元警察庁長官の議員、5年間で5倍(金額ベース)に増えた薬物摘発量を「わずか」と言い張る話

ここ5年間で韓国の麻薬密輸摘発が5倍(金額ベース)に増えているそうです。
先日、150人以上が犠牲となる大きな事故が発生した梨泰院でも主に薬物取引を警戒して私服警官が多く配置されていたのもそうした背景があったようです。
しかし梨泰院の事故は発生前後の対応を巡って政権批判へと発展しています。ある野党議員はこの件で「5年間でわずか5倍」と表現しました。これをもって「麻薬との戦争」と言うのは、なにか不純な動機があるのではないか、と。
薬物取引を警戒して警官を配置できたのなら雑踏警備も配置できたはず、との趣旨で批判を展開したかったのでしょうが「政権批判」が先に立ってしまったがために「薬物取締はどうでもいい」と誤解されかねない言い方になってしまっています。しかもこの人、元警察庁長官だそうです。
日本の野党もそうですけど、どうして政権批判しか頭にない人たちって勝手に自爆するんでしょう?

 



世界日報の記事からです。

5倍に増えた麻薬密輸額に「わずか」...「戦争宣言」レベルでもないというファン・ウンハ


ハン・ドンフン法務部長官に「職業的陰謀論者」と呼ばれたファン・ウンハ共に民主党議員が9日、政府の麻薬取締集中で警察が市民の安全に相対的に疎かだったという点を「梨泰院惨事」の原因の一つと主張し、ユン・ソンニョル大統領が「麻薬との戦争」を宣言するほど現在の麻薬類実態が進行な水準ではないと発言し、多少の波紋が予想される。

(中略)

梨泰院惨事の原因を深く追求しようという意味で、警察の安全管理のずさんさを指摘しようとするのがファン議員の意図だが、元警察庁長官という点で「麻薬問題」を小さなものとして片付けているのではないか、という批判を一部で受ける可能性もあると見られる。

ファン議員はこの日午前、MBCラジオ「キム・ジョンベの視線集中」とのインタビューで「麻薬捜査が梨泰院惨事の背景と言うのはフェイクニュースであり、これを広めること自体が陰謀論ではないか、というのがハン・ドンフン長官の見解のようだ」という進行者の言葉に「私が述べたのは『ア約操作が背景だ、ハン長官が背景だ』こういう表現ではない」とし「警察首脳部が麻薬に集中するあまり麻薬取り締まりに成果を出すために市民の安全を相対的に疎かにしたということ」と答えた。

続けて「梨泰院惨事の原因は色々あるが、最も直接的で最も大きな原因はその惨事現場になぜ警察機動隊が配置されなかったのかということ」とし「警察を配置する権限を持った人、意思決定ができる人たちが市民の安全よりは麻薬捜査に気を取られていたこと」と指摘した。

合わせて「警察庁長やソウル警察庁長がこれを重視することはできるが、問題は大統領が乗り出して麻薬との戦争を宣言したということ」とし「それではソウル警察庁長や龍山警察署長が大統領人事権にこだわる人々だが、この人々が何を最優先課題と考えるかということ」と問い返した。

ファン議員はそれと共に「現在の韓国の麻薬類実態が大統領が乗り出して麻薬との戦争を宣言するほど深刻な状況なのか」と疑問も提起した。
麻薬類密輸摘発金額について黄議員は「わずか」という単語も使った。

ファン議員が「もちろん政策判断の領域ではあるが、つい先日も国務調整室長がそのような返事をしたが、5年間でわずか5倍増えた水準」とし「これを持って大統領が出てきて、また法務部長官が出て麻薬との戦争、このように話すのは何か意図が不純に見える」と主張しながらだ。

進行者が「5倍増加をわずかと表現できるのか」と尋ねると、ファン議員は「5年間で5倍増加は麻薬との戦争を宣布する水準ではない」と再度強調した。

(中略)

国会企画財政委員会所属のやん議員が関税庁から受け取った資料によると、2017~2021年の5年間に摘発された麻薬類密輸量は計2,264kgであり、昨年の密輸摘発金額(4499億ウォン)は2017年(880億ウォン)の5倍を上回る水準であることが分かった。同期間に摘発された金額は計2兆2496億ウォンで、摘発件数は3,499件だ。ファン議員は自信の発言がややもすると麻薬類の実態が深刻ではないということで片付けられることを憂慮したかのように「最近、10代20代が大幅に増えたことは間違いない」とし「その部分に対して検察を含め警察麻薬捜査部署で先制的対応方案、強力な検挙対策取締方案を用意することは必ず必要なこと」と話した。

続けて「麻薬捜査をするなということなのかというとんでもない話をしていたが、麻薬捜査は積極的に熱心に先制的に強力に取り締まるべきだ」とし「なぜ麻薬捜査局面を意図的に(政府が)造成するのか」と自身が主張しようとするところを明確にした。

ファン議員は、「大統領が麻薬との戦争を宣布したため、警察首脳部がここにだけ力を入れ機動隊投入などをあまり考えられなかったということか」という司会者の確認のため質問に「そうだ」とし、「麻薬(取り締まりに)投入するなというのではなく、麻薬取締人材も投入し、機動隊警備員は別途投入しなければならない」と重ねて強調した。



世界日報「5배 늘어난 마약 밀수액에 “불과”…‘전쟁 선포’ 수준도 아니라는 황운하(5倍に増えた麻薬密輸額に「わずか」...「戦争宣言」レベルでもないというファン・ウンハ)」より一部抜粋

「多少の波紋が予想される」「批判を一部で受ける可能性もあると見られる」...なんなんでしょうね、この書き方。歯の間にモノが詰まっているみたいです。

警備体制に不備どころか、まともな警備体制が取られていなかった点は間違いないのですけれど、麻薬取締云々を絡める必要はない気がします。最終的に「どっちも大事」と落ち着くくらいなら持ち出す必要はなかったでしょうに。
今まで梨泰院に警備人員が割かれていて、今年から(麻薬捜査のために)外されたというならファンさんの主張は通るかもしれませんが、そうじゃありませんからね。警備を配置しないのがむしろ「通常運転」だっただけでしょう。(ファンさん自身も長官時代にスルーしてきたのですから、よく分かってるのでは?)
麻薬捜査云々というより危機管理意識の問題だと思います。


参考になるかアレですが、一応日本の税関が公表しているデータによると、2017~2021年の5年間で税関で押収された違法薬物は9,278kg、4,280件です。あくまで税関で摘発されたものであり、これがそのまま市中での流通量の参考にはならない点は注意です。また、日本のデータは所謂「違法薬物」に相当するものが含まれます。韓国のデータは単に「麻薬」とだけなっています。(日本は「麻薬(ヘ〇インとかコ〇インとか)」に限定すると5年間で2,002kg)

日本と比べるのであれば、確かに数の上ではまだ韓国は「麻薬との戦争」と言う水準ではないかもしれません。摘発件数が増えたのも、実は今までスルーされていたものが検査精度が上がったことで水際対策が強化された結果かもしれませんしね。
この辺りは検証の余地はあるかと思います。