「韓国に行くときは『ムルポン』に注意」の話

フランスの外務省が自国民向けの韓国渡航情報に、薬物に関する注意喚起を載せたそうです。
「ムルポン(물뽕)」という俗称のこれは、日本ではGHB…いわゆるデート・ドラッグと呼ばれるものです。


【特派員リポート】「杯を守れ」...フランス政府「韓国に行くときは『ムルポン』に注意」


(前略)
仏ホームページに掲載した各国の旅行情報コーナーで韓国を選択した場合、一週間前に更新されたこのニュースが最初に出てきます。

弘大(ホンデ)梨泰院(イテウォン)江南(カンナム)地域のクラブで、いわゆる「性的暴行薬物」である「ムルポン」(GHB)被害事例が多数報告されました。主に被害者が飲むお酒や食べ物、飲み物に薬物をいれる手法です。」

デート性犯罪薬物と呼ばれるGHBを利用した犯罪にさらされる危険性があるので注意するように、という警告とともに予防のヒントも記載されています。「バーやクラブに行くときは仲間と一緒に行き、知らない人の招待に応じないこと。お祭りのような状況で見知らぬ人と接するような時は、特に若い男性の場合、相手が一人でも多数でも警戒を緩めないこと」という内容です。

(中略)

しかし、性犯罪や麻薬、特にGHBのような新種の麻薬による被害はフランスとて例外ではありません。昨年3月、フランス・パリのクラブでは「ムルポン」の原料であるGBLを飲んだ青年二人が昏睡状態に陥り、最終的に一人が死亡する事件が発生しました。わずか二ヶ月前の9月にも、やはりクラブに行った20代がエクスタシーの過剰摂取で亡くなりました。フランスの薬物管理局によると、クラブのような風俗店を中心にGHBが広がり、パリだけで1年に50人から100人が昏睡状態に陥っては、特に17歳から25歳の若い被害者が急増しています。

(中略)

フランスの外務省が「ムルポン注意報」をあげたことについて、私たちの外交当局も緊張しています。駐仏韓国大使館の関係者は「韓国で発生した一連の事件が外信に継続して報道され、フランス外務省の自国民保護と情報提供の目的で掲載したことが把握されている」と述べました。

しかし「情報が過度に歪曲されたり、旅行警報段階が下がったわけではないうえ、国内関連捜査がまだ進行中のためフランス側に公式抗議や掲載撤回を求めない方針だ」と明らかにしました。

(後略)

KBSニュース「[특파원리포트] ‘잔을 지켜라’…프랑스 정부 “한국 갈 때 ‘물뽕’ 조심”(【特派員リポート】「杯を守れ」...フランス政府「韓国に行くときは『ムルポン』に注意」)より


フランスでGBLによる死亡者が出たのは事実です。2018年3月の話です。
あるクラブのパーティーに参加した24歳と29歳の2人の男性が床に置いてあったペットボトルを水だと思い飲んだ後に倒れました。
24歳の方が亡くなり、ペットボトルの持ち主は過失致死で逮捕されています。


他にも救急搬送される事件は起こっていますが、大半の場合、彼らは「飲まされた」のではありません。自分で「飲んだ」んです。
あるいは誤飲、過剰摂取、アルコールとの併用…などなど…であり、韓国さんとはちょっと事情が違います。

フランスさんが渡航者に「気を付けて!」と言っているのは自分の意思に反して飲まされること、そしてそれは多くの場合、性的暴行が目的であるということについてです。
フランス国内でのGHB(GBL)とは使われる目的が違うよという注意喚起が必要ということです。


「薬物の氾濫」という意味では似ているかもしれませんが、自衛の手段が異なります。
フランスでは勧められても摂取しない、で済みますが、韓国では自分のコップに細工されないよう気をつける必要があるわけです。一緒くたにされると困ります。


「ムルポン」について

「ムルポン(물뽕)」は「液体麻薬」という意味で使われているようです。「ムル」が「水」、これはそのまんま韓国語ですが、「ポン」が麻薬を意味すのは、恐らく「ヒロポン」の影響です。

韓国のニュースでは未だによく聞く「ヒロポン」は終戦後頃まで流通していた覚せい剤の商品名(日本語)です。当時は合法で普通に薬局で購入できました。

多分、この「ポン」がそのまま麻薬の意味で使われているのだと思います。


で、この「ムルポン」ことGHBは無色・無味・無臭のため混入されても自力で見破ることは不可能です。
英国ではCYD(Check your drink)という試験紙が販売されており、インターネットでも購入可能なようなのですが、残念ながら配送先に日本を選択できません。