確認された。

3日、外交部によると前日、ユネスコ世界遺産センターのHPに掲載された「日本の近代産業施設、世界遺産登録の後続措置の履行の経過報告書」は、日本が2017年に初めて提出した報告書で進展した内容がないことが分かった。

(中略)

日本は当時、登録過程の議論の日、 一部の施設では韓国人と他の国民が自分の意志に反して動員され、過酷な条件で強制的に労働したと認め犠牲者を称える情報センターを設立すると発表した。
しかし、日本は約束とは異なり、2017年12月に提出した最初の理工系か報告書で「強制(forced)」という単語を明示せずに「第二次世界大戦時に国家総動員法に基づいて戦前と戦時中、戦後に日本の産業を支援(support)した多数の韓半島出身者がいた」と表現した。

(中略)

外交部当局者は「今回提出された報告書でも、2017年の報告書と比較して進展した内容がない」と述べた。
これに政府はこの日、外交部のスポークスマンの論評を出し、遺憾を表明した。

(後略) 聯合ニュース「日 '군함도 보고서'에 '韓강제노역' 또 빠져..정부, 유감 표명(종합)(日「軍艦島報告書」に「韓強制労役」また抜け…政府、遺憾表明(総合)」より


2015年、日本の世界遺産申請の動きを受けて、韓国は強く反発していました。
委員会が「当事者で話し合えや」と言うので会合を開いたわけですが、その席で「強制労働(forced labor)」という言葉を使うのは止めよう、となりました。

なので、実は韓国側は「強制労働(forced labor)」という言葉は使っていません。「強制労役(강제노역)」って言います。
実質同じですよね。日本の担当官が迂闊だったと言われても仕方ありません。

更に文書に「forced to work」という表現を盛り込む約束をしてしまいました。
韓国側はこれで引き下がったのですが、登録に当たって正式文書に「forced to work」の文言が入れられてしまったのです。


「forced to work」と「forced labor」は、意味的にはほぼ違いはありません。
「強制労働」と「強制的な労役」くらいの差です。ただの言い換えです。

じゃあ、なぜ「forced to work」を許したのか……ここが日本の駄目なところだと思うのですが……教科書的な思考だと思います。


まず、単語として「強制労働」を意味するのは「forced labor」です。辞書単語としてはこちらになります。(ちなみにlaborはアメリカ英語、イギリス英語ではlabour)
もう一つの「forced to work」は「働くことを強要された」「意に沿わない労働を強いられた」という意味になります。

Oxfordの英英辞典で「forced labor」を引くと、次のようになっています。

  1. hard pysical work that somebody, often a prisoner or slave, is forced to do
    (多くの場合、囚人や奴隷が重い肉体労働をさせられる)
  2. prisoner or slaves who are forced to work
    (働くことを強いられた囚人や奴隷)

つまり「強・制・労・働」という四字熟語を使っていないだけで、意味するところは同じです。
国際法的には「違う」という主張もありますけれども、韓国が国際司法の場に出てくることはありません。(だって負けますので)
ですから、法的解釈云々ではなく、一般的な言葉の意味合いが大きな問題になります。


辞書単語である「forced labor」が使われていないから問題ないと考えたのか、often(多くの場合)が「囚人や奴隷」に掛かるので、囚人でも奴隷でもない徴用工は当てはまらない、と考えたのか……そこのところは分かりませんが、「forced to work」の表記を許したのは軽率だったと思います。

せめて「The Korean citizens recruited in wartime(戦時中に徴用された韓国人)」くらいで手を打たせることは出来なかったのか…。


一応、世界遺産登録のターゲットは「明治時代」であり、日英博覧会が開催された1910年までが対象のため、徴用を含む「強制的な労役」は無関係という理屈はあるのですが、みすみす韓国側に口実を与えたという部分は否定できません。