「미안(ミアン)」を「申し訳ない」と訳すのは適切でない気がする話

J-Castニュースさんの記事で韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の上皇陛下(当時は天皇陛下)への謝罪要求発言の件が取り上げられていました。
鳩山さんとの会談の席で「日本国民に謝った」とするものです。
それに対して日本政府(菅官房長官)は「鳩山さんとの会談で、ですからね」として評価しなかった、というものです。


こちらの記事(韓国語)によると「죄송합니다(チェソハムニダ)」ではなく「미안(ミアン)」と表現されたらしいですね。

(그 발언으로) 마음을 상한 분들에게 미안함을 전한다
(その発言に)心を痛めた方々にはお詫びの思いを伝える

Google翻訳などで機械的に翻訳すると「申し訳ありません」と訳されますが、미안(ミアン)は割とカジュアルな言い方で丁寧語ではありません。
「申し訳ありません」と訳すより「ごめん」とか「ごめんなさい」くらいが適当かと思います。
場合によっては、 謝罪の言葉というより一言断りを入れる程度と受け取れなくもありません。

上のような形だと「ごめんと伝える」というと変な感じになるので意訳して「お詫びを伝える」くらいのニュアンスがちょうど良いように思います。


「미안(ミアン)」は漢字で書くと「未安」となります。半島で作られた半島(韓国?)製漢語だそうです。
漢字だけ見ると謝罪の意味があるように見ないですよね。
普通に書き下し文風に読むと「安んぜず(やすんぜず)」と読めます。
「安らかでない、気が済まない、心配する」などの意味です。

「미안(ミアン)」の意味を韓国語の辞書サイトで細かく見てみると「他の人に起こったことや、または自分がしたことや言葉、その人にご心配を掛け心を楽に出来ません」という記述があります。
別の辞書では 「罪悪感が弱いときに使われる」 とも。


「ごめんね」とは言われたようですが、上皇陛下への謝罪要求発言それ自体を撤回したわけでも謝罪したわけでもなく、単に 「私の発言で心配を掛けてごめん」 程度の意味と受け取って差し支えないのではないでしょうか。

謝罪要求発言に対する謝罪ではなく、「心配を掛けたこと(傷つけたこと)」に対して一言お断りを入れた、ただの社交辞令と見なせます。
謝罪要求自体はまだ引っ込めていません。


これで「謝った」とか「謝罪した」と記事の見出しに付けるのもどうかと思いますし、「評価しろ」と言われても評価しようがありませんねぇ。


言葉って厄介です。
機械翻訳がいくら便利になっても微妙なニュアンスを掴まえたり、含みを理解するには、相手の言葉をある程度理解できないとダメなように思います。
それにメディアが「都合の良いように」意味を捻じ曲げてしまうことだってありえます。


好きな映画にこんなセリフがあります。

ロシア人「ロシア語が話せるのか(You speak Russian?)」
アメリカ人「少しだけ。敵を知るのは良いことだよね(A little bit. It's good to know your enemy, isn't it?)」

米ソ冷戦時代、アメリカに亡命を希望するロシアの軍人とアメリカのCIAエージェントがロシア語でやり取りするシーンでした。(括弧書きは英語字幕)

これを見て「ホントにな」と思いました。
敵かどうか、好きか嫌いかは横に置いておくとして、手っ取り早く相手を知るには言葉から、というのは良い方法です。