日本旅行不買運動は日本の急所にならない話

日本旅行のキャンセルが殺到しているそうです。
なかには航空券のキャンセル費用だけで11万円ほど掛かったケースもあったとか。
日本旅行不買が日本経済に最も大きな打撃をあたえかねないという指摘が出ているんだそうです。


確かに、ここ最近の観光立国政策による訪日外国人の数の増え方は凄まじく、昨年には3000万人を突破しました。
2013年が1000万人突破ですからわずか5年で3倍です。

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インバウンド 訪日外国人動向


韓国でもたびたび日本の観光立国化について報道されていますので、観光業への打撃というところに意識が向くのだろうと思います。
訪日韓国人は1〜5月までの集計で前年比4.7%減との報道が出ていますが、JTB総合研究所が取っているデータでは2019年の1〜5月の訪日外国人数は全ての月で前年比プラスになっています。

日本は韓国が思うほど「外国(韓国)人向けの観光業」に経済依存していません。
訪日外国人数は凄まじい勢いで増えていますが、未だに日本の観光業は「国内旅行に行く日本人」によって大部分が支えられています。


データで見てみましょう。


観光庁「旅行・観光消費動向調査」というデータを公開しています。これは日本人の国内旅行者をターゲットにした調査データです。

2018年のデータを見てみると 日本人の国内旅行消費額は 20兆4834億円 (宿泊旅行は15兆8040億円、日帰り旅行は4兆6794億円)となっています。

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観光庁公開の「旅行・観光消費動向調査2018年年間値(確報)」より

多少の増減はありますが、ほぼ横ばいで推移しています。


次に、訪日外国人の消費動向のデータとして同じく観光庁が公開している「訪日外国人消費動向調査」の2018年版を見てみます。

訪日外国人全体として見ると、2018年の旅行消費額は4兆5189億円、国内消費の約1/5という規模にまで大きくなっています。(2013年は1兆4167億円)
もし、この規模の不買が一気に起こったとしたら大きな打撃となりますが…特に韓国人の消費動向にポイントを絞ってみますと…。

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観光庁高愛の「【訪日外国人消費動向調査】2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額(確報)」より

韓国人観光客の全体の支出で5,881億円です。1人当りの支出は78,084円で統計の取られている20カ国中最安です。

単純にこの金額を2018年実績から引いても2016年の3兆7476億円は超えています。
訪日韓国人の人数は多い*1ので「訪日外国人数」としては寄与してくれていますが、観光経済への寄与率は今ひとつという感じです。
残念ですが、数が多くて客単価が低いため、韓国人はあまり効率の良いお客さんとは言えません。

1人当り支出の上位は1位オーストラリア 24万2千円、2位スペイン 23万7千円、3位中国 22万5千円。
それ以外にもイギリスやフランス、ドイツは20万円を超えており、欧米は比較的消費額が多い傾向にある。


韓国人が日本への反発から日本旅行を止めるのであれば、それは一種の「意思表明」なので好きにすれば良いのですが、その行為により「観光業に大打撃」という目論見なのであれば、達成することはできません。
もしそんな夢想をしているならもっと現実を見たほうが良いでしょうね。


*1:2018年実績 750万8952人